設計の概念化と利益の創出

2011年11月9日

設計

t f B! P L
設計”――大よそ電機メーカーの設計では、「製品の設計」が意味することは、顧客との折衝(主に企業間取引の場合)、開発を通じて研究所、大学との協働、仕掛品の設定や製造方法の設定など、生産技術、現場とのやりとりなど、多岐にわたる機能を示していることが多い。


結局のところ、「どのようにして利益を創出するかを構想する」ことに収斂するが、以下の概念化はその参考になるものである(Suh(2004)による「設計行為の概念化」[1])。


下図において―――

顧客領域(customer domain)とは顧客 が期待する商品、製造プロセス、システム、材料などのニーズ
機能領域(functional domain)では、顧客の要求仕様が要求機能(functional requirement)と制約条件に基づいて記述され、
実体領域(physical domain)では設計解が導出される。
そして、設計解に基づいて記述された製品を生産するにはプロセス領域の生産条件(process variable)を決定する。





・設計における4つの領域
(出所)Nam Pyo Suh, (中尾政之, 飯野謙次, 畑村洋太郎共訳)『公理的設計』, 森北出版株式会社, 2004. P12 図1.2より(参考文献[1])。設計過程は、左から右へ移動するが、反復可能である。設計者は右の領域で生じた思考に基づいて左に戻ることができる。


例えば、生産性を向上する行為に対しても、プロセス領域から左に戻り、設計解を求めていく。

この時、顧客領域、機能領域からの写像された要求は変わらないとすると、設計解は顧客領域を経た機能領域からの要求を満たしつつも、生産性を向上する因子を最適化することとなる。

また、既存製品の改良においても、顕在顧客の要求を要求機能に翻訳し、設計解を導くのである 。これらの行為は単独で行なうことはできない。分化された機能組織との協働となる。


基礎的な研究が必要であれば、研究所との共同開発を行い、量産化に新設備が必要であれば、生産技術を要請する。



次に、商業的な側面から事業を考えると、常に利益が創出されるのは、ある地点―例えば、材料開発、組立、サービスなどバリューチェーン上での定点―ばかりではないし、それは時間とともに変遷する*(例えばコモディティ化によるなど)。

* 一般的には、PC市場において、当初はPCを組み立てるメーカーに利益が集まったが(顧客はPCが欲しかった)、やがて、インテルやマイクロソフトに利益が拡散し始めたことなど(顧客は性能を欲しがった)。


従って、設計者は(経営者は)、現時点での利益創出地点というより「これから金が向かう場所」([2]参照)を感づかなければならない。

その場所とは、クリステンセンが述べるには、[2]における5,6章を参考にすれば――

「顧客にとって重要な問題の解決策である「片づけるべき用事(the job-to-be-done)」をベースに始まり(顧客領域)、「バリューチェーンのなかの性能がまだ十分でない地点に位置する企業が、利益を握る」という基本原則を参考に、得意とする業務ばかりではなく、例え、学習が必要であっても、顧客が高く評価する業務を行うことである。」


とはいうものの、実際には、もし、自身がドリル製造メーカーなら、何かしらの穴をあける事を要望する顧客にドリルの品質を語るかもしれない(顧客は穴があけられれば片づけるべき用事は済むのだが・・・)。


また、上記に対応していけば、事業は流動的になり、雇用など関連する問題も多い反面、利益が創出されていることで解決することもある。


“設計”という行為は、思っているほど企業組織に影響力が高いものである。 


・・・「設計とは、“何を達成したいのか”と、“どのように達成したいのか”の相互作用である。」([1], p3, 1.3 誰がどのように何を設計するのか、より。)


<関連記事>-> 2024年、「設計」について再考します。

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