生産現場での混在―プッシュ or プル?

2010年10月10日

品質はこうして落ちていく

t f B! P L
本日の記事は、現場に近いものです。

*  *  *  *  *

生産方式といえば、それはもう・・・各企業の現場を監督、統括する担当者は、ビジネス・スクールで非製造業者出身の生徒に講義が可能な程の知識と経験を有していることだろう。

それほど、現代ではこの仕事は複雑化し、難易度は高くなっている。

とはいうものの、大まかな流れとしては、プッシュ、プルの2方式が考え易い例であり、恐らくは、これらに収斂すると思う。

    プル方式―下流工程が部品を必要とするときだけ、上流工程はその必要量分生産、というものでJIT(ジャストインタイム生産システム:Wikipedia)がその説明に十分である*。
    プッシュ方式ORwikiでの解説)は、上流工程で部品加工が終わったらそれを下流へ渡していくもので― 「製品の生産計画に合わせて、必要な部材や材料などの所要量を計算し、製品の生産日程に間に合うように、部品の生産日程や材料の調達日程を決定する。」** という方式である。
注)*, **:徳山博于, 熊本和浩, 曹徳弼, 『生産マネジメント』, 朝倉書店, 2002, p68-69.

もちろん、どちらが正解ということはない。それは、製品とのマッチングであるが。。。

とりわけ、80年代の円高(プラザ合意)、後の円の最高値、株安、アジア危機など、幾多の苦難を乗り越えてきた製造業の多くは、近年の経営環境に対応しているうちに、一見、プル型を志向したようではあるが、本質的にはプッシュ型のままであることが多い。

上記のプル、プッシュの記載を読まれて―

『ん?ウチは、プッシュのように計画は立てているが・・・プル方式を採用している。』

と思われれば・・・それは、混乱している状況である。


*  *  *  *  *

プッシュは、需要予測が容易であればパワフルな方法であり、従来から使用されてきたものである。

その方式が染み付いた現場では、近年の多品種化における需要(=生産数)の不安定化に対し間接部門との協業で、どの品種でも採用可能な“仕掛り”、いわゆるジョーカーを考案しようとする

オペレーターは、生産効率を高める、つまり、単位時間当たりの生産数を歩留まりとともに高めていくことが、メインワークである。

結局、少ない労力で、所定の品質を達成し(大抵は高品質)、稼働率、歩留まりを高く維持していくことに主眼が置かれ、QCサークルなどでは、そのようなキーワードが目標とされる。


これに対し、カンバン方式に代表されるプル方式は、逆で、必要な時に、必要なものを、必要量だけ生産することを目的としている。


大切なのは、リードタイムである。

顧客がカンバンを流してから(=発注してから)、何日で手元に製品が届くのか?が重要であり、それが10日で届けることになっているのであれば、9日で届ける必要はない。10日が正解なのである。

関係各社がクラスター化していれば、組立業者はパワフルな生産方式となる。


意図的であれ、無意図的であれ、このように異なる方式であるプッシュ、プルが混在する現場では、オペレータは混乱しており、結果的に、当該企業は資源を浪費するばかりである。

結局、両方式では、工場での生産に行き着くまでの業務や運営が全く異なるので、例えば、在庫の考え方にしても、考え方が統一できない***。

注)***:(最小)最適在庫を模索するのか(主にプッシュ)、低ければ低いほどいいのか(望小特性なのか、プル)。


オペレーターはどうだろうか?

プルの場合は、生産ラインをストップする権利が与えられる。これは経営の観点からは、大きな責任(≒お金)を任せている。プッシュの場合は伝統的にQC的な背景がある。

共に、高度な従業員の教育を頼りにしている。

だが、製品により異なるであろうが、いわゆる従事する流動性の高い従業員と正社員の比率は、これらの方式では異なるはずである。そうだとすれば、結果的に、その周辺部門の構成も異なるであろう。


だから、どちらから、どちらへ移行するのも大変な経営行為であるし、その過程で生じる問題、課題を、混在期のものと把握できずに解決の方向を間違え、いたずらに時間が経っていくことは、資源を浪費するばかりである。


・・・単なる“混在”・・・ていうオチもあるもんです。これでは、どちらのいい所も発揮できません。何が正しいかわかりませんから。。。

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