オキシライド乾電池の自動車

2007年8月5日

電池の話

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ascii.jpによると、オキシライド乾電池の自動車による「走行記録会は、ギネス世界記録認定員の立ち会いの元に行なわれており、この記録は“乾電池を動力源とした車両の最高速度”のギネス世界記録として認定される」。乾電池で自動車が走るとは、素晴らしい。

社団法人電池工業会によりまとめられている「一次電池販売数量、金額長期推移」を見ると、近年、「アルカリ電池」の数量の落ち込みに対して、販売金額の落ち込みが著しい。

つまり、大きなトレンドとして単価下落が甚だしい、ことが背景にある。

アルカリ電池の主な製造企業は、松下電池、東芝電池、FDKエナジー、SONY、日立マクセルである。株主構成を見ると、FDKエナジーでは東芝電池、SONY(ソニー・エナジー・デバイス)や三菱電機(東京商工リサーチ情報)があることから、OEMなど業務上の関係が深いことがわかる。また、業界では長年、松下電池が約四割の市場占有率を保ち、トップ企業である。つまりは、業界は二極化しつつあるといってよい。おそらくは、近年の東アジア諸国による低価格品に対抗したハイエンド品であることが伺える。

企業がこのような局面にあるとき、①ハイエンド化、②ローエンド品の切捨て、が考えられるが、なぜ、マンガン電池をやめないのだろうか?

オキシライド電池がさらに長寿命に!――松下電器産業、従来品より1.2倍長持ちのオキシライド/アルカリ乾電池を発表/2006.1.16 では、「松下電池工業(株) 一次電池社 社長の梶川陽二氏は乾電池需要の現状と今後について語った。乾電池需要全体は、2008年まで全世界で180億個前後と横這いの一方で、オキシライド乾電池を含むアルカリ乾電池の割合が徐々に増加すると見ている。特に現在は乾電池需要の低い国々での需要増加が期待できるため、アルカリ乾電池は今後も「2~3倍伸びる可能性がある」(梶川氏)としている」と述べられている。

それほど市場があるならば、余計に、これまで日本の市場で信頼を得てきた「アルカリ電池」を販売すればよいのではないかと勘ぐりたくなってしまう。さらに、(いずれはそうなるだろうが)現在のところ、オキシライド乾電池はJISやIECの規格品ではない。また、名前の由来となっている「オキシ水酸化ニッケル」という素材も安価なものではない。市場ではアルカリ電池とのカニバリゼーションを制御することは大変難しいことであろう。

これだけの要因を含んだオプションを選択するとは、やはり、業界トップでしかわからない戦略があるのであろう。

・・・このケース、皆様はどのような議論をなさいますか?

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