社会人MBA-技術者編

May 27, 2008

エコカー用電池、競争激化

エコカー用電池、競争激化 3陣営相次ぎ量産態勢(asahi.comより)との記事から、自動車、電機メーカーの競争が激化していることがわかる。はっきり言って、この競争の構図は、経営能力競争であり、伝統的企業の経営能力を計る試金石である。

現在のハイブリッド車はニッケル水素電池が主流である。それを携帯電話、ノートPCで採用されているリチウムイオン電池を搭載するというのが、業界の動きである。

記事によると:
合弁会社:日産-NEC、トヨタ-松下、三菱自-ジーエス・ユアサ
グループ合弁:日立製作所とグループ子会社
単独:三洋電機

の体制である。

電池の大型化には、指数関数的に危険性が増すため、通常、電機メーカーでは、管理上ポイントの低かった「人命に及ぶ危機」の対策が必要になる。具体的には、品質管理が変更される。この変更により、購買から出荷の業務手順が変更されるため、従来のバリューチェーンと同様のシステムの併用は困難となる。

クリステンセンが『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)』で提示したように、同じ製品とはいえ、バリューネットワーク(サプライヤー、顧客)が変わるため、三洋電機のように単独で事業を行う時には、「車用電池事業部」など、従来の事業部や会社組織とは別にしなければ、マネジメントは困難である。

クリステンセンの概念は、これまでの日本企業に適合しにくかったが(例えば、iPodが現われても、ソニーは業界に生き残り、存在感を示している。決して、滅んでいってはいない)、充電池業界でトッププレーヤーである三洋電機が、クリステンセンを喜ばすようなマネージメントをしてしまうと、三洋電機自体の敗戦が確定的になる。

また、自動車-電機合弁企業では、経営云々より、お互いのノウハウが漏れないことに最大のプライオリティを置くため、かなり以前から電機・電池メーカーの従業員を多く取り込んでいる自動車メーカーは有利である。内ゲバは競争相手にとって最もお金のかからないアドバンテージでもあるが…。

企業の大きさからみても、電機は、トヨタが松下電池工業を買えるぐらい小さすぎる(注:実際は松下電器が株を有しているので買えません)ので、資金力にものを言わせて、ジワジワと中核技術をものにされてしまう。

さらには、電機の売上高に対する営業利益率は業界平均で7%であるが、輸送機器は5%である。ただし、トヨタ、ホンダが10%弱であることを考えると、単なる一部品メーカーとなり、ジャストインタイムに対応するため、従来より在庫を持ち、企業の力関係から安く買い叩かれ…効率は低下する。

単独、自動車-電機合弁の中間が日立製作所のグループ合弁であるが、日立製作所自体が、現在、経営能力を測定されている重要な時期であるため、イニシアティブをとることが困難で、単なる寄せ集めの能力しか発揮できない。

この業界動向の背景には、韓国などの追い上げがある。韓国での自動車生産は今年(2008年)に600万台を突破する見込みである( 韓国自動車生産、ことし600万台突破の見通し、ちなみに昨年の日本は約1,159万台)。ハイブリッドが主要事業として利益を創出しているわけではないので、かつての日本が低価格高品質を実現し、米国市場へ参入していったことと同様、今回は経済成長国への参入で、同様の競争が起きている。

もう一つは、原油価格高騰である。これは、どのメーカーも共通の外部要因なのであるが、エネルギーは、あまりにも価格が高騰すれば、代替エネルギーが生まれるため、ガソリン価格が2倍なり、仮にハイブリッドが2倍の燃費であれば、ハイブリッドに意味はなく、代替品へシフトする。

この価格の高騰は投機の色が濃く、いずれパンクするので、協調して代替エネルギーへの投資も逓減していく。そうすれば、ハイブリッドの電池がニッケル水素からリチウムイオンへシフトするには、リスクが大きすぎる。

リーダー企業でハイブリッド自動車を市場に送り出したトヨタは始動している。
ホンダは様子見(リチウムイオンはリース用の燃料電池車と併用)、来年の新商品もニッケル水素のハイブリッドだそうである。

技術的には、ホンダのニッケル水素、リチウムイオンの使用の仕方が最も安全である。しかし、トヨタはハイブリッド車を開発した企業である。

・・・どうでしょうか、日本を代表する企業が集結した今回の動き。まさに各社の経営手腕次第でどうにでも転びます。注目です。
ちなみに・・・私はリチウムイオンを搭載した車は買わないでしょう。。。

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May 24, 2008

『決算書の暗号を解け!』

株式投資をギャンブルだとすれば、このギャンブルは他のギャンブルに加え、参加プレーヤーが最も有利だといわれる。それは、プレーヤーのが持つ情報(企業が公開しばければならない情報)による。少なくとも株主であれば、企業への問いかけには、企業も応対する体制が整っている。まさか、騎手にインタビューできるプレーヤーは少数であろう。

「それは、投資家に敵わないだろう」と考えても、腕のいい投資家を見つければ、彼らの公開する”ファンド”や”投資信託”に賭ければ(手数料次第ですが…)、彼らほどではないが、トレンドには乗ることができる。

この賭場で、人気が高いのは成長を続けている企業である。成長とは?-利益が伸びている企業、利益とは?-本業の営業利益、それはどのように計算されるのか?

多くの企業がホームページ上でアニュアルレポートを公開しており、企業の会計、方針を確認できる。が、それを見るのは最後にしたほうがいい。

まず、有価証券報告書や決算短信で確認せよ!

本書の主題である。アニュアルレポートでの企業の言い訳は頭に入れず、報告義務のある損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、で確認することが大切、というものである。本書では、その見方、それぞれの関係が書かれている。会計には独特の感覚があるので、その感覚をつかんだり、入門的に読むには最適な書籍であると思う。

*  *  *  *

○営業利益はでているが…売掛金が多くないか?
○キャッシュフローをみると…本業では全くふるってない!
○売上高は変わっていない、ROAが低下…もしや、M&Aで間に合わせたのか…?
○投資に力を入れていると聞いているが、投資キャッシュフローがマイナスではない(通常マイナスです)or 特別利益がやけに多い。内訳をみると、トレーディング目的でもない有価証券を売却してしまっていた。

○(決算短針で)来期、売上が5%上昇の予想なのに、この営業利益率の悪い予想はなんなんだ?
*通常は、売上高の伸びよりも経常(営業)利益の伸びのほうが大きい。これは、各業種の限界利益率から考えることができる-例)限界利益率が20%:売上が10億円増加すれば、利益は2億円増加;ここ数年での業種別では、精密機器(14%)、輸送機器(7%)、電気機器(21%)、機械(23%)など。

○あまり見たことのない費目が登場し、特別損失費に計上されている。
○財務キャッシュフロー(通常マイナス)を見ると、借入金の返済以外に、比率が大きな費目があがってないか?
○業績が低下しているのに(利益の伸びとは関係なく)、配当金が増加傾向…。
○内部で「人件費が!!!」と叫んでいるわりには、役員数人が退職すればいいほどしか、販売費及び一般管理費が上昇していない(売上高に対して0.数%程度)。
などなど…

*  *  *  *

この賭場では、過去から積み上げた利益(利益剰余金など)は単なる戦績である。今後、勝てない(成長しない)とわかれば、BET(=投資)してもらえない。それどころか、その利益を奪いにかかってくる。さらに、この賭場では、投資してもらえないことは、時価総額が減じることを意味している。だから、ミエミエであっても成長路線を演じなければならない。

「どれほど巧みにとりつくろった会計でも財務諸表の数字に仕掛けられたトリックを暴いてしまえば、等身大の会社の姿が見えてきます。」(本書p219)

・・・数字は残酷ですねぇ。。。

<参考書籍>


May 23, 2008

訪問感謝!!チェック書籍BEST5

本ブログも掲載開始から、1年半以上経過し、多くの方に訪問していただきました。ありがとうございます。今回は、本ブログで紹介してきた書籍で、皆様がチェックした書籍のBEST5を紹介します(2008.1.1~2008.5.23現在)。

第一位:データマイニングに関する書籍


第二位:データマイニングに関する書籍と品質管理技法に関する書籍


第三位:イノベーション、及び経営の未来に関する書籍


第四位:ミンツバーグとサイモンの書籍


第五位:幸之助と野中に関する書籍です。



*書籍同様データマイニング(weka)などに関するキーワードからも、多く本ブログへ訪問されています。シリーズで掲載しました”Wekaを起動する”(フリーデータマイニングソフトweka入門)はブログ右上の”データマイニング(Wekaを起動する) ”で一括にご覧になれますし、 Wekaを起動する(データマイニング入門)に、シリーズ記事のPDF化したファイルを置いていますので、ご参考ください。

末筆ではありますが、皆様の訪問に感謝しております。


May 22, 2008

マーケティング⑤(顧客価値とは?)

企業の品質改良に関して、「顧客の選好に応え、それを強めるグループ」と「コスト削減を強めるグループ」「これらの二つの路線を両立させる」グループを比較したところ、顧客の選好に応え、それを強めるグループの業績が好調であった[1]。

顧客が満たされていない状態を解決する(ニーズを満たす)ことに対して、顧客が知覚し、その水準が高ければ、そのプレミアムを顧客は支払う。

顧客満足は主に、製品・サービスの価格、品質、購入しやすさで満たされ、そこから、顧客とコミュニケーションを図り、顧客の信頼するブランドを構築してしくことで顧客の忠誠度を高めることができる。従って、顧客満足だけではなかなか利益を創出しにくくなっている。

*  *  *  *
1)ドリル-顧客がドリルを望むのは、ドリルが欲しいのではなく、穴を開ける器具が欲しいのである。ドリルを多く売りたいのであれば、他社との差別化を声高に打ち出すより、同様の機能をもつのはドリルしかない、顧客を代替品へ向かわせないことも重要である。

2)-1 あるスーパーマーケットでは、店の入り口に顧客を出迎えるスタッフを配置している。コーヒーのサービス、雨が降れば傘を、荷物は顧客の車まで運ぶという。顧客のクレームまでその報告にいわゆるポイントを付加するほどである[2]。

2)-2 これらのコストを合理的に削減することで得られるのは、激安スーパーマーケットである。ただし、模倣が簡単なため、競争は激化し、再び、価格を高くすることはできない。価格競争は最後の競争だからである。

3)IKEAでは、その合理的コストを削減しているが、購入する動機はそれ(価格)だけではない。

4)対象者を高齢者に絞った旅行代理店は、高齢者の最大の不安-もし何か起きたとき-に応えるため、医師を同行させるサービスを提供している。これは、その他の代理店に模倣されにくいサービスである[3]。

*  *  *  *

・・・あなたの企業の上級管理者がどのような意識なのか確かめることは簡単である。「組織図のヒエラルキー」を描いてもらえば、それはわかる。一番上の階層に、「顧客」と描くでしょうか、それとも「経営者」と描くでしょうか。。。


[1] Roland T.Rust, Christine Moorman, and Peter R. Dickson, "Getting Return on Quality: Revenue Expansion, Cost Reduction, or Both", Journal of Marketing 65 (October 2002), pp7-24.
[2] フィリップ・コトラー,ケビン・レーン・ケラー,恩藏直人監修,月谷真紀翻訳『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版』ピアソン・エデュケーション,2008.p177 スーパークインの例より。
[3] ニッコウトラベルの例(当初はホワイトエリアであったが、模倣やカリスマ添乗員の退職など、課題もある。)。

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May 19, 2008

マーケティング④(マーケティングの重要性-21世紀のマーケティング)

マーケティングとは、顧客に向けて価値を創造、伝達、提供し、組織および組織をとりまく利害関係者を利するように顧客との関係性をマネジメントする組織の機能および一連のプロセスである」(アメリカ・マーケティング協会)。そして、理想は「セリングの不要」である(ドラッカー)。

マーケティングは「製品を売り込む技術」からその役割は大きく広がっていると考えられるようになっている。よく耳にする統合型マーケティングにおける4P:
Product(製品:顧客からは顧客ソリューション)
Price(価格:顧客からは顧客コスト)
Place(流通:顧客からは利便性)
Promotion(プロモーション:顧客からはコミュニケーション)
など、その価値をうまく、伝達し、種々のマーケティング活動を連携させ、効果の最大化を狙うのである。

その姿はすでに、マネジメントのスタイルを部門から、全部門連携へと変化している。

伝統的製造業において、品質保障部の役割で考えると、分りやすい。( 客観説TQM研究所参考

品質保障部の責務は、研究開発部門から製造、出荷までの工場業務において:
①各部門がルール(ISOや企業の業務手順)に則り、業務を遂行しているかの品質保証
②各部門の成果物(=品質のつくり込み業務)を統合的に管理する品質管理
である。それは品質のマネジメントと言えよう。

いわゆるすべてのプロセスと関わりをもつということであり、マーケティングも同様である。企業の内部においては、各部門(経営者も含まれる)の顧客志向を評価していき、外部には種々にコミュニケーションを図り、その効果を定量化していくのである。

よく、ビジネスマンの必要スキルとして、英語、IT、財務が挙げられる。これは、部門に関係がない。ビジネスがグローバルに展開していなければ、英語の必要性は低いかもしれないが、インターネットの情報は多くが英語であるため不必要とも言えない。

また、上の品質保証部、マーケティングのことから考えると、異なる部署間の共通の尺度は”お金”であるため、財務の知識は欠かせない。

今後の組織構成員がそのような人材に成長すると、今ある過剰な管理費用を削減できる。一般的な製造業では、すでに団塊世代はおらず(もしくは嘱託化し)、工場に残っているのは、組立てをしながら、生産設備を修繕、改良できる正社員と大勢の非正社員、販売の現場では、容赦のない職場変更を行なってでも、人員を削っているなか、削れるのは、管理費用しか残っていない。

が、このような合理的に資本をモノと見なすのは実は弊害となる。日本の管理者や経営者は欧米のように高給取りではないし(新入社員の100倍、200倍もらっている人は皆無だと思う)、部長クラスにお迎えの車は来ない。

となれば、統合的に業務を進めていくように組織をリードすることが責務となる。品質分野でトップクラスになれたのは、日本にはそもそも業務をコンカレントに進めてきた文化があったからである。この文化がまだ残っているのであれば、種々の業務もそうしていくことが、マーケティングに関わらず、企業の地道に果たすべきことである。

・・・21世紀のマーケティングとは言っても、それはすでに、企業のあり方さえ問うマネジメントなのである。

<参考書籍> *第一章 マーケティング・マネジメントの理解を参考。

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May 15, 2008

マーケティング③(品質とは何だろうか?)

企業が提供する製品・サービスの良し悪しを測る測定系は「品質」である。日本の企業においては、「高品質」を生み出す活動に誰も異論はない。だが、「高品質」とは何だろうか?ここでは、ブランド・マーケティングの立場から、機能品質と知覚品質をとりあげる。
*今日の記事は少し長めです。

機能品質はいわゆる「スペック」に代表される。食料を低温で保管できる機能庫は冷蔵庫であり、安定して低温に制御できることがメーカーのスペックである。

これは、R&Dから製造部門までがよく知っている。やがて、製品が普及してくるにつれ、顧客は低温で保管できることに加え、種々の機能を要求する。

いわゆる、成長期にあたり、製品は「花形」(or「金のなる木」)へ進んでいく。この間、企業(この例では製造業)は、QC(もしくはTQM)、QFD(品質機能展開:顧客の要求を設計、生産レベルの仕様に落とし込み、企業活動を展開していく方法)を活用し、要求品質を維持、獲得しつつも安く大量に生産することを実現する。

やがて、長年の改良により顧客の期待は高まり、満足する知覚品質(顧客の知覚に基づく総合的な品質)の水準を達成することは困難になっていく。

この品質をよく知っているのは、広告・販促や営業・流通部門である。この価値は顧客が費用に結びつける知覚と結びつけることが多い(知覚価値)ため、主な測定者は顧客である。

価値創造という広い視野からは、企業の競争優位について、ポーターがバリューチェーンを提唱し、創造方法を明確化している。この課題への取り組みは企業により様々である。

この知覚価値を高めることは、機能品質→知覚品質との流れのなかで、ブランド力の源泉となる。顧客はその価値に対して費用で評価するほかに、他の製品購入の意思決定をする場合があるからである。

「この前購入した冷蔵庫が日立製で長いこと使用できた。機能も充実してたし、今度の洗濯機の買い替えは日立製にしようかしら」

さて、この両品質の均衡は企業の永続的な課題である。費用面で低い評価で知覚している顧客に、大きな資源を投じ、機能品質を大きく向上することは議論の余地がある。また、逆の場合の顧客の評価をくつがえすことも企業は尻込みしてしまう。

ということは、技術者はなにがなんでも良いものを開発しなければならない、ということではなく、それもオプションの一つである、ということであり、大きな技術改良、カイゼン程度、原価を下げるものなど、準備し、好機に備えなければならない。

IMDの国際競争ランキングの日本の低迷に危機を抱き、MOT教育が普及したが、その際、”イノベーション”の”技術革新”の面ばかりの認識となり、多くの誤解を生んだ。

それほど頻繁に製品改良を行なわなくていい業界でも(誤解のないようにですが、これは、顧客の価値認識のスピードを無視してという意味です。)、頻繁に改良ゲームが展開され、疲弊していった。

R&Dはともかく、製品として進みすぎるのは、顧客への教育費用、新たな生産ラインの設置など大きな費用が発生するほか、進みすぎた製品に対して、競合企業に競争軸を変化させる(現実味を帯びた)開発オプションを与えてしまう。加えて、競合企業の様子見という待機オプションの価値が減じてしまい、チームのオプション価値は減少してしまう。

その大きさの程度が、クリステンセンの提示した「破壊的」である場合、企業は同一セクション(事業部など)でのマネージは困難を極める。

ならば、低価格高品質じゃないか、と思われるが、made in Japanを製品に印刷するのであれば、その方向を追及することが、従業員の創意工夫を促す学習文化である。

また、マネージャーは、その定量化をしなければ、コストダウン、品質向上の無限連鎖に陥り、組織の官僚化を招いてしまうことだろう。

・・・日本においてもいよいよ、上級管理者の腕が問われる時代になってきたようである。

<参考図書>

*右の図書は第12版の邦訳ですが、今回はコトラーに加え、ケラーとの共著となっています。

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May 13, 2008

インフレと株価と暴落と

ギャンブルは参加しなければ、損はしないが、参加することで、リターンを得られる。株式投資においても明日の株価が上昇するか、下落するかはわからない。しかしながら、資産を形成していく上で、参加しないことが損になることもある。日本の資産の多くは、銀行への預金である。インフレ率が銀行の提示する金利より高ければ、その価値が目減りするからである。

インフレ率と株価指数の研究は盛んに行なわれていて、インフレ率の低下期には株価(PERなど)は上昇し、上昇期には実質株価が低下することが知られている。下の図を見ると、日米の株価でもそのような時期があるようである(研究では図よりさらに前の年代から調査されています)。

○日米CPI(消費者物価指数)と株価推移(年毎 1982~2008)

行動ファイナンスの観点からは、インフレーションは株価のバリュエーションに重要な影響を及ぼす理由に、①貨幣錯覚(常に物価は上がり続けているということを無視して、所得などの名目価値の上昇だけに注目した考え:金融用語Web辞典より)、②アンカリング(初めに提示された情報によって、その後の判断に偏りが生じること:Wikipedia『アナロジカル・シンキングの罠』より)と調整により、人々がインフレーションの変化に過小反応する理由を挙げている。(ハーシュ・シェフリン、鈴木一功訳『行動ファイナンスと投資の心理学―ケースで考える欲望と恐怖の市場行動への影響』東洋経済新報社、2005、第五章市場を予測するp78)。

現在の論点は、米国の経済に連動するかどうかである。米AIGの8,100億円の赤字(日本経済新聞夕刊一面2008/5/9)、米シティの健全性維持(資産売却41兆円)(日本経済新聞三面2008/5/10)、日本へのサブプライムの影響は1.5兆円(日本経済新聞一面2008/5/2)など、非常事態であることはいうまでもない。

運用しなければ利益が上がらない企業の大きな損失、「売る」と宣言すれば、叩き売られることを承知での発表、事態は深刻である。

かつての日本もバブル崩壊後は、潰れないと神聖化された銀行が倒産、合併され、合わせて向かえたデフレの真っ只中で株価最安値を経験した。

今回の波及も、中国、日本とじわじわ訪れる局面もあろう。しかしながら、日本の経営者も対米一辺倒では成り立たないことをすでに熟知している。

・・・ファンドや銀行の崩壊、原油の暴落など、もうすでにキッカケ待ちなのかもしれない。

*この記事は投資や投資に関する勧誘を意図するものではありません。
*投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。


*末筆ではありますが、中国での大地震による被災者のご冥福と、地域の復興を心よりお祈り申し上げます。

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May 11, 2008

マーケティング②(第五水準のリーダー)

マーケティング(Wikipadia)は、「社会上・経営上のプロセス」で企業の統合的活動である。マーケティングミックス(Wikipadia)を単に暗記することではないし、単なる広告、宣伝の実行部隊でもない。それらは、確かに必要なこと、というより統合的活動を行なう上では前提である。本日の記事はその実行者=リーダーの性質に関するものである。

コリンズは、『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』にて、「良い企業を偉大な企業に変えるために必要なリーダーシップの型」を研究し、意外な特徴を発見した。

「万事に控えめで、物静かで、内気で、恥ずかしがり屋ですらある。個人としての謙虚さと、職業人としての意思の強さという一見矛盾した組み合わせを特徴としている」(同書p18)。

***第五水準のリーダーシップとは(ジェームズ・C・コリンズ(山岡洋一訳)『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』日経BP社、2003、p31を参考に作成)

彼らの改革は、地味である。いわば、地殻変動に類似しており、革命、劇的な改革、痛みを伴うリストラを行なわないし、革新的技術に頼ることがない。また、それを主要な原因にしない(第一章趣意)。

例えば、キンバリー・クラークのダーウィン・E・スミスは大物ぶることがなく、配管工や電気工と話すのが好きで、休暇には自分の農場でショベルカーを運転し、穴を掘ったり岩を動かしたりしていた。英雄として認められようとしたことも、偉大な経営者というイメージを作り上げようとしたこともない(第二章p28-29)。

彼らの策定する戦略はスマートである。コア・コンピタンスでもなく、長年行なっている、いや従事していなくとも「自社が世界一になれる部分」でキャッシュフローと多くの利益を大量に生み出す効率的な方法を見抜き「経済原動力」とする。そして、それに「情熱」をもって取り組めるものの概念を加え、選択する。従って、意外に地味な産業であることが多い(第五章p152-153)。

実行に当たっては、第四水準のリーダーにありがちな「一人の天才を千人で支える」方式はとらない(10年ぐらいならこの方法でもいいですが、本書は持続可能性に関することがメインテーマなのでこういう記載になります)。この方式は目標があり、その実現に向け能力の高い兵士を集めることになるが、彼らは、まず、適切な人材を集め強力な経営陣を築き上げ、それから、最適の道を模索するのである(第三章p74-75)。

その集まった経営陣、従業員は「規律ある人々」であり、余分な管理はいらない。「人ではなくシステムを管理」する。組織で言えば、「規律と創造性」の関係から、規律の文化は高く(官僚的ではない)、起業家精神の高い組織となる(第六章p194)。

結局は、第五水準のリーダーは規律高い文化を築くのである。決して「規律をもたらす」ことではない。

その 反例の典型 として本書p211に取り上げられた、リー・アイアコッカの労働組合との交渉での発言が、その姿を投影している。

「協力なんかできないと言うんだったら、お前らの頭を吹っ飛ばしてやる。明日の朝、倒産を宣言するからな。全員失業するんだぞ(本文そのまま)」

こういった企業では、規律の文化は低下し、起業家精神の低い「官僚的組織」になってしまう。人を管理し、システムを管理・・・コストが肥大化し、経営を圧迫する。

創業者が長く政権を得ていて綻びがでてくるケースなどでは第五水準を思い起こす。

・・・しかしながら、彼ら(本書で”暴君”と表現されたリーダー達)はまだマシなのかもしれない。少なくとも在任中の株価は上昇し続けたのであるから・・・。

<参考書籍>      <関連書籍>


photo (C) Maco

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May 8, 2008

標準化の功罪

企業にとって「作業の標準化」は非常に重要な課題である。官製不況(『ウィキペディア(Wikipedia)』より)と言われる言葉もあるが、例えば、派遣労働規制により、企業は労働の柔軟性を失い、人件費の負担を強いられる。

そうすると、特に製造業は、人件費の安い海外へその生産工場を移設するが、そこで、作業の標準化が進んでいないと、狙う品質は確保できず、かえって、その対応コストがかさんでしまうこともある。

おそらく、そのようなことが進められる企業は、成長する市場に参入する経営姿勢であり、それは海外比率が高い企業である。国内を相手にしている企業では、成長率が低いため、固定費用が高くなるだけである。

このような中でも、企業は、新たな製品・サービスを生み出し、効率良く事業化していくことが求められている。作業の標準化により、「誰でも出来る作業」を派遣やアルバイトに頼ってきた製造業では、上記の法規制の中では、作業を効率化することより、新たな製品・サービスを市場に供給することに資源を集中した方が、市場が求める成長性を達成できる可能性が高くなることは容易に想像がつく。

そのような製品・サービスの研究・開発作業をより定量化するために、リアル・オプションが用いられるが、この定量化の帰結は、「オプションは多い方がいい」ということであり、詰まるところ、研究・開発者の取り組むネタが豊富なほうがそのチームのオプション価値は高いということである。

この価値を台無しにする行為が、研究・開発行為に標準化を求めることである。トヨタが競争相手に対しコスト競争力を維持できているのは、「標準化された作業」に創造性を取り入れたことにある。作業を単に標準化したことでも、ましてや、創造性を求められる現場に標準化を導入したことではない

具体的には、「組立要員は車を組み立てるだけでは、機械が故障したときに、修理の専門家が現われるまでぶらぶらしていなければならないが、彼らはその整備と修理の訓練を受けており、すばやく修理、作業の復旧を可能にしたのである」(『組織の経済学』第1章より趣意)

創造性を求められる現場に標準化を導入する極限値は、ジェネリック医薬品である。研究・開発人員はほとんどいらない(例えばの話です。後発医薬品も幾つかの試験をクリアしなければなりません。詳しくは後発医薬品(『ウィキペディア(Wikipedia)』)をご覧ください。)。

残念ながら、標準化の欠点は、創造性を発揮できないことにある。決められた行為以外は労働と認められないからである。そのような労働環境の上級管理者は、いや、他部門の従業員でさえ、おそらくは、学究的なディスカッション、説明できない現象の実験や文献調査、専門機関への訪問などは、単なる「遊び」と見なすであろう。

しかしながら、標準化の利点は、誰でも行える作業に落とし込んでいるため、高い賃金を必要とする従業員でなくとも、当該企業が考える最適地での生産が行える点にある。

・・・事業展開は投資行為と概念が合致している。絶対に儲かる方法が存在しないように、これを導入すればバラ色の方法も・・・ありまへんでぇ。

photo © Maco

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May 7, 2008

Wekaを起動する(記事一覧)

本ブログのフリーのデータマイニングソフトの入門的使用法、“wekaを起動する”に関して、一覧を記載しますので、参照ください。

*   *   *   *

Weka どうマイニングする?
Wekaを起動する。
Wekaを起動する(補足)。
Wekaを起動する(決定木分析①)
Wekaを起動する(決定木分析②-1)。
Wekaを起動する(決定木分析②-2)。
Wekaを起動する(決定木分析③予測する)。
Wekaを起動する(決定木分析④因果関係を知る)。
Wekaを起動する(記憶ベース推論①)
Wekaを起動する(記憶ベース推論②)
Wekaを起動する(ニューラルネット)
Wekaを起動する(複数の分析を行う)。
Wekaを起動する(アソシエーション分析①)
Wekaを起動する(アソシエーション分析②)
Wekaを起動する(ROC曲線とlift chart)補足1
Wekaを起動する(補足 研究開発部門での使用)
Wekaを起動する(関連リンク集)
Wekaを起動する(データマイニング入門)

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Wekaを起動する(データマイニング入門)

本ブログで紹介してきた「Wekaを起動する」(ブログ右のLabels&Links"データマイニング(Wekaを起動する) ")の内容を"http://www.ilibrary.jp/MOTtextBooks/weka/weka.html"にまとめました。

内容は、データマイニングに関する関連サイト、参考書籍、とブログの内容をPDFにまとめてあります。PDF中の図が見難い場合がありますが、ブログでご確認ください。

*本内容は非常に多くのアクセスをしていただきありがとうございました。この内容が皆様の実務、研究の手助けにになれば幸いです。

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May 2, 2008

マーケティング①(なぜケーススタディなのか?)

MBAのコースやマーケティングでは、必ずケース分析を行なう(特にマーケティング)。様々な企業のケースを学び、そこから、課題、問題点を抽出し、どうすればいいかを議論していく。それは、問題発見能力の涵養なのである。

通常、マーケティングに関する部署は企業の本社にあることが多い。研究開発や生産活動が最適地活動となっても、マーケティング機能を有する部署は本社から離すべきではない。

マーケティングはいわゆる「儲かる仕組み」や「効率を高める仕組み」など何らかの「仕組み」を創っていく機能がある。

単に、広告や宣伝をマーケティングと呼んでいるのであれば、それは広告代理店に任せれば良い

いわゆる「仕組み」を創っていくのであるから、彼らは、経営戦略、組織戦略、技術経営、はたまた財務などMBAでの基礎知識はだいたい実践で身につけている。身につけていなければ、「仕組み」を創れない。それが、本社から離れてはいけない理由なのである。

そういった機能(能力)を維持する訓練がケーススタディなのである。ケーススタディに記載されている情報のみで議論する(ケースの情報は結構詳しい)。その企業が現在、どうなっているだの、私はその企業の人を知っていて現在はどうであるだのは関係ない。ソニー、松下といえども、ケース上のソニーや松下なのである。

「問題発見能力」を養うことが目的であるから、ケース上の話でいい。
また、議論していく中で、種々の主張を収斂させていく訓練は組織では貴重である。

実際にやってみるとわかるが、「この企業はこれからどうするべきか」などは、当該企業の財務、戦略、組織、もちろん製品やサービスをケースの中から抽出し、強みを活かすのか、弱みを補強するのか、種々の議論になる。やはり、基礎知識がなくては話にならない。かといって頭でっかちでもいけない。

・・・畳水練と言われても、自社の売上、営業利益率、研究開発比率、ROEやROAなど基本的な企業情報を言えないマネージャーよりはマシですよね。

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May 1, 2008

Randy Pausch教授-last lecture

教授の最後の講義-last lecture。数々の教授が「いったい私ならば、彼ら(学生)に何を伝えるであろう」と考えている。教授というより、彼らの人生の総括かもしれない。

ハーバードにおいても、その学期の最終講義の最後に教授が教訓的に話をするという。(書籍には『ハーバードからの贈り物 (Harvard business school press)』があるそうです)。

しかしながら、今回は、本当のlast lectureである。彼は、カーネギーメロン大学に所属していて、3Dアニメーション作成システム「Alice」を開発したことで有名である。その彼が余命数ヶ月と診断され(膵臓癌)、とうとうその教壇に立つ時が来てしまった。

が、全く深刻さはない。
「おいおい、そんなしかめっ面(同情しているような)してどうするんだい?」
「ぼくは、まだまだ元気だよ!」
と腕立て伏せをはじめたりしてその最後の講義は始まっていく・・・。



*映像はYouTubeなど種々のサイトに豊富なので、検索してみてください。
ちなみに、上はGoogle Videoによるもので、直接ご覧になれますが、参考まで、URLを記載しておきます。是非ご覧ください。http://video.google.com/videoplay?docid=362421849901825950&hl=en
*全85分です。最初の約10分ぐらいは彼の紹介部分です(画面に見えている人はその人ではありません)。

<関連書籍>*この書籍はRandy Pausch教授に関連ありません。

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