社会人MBA-技術者編

February 27, 2011

パーセントの使いどころ

以前、経済産業省による「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ」が発表され、その新成長分野*に定めた分野の中に“観光”が挙げられていた。
*他は、グリーン・イノベーション(エネルギー関連)、ライフ・イノベーション(社会保障関連)、アジア経済(アジア市場の需要)

その主な測定系のひとつに、外国人の入国数をカウントしたものがある。これは、法務省の「平成22年における外国人入国者数及び日本人出国者数について(速報値)」にて、発表されている。

発表されている数字を元に、外国人入国数の推移を下のグラフに描画した。


外国人入国数の推移(昭和60年~平成22年度速報値まで)


グラフからは、近年まで、入国者数は増加傾向で、図の赤矢印付近(リーマンショックの影響)では、特異な減少が見られるが、平成22年度では、回復していることがわかる。

法務省のサイトでも、人数の増加した要因として、リーマンショックからの「アジア地域の景気回復に加え,中国に対する個人観光査証の発給条件緩和措置(法務省HPより)」など、述べられている。


*本記事では上記の施策内容についての記載はここまでです。


*  *  *  *  *

本記事でこれから述べるのは、(これまでも幾度か述べてきたが)“パーセントの怖さ”である。


パーセントの使用は、本当に注意が必要である。例えば、学生の頃の試験などでは、もちろん、上限が“100”である制約はあるが、平均80点を取得している学生と平均50点を取得している学生のそれぞれ10%得点を伸ばすとすれば、後者の方が容易である可能性が高い。

元の数字の小さいほうが、○○%向上!などと表明する時にも、有利なものである。

従って、上述の入国人数に関する数字においても――

“前年比24.6%(約186万人)の増加”

という定性情報だけでは、ものすごく、日本に入国する外国人が増加したように感じてしまう。実際には、昨年の多くの企業の業績回復情報であったように、比較する前年がリーマンショックで落ち込みが大きな分、前年比は大きくなってしまっている(図の赤矢印部分)。

もちろん、マーケットを意識した企業情報では、そのような公開の方が、市場への回復基調を訴えることができるが、分析しなければならないデータなどの場合は、参考までに…という程度が適当である。


当たり前の話だが、前年と比較することに意味がある場合や、それを見出そうとする場合に、前年比○○というコマンドは実施されるのである。


では、データはどう分析すればいいのか。もちろん、必殺の方法はないが、大よそ注意する3つの点は―――

比較
推移
相関

である(詳細はこちら)。

何と比較するのか、上記のような年度ごとのデータであれば、推移はどうなっているのか(企業の業績など)、何かと相関性はないか?

など、データを収集し、描画しているうちに、自分の頭で考え始め、それについて、自分の言葉で語ることが出来るようになる。


上述のデータで言えば、前年と比較することより、計算された大きなパーセントの数字で、施策の効果が検証されているかどうかは別問題である。

アジア経済の回復にあたり、以前の水準を取り戻した、かもしれないし、取り戻したにしては、その水準が低すぎるかもしれないし(サチュレートしている)、データを見ての仮説はまたまた誕生する。

それを検証するために、データをサーチしたり、何かと相関性を調べたり、研究、開発であれば、実験を行なったりと次に進んでいく。


そうなると、パーセントというのは、結構、具体的な実データで言わなければならないことを、時間の都合で簡単に言うと…または、当該データを見慣れない人のために…という感じでの使用でパワフルになるが、(話としては)具体的になりにくい。


・・・前年比――わかったようでわからない比較です。


<関連記事>
相関関係と因果関係

<参考までに>
データを分析、集計する際の三原則
相関分析について
回帰分析をエクセルで行う

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February 24, 2011

「事業所・企業統計と特許データベースの接続データを用いたイノベーションと企業ダイナミクスの実証研究【ノンテクニカルサマリー】」, 経済産業研究所

特許出願―――日本の企業約450万社のうち、1.4%の企業が特許出願を行なっている。特許とあまり縁のない企業などもあるので、この数字が大きいか小さいかは別として、企業にとって、特許に関する活動は大切である。


多くの企業は、研究員、開発員に年間のノルマを設ける。もちろん、権利化などコストはかかるが、新入社員であっても、知財部などとの打ち合わせに顔を出しておけば、グローバルな企業であれば、いきなり、当該権利に関して、世界を目の当たりにできるので、良質な教育となる。


レポートでの調査結果では―

「特許出願やオープンイノベーションを行なっている企業は概ね生存率が高く、企業の成長率が高いこと」

を述べている。


このことには、様々な背景が考えられるだろうが、従業員の教育という観点からは以下のような効用が期待できる。

特許に関わる従業員は、単に他社の状況を把握する、という利用ではなく、当該事業の今後や発明技術を“構想”するという関わり方を意識に置けば、関係従業員は経営的視点を養うことができる、というものである。


・・・“カイゼン”につづき“コウソウ”や“セッケイ”がキーワードなのかもしれません。


<参照元>
○「事業所・企業統計と特許データベースの接続データを用いたイノベーションと企業ダイナミクスの実証研究【ノンテクニカルサマリー】
2011年1月, RIETI Discussion Paper Series 11-J-009
経済産業研究所


<関連書籍>
 

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February 20, 2011

リチウムイオン電池―日本企業はイノベーションのジレンマを克服できるのか。


炭鉱、鉄鋼、半導体・・・過去を遡れば、これらのワードは時代を代表するもので、将来を約束されたようなイメージが浮かぶ。

思い起こせば、学生時代・・・半導体の研究をしていた私は、研究グループの教授から「半導体をやってれば、一生安泰だよ」と言われたことを思い出す。

実際、半導体とは言っても、分野が広いので、確かに企業においても開発の火は消えていないが・・・。

+ + + + + +

さて、現在では、そのワードは“リチウム・イオン電池(Wikipedia)”であろう。今後の将来予測において、車載用、産業用の用途はどこもアグレッシブなものとなっている。

この産業は、素材にせよ、組立にせよ、日本企業の独断場であったが、現在、巨大化した日本企業は、典型的なイノベーションのジレンマ*に似た状況を迎えている。

    * イノベーションのジレンマ―― 業界を牽引してきた有力な既存企業が、技術変化に伴う新市場への対応を、従来通りに対応してしまい、新市場への対応能力を高めてきた新興企業の前に力を失ってしまう事態。

振り返れば、主に携帯電話、ノートPCの電源として、地道に、安全性を損なうことなく電池の容量を高め、顧客要望に応えて来た電池産業―――その漸進的な技術開発のネットワーク先は、携帯電話やノートPC組立産業に加え、自動車産業が加わってきた。

特に、この10年の変化は、市場全体の90%以上を占めていた日本企業は、その半分程度の勢力になってしまうものであった**。この変化は、とりわけ組立産業(素材メーカーではない)には、厄介な構造変化であったものの、現在では、例えば、新たなネットワークとなった自動車産業との協力体制など、ほぼ態勢が固まりつつある(しばらくはこれで進むだろう)。とはいえ、電池市場自体の成長に助けられていることは否めない。


イノベーションのジレンマ――日本企業にとって破壊的に成りうるのは、①新興企業の進出、②新製造方法の出現である。

①新興企業の進出
現在の状況を概観すれば、技術的には日本企業群に、投資規模的には(サムスンなど)韓国企業が優勢である。アグレッシブな環境は、主に中国政府の車載用(公共用など)電池の推奨政策にある。

新興勢力が力を発揮するには(既存企業が対応しにくくなるのは)―――数多くある新興企業の中には、資金が豊富な企業も少なくない(特に中国企業など)。ならば、ある程度実績のある企業との合併や買収で大きくなれば、既存企業が構築してきたネットワークを簡単に手に入れることが出来る。

特に、このケースは中国に限られる話かもしれないが・・・。


②新製造方法の出現
一方で、以前の記事のレポートにもあったクラスター化している日本の電池産業―――新たな技術の発明を生みだす環境は整っている。

その日本企業の技術的な脅威は、かつての鉄鋼業界でもみられた、現在の電池品質にはとても及ばないが、それを製造する際の革新的製造方法――例えば、低価格、製造工程が半分など――の出現である。

そういった方法は、いずれ、製品自体の品質も高くなるようにカイゼンされていくので、底辺の市場から徐々に高品質市場をも席巻していく。


典型的なこのパターンは、(技術的に革新的ではないが)現在ではモジュール化であろう。品質向上は素材メーカーの持分として、素材さえそろえれば、簡単に製造できてしまう、というようになれば、組立を主要とする電池メーカーは対応できなくなってしまう。


とはいえ、典型的な“made in Japan”製品であるゆえ、日本企業の場合、素材の組合せ、製造工程での種々のノウハウなどがなければ、高性能かつ安全を満たすようなことは出来ないようになっているであろう。


数年後には、ビジネススクールで格好のケースになるであろう、この産業の構造変化とその対応。


・・・持ち運び可能なエネルギーを顧客に届ける――この競争はまだまだ熾烈です。


<関連記事>
「バッテリースーパークラスターへの展開」、日本政策投資銀行
モジュール化する自動車産業の今後 1/2
モジュール化する自動車産業の今後 2/2


<関連書籍>
 

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February 16, 2011

「イノベーションの重要性」,流通経済研究所

“「イノベーション」が日本経済復活の鍵であるとして注目を集めている。”

“何かを新しくする”というイノベーションの重要性はよく言われる。日本型高品質(エッジが効いている上に耐久性に優れている)の多くは、習熟曲線を意識することが大切である。

ここは、従業員のなす有機的成長、または結合なので、あまり効率的ではない。


コラムでは――

日本企業について技術開発力はあるが、技術利用能力、事業化能力に課題があると考えられるだろう。

と述べられている。


(ご紹介まで)


<参照元>
○「イノベーションの重要性」,流通経済研究所
2011年1月18日
-> http://www.dei.or.jp/opinion/column/new.html
-> http://www.dei.or.jp/opinion/column/column_backup.html

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February 13, 2011

結局、プロジェクトは泥臭いものである。

あるシステム、仕組み、もしくはプロセスには何らかのアウトプットがある。典型的には、工場において、歩留まり、稼働率、不良率などの定量情報である。

そのアウトプットにおいては、結果に影響を及ぼす要因は管理されていることが普通である。

“管理”出来ていれば、有意差がない場合の範囲内で、少々のマイナスの結果であっても、そのアウトプットを、すぐに標準的な水準に戻すことができるであろう。

となれば、一見、操業が実に簡単に思えるかもしれないが、なかなかそうはいかない。それは、日頃の納入品の品質バラツキに加え、常に開発され、顧客にとっての価値を向上させるように、その仕様を新たに更新し続けているためである。


だから、過去にないマイナスのアウトプットが生じることがある。多くは、量産テストを行う際に、それまでと同じ現行の条件で、新仕様を試行し、その際に意図的に表出させることが多い(もちろん、操業中もそれはある)。


新たな仕様には、それまでの管理では防ぎきれないマイナスのアウトプットが発生する可能性が高いので、(ある程度推定しているとはいえ)それらを事前に発生させその程度を確認するのである。


そして、エラー発生の原因を探求し、マイナスのアウトプットを防ぐことが出来るように、管理可能な設定を見出していくのである。

続いて、ある設定で再び操業試験を実施し分析し・・・

実に泥臭いこのトライアンドエラー(試行錯誤の繰り返し)は、時に問題解決型プロジェクトでは、心が折れそうな“冬”の期間とも言える。

結局、当該システム、またはプロセスなどの問題は、経験豊かなベテラン、新たな知識を持つ若手など知の結集によって乗り越えていくものである。

だから、手技・手法を中心化しても問題は解決せず、それらは、当該組織が有する固有の知識、技術を引き出す窓として当該組織に活用していくことが大切なのである。


そのような多種多様なバックグラウンドを持つチームで大切な3Kは――共有・共感・共同である。

メンバーとチームの目的を共有し、メンバーの専門性から導き出される種々のソリューションを共感、そして、問題解決へのチームの歩みが、属する企業(や他の組織)への貢献に結びついていることを意識しながら共同でことに当たる。


・・・発表会でのスムーズなプレゼンテーション――あれは氷山の一角なのです。プロジェクト実行段階で、あんなにうまくいくことはありません。。。


<関連サイト>
問題を定義、発見する―プロジェクトの課題は何か。

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February 6, 2011

そのデータは、主張の根拠となっているのか?

「最近、生産性低いんだよな。」
「程度は?」
「昨日測定すると、だいたい5%ぐらい低い。」
「それは問題だね。」


なんて、よくある会話である。

さて、もしこのことが問題であれば、工場のオペレータは、これらをどのようにデータ化して、生産技術、設計、開発部門へ言えばいいだろうか?

*  *  *  *  *

①“最近”とは?
第一に、“最近”の定義である。とはいうものの、これは、当該組織で生産性を測定する期間が定まっていると思うので問題ないだろう。

②“昨日と比べてだいたい5%”
数字が“だいたい”なのがNGなのではなく、何と比較しているかである。

①で記載したように、当該組織では、週ごと、月ごとなど生産性に関する指標の取りまとめ期間は定まっているはずである。

だが、多くはシフトごと、日ごと、といったスパンで測定している。“昨日”の生産性の指標が85%であったとして、今日が80%であったとした時、現在、この記事の情報だけでは、それが問題なのかどうかわからない。

次の情報を加えて考えてみる。

直近(10生産期間単位)の生産性データが以下とする。

…82,80,79,79,82,82,84,77,76,85,80 <-(今日のデータ)


このデータは、おおよそ(平均、標準偏差)=(80、3)である。太字の部分がいわゆる昨日であったら、今日の80について、生産性が低いということが有意に言えない。


さらに、彼ら(生産技術、設計、開発部門の人)の中でも、比較的新しい人は素直に尋ねるだろう。

日ごとのデータの85%って、どうやって算出したのですか?

もちろん、生産性のデータなので、(アウトプット)/(原料の仕込み)かもしれないし、量産機の稼動データや製品自体の品質データであれば、操業時間内に決められたサンプリング間隔によるデータ(例えば、1時間に1回など)かもしれない。

工場のオペレータはそれを答えるだろう。

だが、大抵の場合、そのような基本的な質問で、彼らが確認したいのは、「それは、本当に昨日を代表しているデータかどうか」であり、何かしらのバイアス*を嫌っているのである。
* 多いのは、新製品を生産し始めた時などは、従来の製法や原料ではない場合が多く、効率が低下した過去の経験などからそう思ってしまっている。
【参考】ヒューリスティックについてはこちらのページの中頃



技術者の多くは、自分でデータを測定するか、よっぽど信用している人のデータか、測定システムがしっかり成立しているデータなどでないと信用しないものである。

だから、バイアスがかかってないか、上記の様な場合とは限らないが、そのデータが、主張の根拠となっているのかを確認するのである。


“誰が悪いかではなく、何が悪いか”
“何を何にどのように変えるのか”


がしっかりしていれば、測定データの質も向上し、必然的に分析精度も向上する。


結局、“何が問題か?”の段階でその問題を代表するデータを提示できなければ、当該組織の会議は単なるムダになる(会議のコストは意外に高い)。

多くの場合、技術陣がよく会議で提示する(決定的な)データは、氷山の一角であり、そのデータに行き着くには、膨大な測定、分析をしていることが多い。


・・・自律した生産現場かどうかは、取得しているデータ、またはその姿勢自体が、その組織の水準を代表しています。


<関連ページ>
工程能力分析
FMEA(Failure mode and effects analysis)
エクセルで行うF検定, t検定

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February 2, 2011

「CIOよ、革新性を取り戻せ~空洞化した社内からはイノベーションは生まれない」, CIO Onlineより。

CIOはイノベーターか?

意外に存在感が薄くなりがちなCIOだが、やはり、イノベーションの源泉は社内であるほうが有効である。CIOのリスクテイクとは・・・。


(ご紹介まで)


<参照元>
○「CIOよ、革新性を取り戻せ~空洞化した社内からはイノベーションは生まれない
2011年1月19日, CIO Online


photo by Maco


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