構図を考える

2008年10月21日

MBA

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世界的に経済は後退している中、ここ5年から長ければ10年程度、日本は現状を維持することが精一杯である。が、現状を維持できるのは幸運なのかもしれない。

日本のモノづくりでは、研究開発から生産、販売まで一貫して行う垂直統合型企業が多い。これは、スマイルカーブで利益率が低い組立・生産部門でも利益が捻出できることや、製品自体が複雑化していることも挙げられる。

ただ、「以前より少しよくする」という伝統的方針のみでは、その利益率を維持することが困難になりつつある。簡単な話、これはパイを広げなければ利益が出ない仕組みだからである。

こういった時(成熟期後半など)に見られるのは、企業のみで効率化を図る、というより、その業界で効率化を図ることである。

例えば、業界に参加している企業群が垂直統合モデルであれば、研究開発から生産、販売まですべてが重複している。大よそ、研究開発や販売の重複を解消することより、組立・生産を解消することが多い。

その業界の企業は、研究開発、販売の能力を維持しつつ、生産をどこかの企業へ委託する。どこかの企業は組立・生産のみを生業にしている企業かもしれないし、それは十分に生業になる事業である。生業にしているのであれば、その業界のほとんどの生産を受託することになる。

業界がそのように動いていけば、またはそうしていけば、それに参加しない垂直統合型企業は苦しくなる。セオリーどおりであれば、生産を委託する企業は、利益率の低い生産部門を切り離なすことで、研究開発や販売へ資源を投入しやすくなる。また、受託する生産特化企業は、規模の経済が働き、生産コストを低くしていくことが出来る。

こうなれば、垂直統合型企業は、研究開発から販売まで他企業に比べて、コストパフォーマンスが低下する。

ましてや、このような動きを起せる業界では、生産にコストがかかり、技術的には差別化が困難である業界であるから、尚更である。半導体産業では、そういうことが多いのではなかろうか。

この構図を変える極端な例はデルであった。これは説明するまでもないと思う。

以前より少しよくする」は研究開発者、技術者などの従業員の賜物、構図の変更は経営陣の特権である。

・・・いずれ誰かの土地になる場所で縄張り争いをしても意味がない。そうであれば、経営的には、”協業”が賢明な選択である。

photo(c) Maco

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