社会人MBA-技術者編

July 26, 2008

7月の暑い日のちょっといい話・・・。

7月の暑い日の夕方に起こった、ちょっといい話・・・。
*本記事に掲載している、人名、犬名は仮名です。


*   *   *   *

「今日も暑いですねぇ」
「ほんとに」

外は35℃を超える猛暑日、夕方になってもまだ暑さは続いていた。
セミの声が耳につく。
そんな暑い日が暮れた頃、原田さんの様子が少しおかしい。

「うちのぺスがいない。」

ペスは原田さん家の愛犬である。老犬であり、長く家族に可愛がられてきた愛犬である。原田さんの異変に気づいたお隣の木山さんは、その時、木山さん家の愛犬を散歩しようとしていた。

「散歩しながら、見て来ます。」
と、いつもの散歩コースに加え、見回ったが、見当たらない。

近辺に大きな国道があるので、心配がつのる。

もう、2時間近くが経っただろうか、未だに見つからない。こうなれば、近所の人々も探し出す。この辺はペットを飼っている人が多い。
ペット仲間とは、犬の名前は知っているが、本人の名前を知らないなんてこともあるそうだが、その仲間も見かけてないそうである。

ペスは、老犬で最近体力が落ちてきている。だんだん、不安が大きくなる。

「ペスー!ペスー!」
「ウワン、ウワン!」

「ペス!?」

どこで鳴いているかがわからない。
声がする方へ近づいていくと、いやな予感がする。

「ペス!」
「ウワン」

(やはり・・・)

「いた、いた!」原田さんが叫んだ。
「えー!」木山さんはその状況に驚いた。いやな予感は的中していた。

排水溝である。



夕立のような雨が降れば、ペスは死んでしまう。
そこへ、たまたま木山さんの知合いの本田さんが通りかかった。

「本田さん!電話貸して」
「どうしたの?」
「ペスちゃんが・・」

木山さんは、古くからのご近所である山川さんへ電話した。山川さんは、内装などの仕事をしている人である。木山さんは、この排水溝を砕くつもりである。原田さんもペスを動かそうと努力したが、砕くしかないと決めている。

そこへ、消防が駆けつけてきた。その場所は、市の所有であるため、無断で手が出せないらしい。

もう、こちらが砕くしかない!
一同はこう思う。
(事後処理は何とかする)

そこへ山川さんが到着した。もう午後8時である。仕事の機材を持ち込んでいる。
その時、消防は素早く、市へ許可を取り付けた。

「電気、電気!」

排水溝向かいの家の方は、喜んで電線を自宅へ引き込んだ。電気は確保した。
ライトアップされ、作業が始まる。



「水!水!」
埃が舞う。排水溝の前の家の方が、ホースを用意して、埃を静める。

「ペスー、大丈夫か!」
どこかの知らないおじさんが、排水溝を覗き込み叫んでいる。

「これ飲ませたら?」
近所のおばさんが、ペス用に水を運んできてくれている。

「すみません、皆様、御迷惑をおかけして」
原田さんは、周囲の人に飲み物を用意してくださっている。

いやに暑い。
いつの間にか、多くの人が集まってきている。

「大丈夫か?」
「あ、見える、見える!」

近くの子供が喜んだ。
が、ペスは動こうとしない。人の手が届かない距離で立ち往生している。

「ウワン」
「おぉ、まだ元気だ」

作業は進む。

もう午後9時をまわっている。
思ったより、コンクリートが頑丈である。
が、ペスが少し動けるようになってきた。あと少しである。

犬は人間と違い、肩が引っかからない分、少し動けるようになると、後ろへ行くことができる。しかしながら、最近は歩くのもやっとの老犬である。もう何時間も閉じ込められている。

このままでは、ペスが閉じ込められている箇所を砕くには真夜中になってしまう。
体力勝負はペスには分が悪い。

ペスが動くしかない。

「ペスー!」

原田さんが、ペスの後ろ10m付近から、こっちへ来いとペスを呼ぶ。
ペスの頭の上では、コンクリートを砕く大きな音がしている。

(怖がって、後ろ向きで歩いてくれ)

みんな、そう思いはじめていた。排水溝を覗くとペスの顔が見える。
まだ、動けない。

その時、「ペスー!こっち、こっち!」

「あ!」

排水溝からペスの顔が消えた。後ろ向きで移動したのである。

「ペス、ペス!」
「ウワン!」

ドロドロに汚れたペスが、原田さんに抱きかかえられた。



「おぉ、よかった、ホントによかった」
「ありがとうございます。ありがとうございます。」

集まった人々は拍手していた。

翌朝、関係した人にフルーツの盛り合わせが届けられていた。


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