日本企業は戦略を持たないのか?

2008年7月9日

MBA

t f B! P L
1996年、Harvard Busuness Reviewにおいて、ポーターが、それまでの日本の成長を支えてきた「オペレーションの効率化」が、近年(発表当時の96年が基準)は利益率に寄与しにくくなっていることを、その中で指摘している部分がある。

残念ながら、その当時はインターネットの普及もこれからという時代で、議論を呼んだトピックでもあった。議論は当然、日本企業は戦略を持っているのか否かであるが、現在の日本企業ではどうだろうか?

日本企業を支えてきた、オペレーション効率を高める管理技術、新技術などは、情報化の共有が簡単になり、知識の劣化が早い現在では、「最も汎用的なソリューション-数多くの状況で用いられる-は、最も早く普及する*」ため、模倣が簡単になってしまった。同時に、ベンチマークはかえって、似たもの同士を生み出してしまっている状況である。

他企業で成果のある手法だから、我が企業でも導入しよう、という-皮肉にも現在では最も効率が低い-選択は、よほど当該部分で遅れていない限り、90年代までの話である。

オペレーションの効率化により、「低価格高品質」を実現してきた日本企業の多くは、ポーターが指摘するように、オペレーションの効率化を”戦略”と勘違いし始めている。例えば、「トレードオフ」の考え方で、これまで、それを解決してきたので、「解決する」ものだと思い込んでいる。

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この論文の主題は「戦略とはなにか」である。

ポーターの主眼はポジショニングに向けられるが、「持続可能なポジショニングには、トレードオフが必要*なのである。例として、ニュートロジーナの石鹸を挙げており、「肌にやさしい石鹸」(どちらかといえば医薬品に近いイメージ)のポジションを確立するため:

  • 多くの消費者が石鹸に求めている消臭成分と柔肌成分の配合を切り捨てた
  • スーパーでの販売と値引きによる拡販の可能性も振り捨てた
  • 生産効率も犠牲にした
このトレードオフにより模倣者に対する守りを固めることが出来たのである。

こうしないと、商品は生まれた時から、どの顧客にも好まれる様にカイゼンしていく圧力を受けていく。万人へは最後には低価格でしか受けないことがわかっているのに・・・。

・・・「戦略の本質は、何を『しないか』を選択することにある*

<参考書籍>本文中の*部分は以下の書籍を引用しています(本文で記載のポーターの論文はこの書籍に掲載されています)。

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