50±2gのA,B金属を接合、合計質量は?①

2009年4月22日

統計解析 有意差あり!

t f B! P L
例えば、50±2gのA,B金属を接合したとする*。この製品の仕上がりは恐らくは、100gを狙っているものと推測されるが、工場では±○○gの許容値が大切である。

*ここでいう±2gとは、データは正規分布に従い、2標準偏差分を表現しているものとする。

その製品は、部材がA,Bから成るものとすると、100±2.8g となる。

誤差は伝播するのである。


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ある工場の最終の質量検査工程の担当者は、困っていた。設計担当者によれば:

「±1.0gで管理してください。」

という。この根拠を尋ねると:

「この許容差は、伝統的にこうですよ。」

ということらしい。これまでは、それでもいいと考えた担当者であるが、今回は、現在展開中の品質活動で指摘されており、「伝統的」だからという回答では、雷が落ちそうだ。

製品はシンプルなもので、容器1ヶ、蓋1ヶ、粉体、ジェルで構成されている。
流れは、「容器Zに粉体A、ジェルBを注入し、蓋をする」というもので、それぞれ:
容器12.0±0.2g
粉体A4.0±0.3g
ジェルB3.0±0.2g
蓋1ヶ1.0±0.1g

ということらしい。
**ここでも±○○gとは、データは正規分布に従い、2標準偏差分を表現しているものとする。これは説明のためなので気にしないでください。

そこで、検査担当者は、設計担当者に:
「±1.0gに決まった根拠データってありますか?次の○○品質運動で聞かれていて…コンサルに答えなくてはなりません。。。」
と聞いたところ、次のデータと説明がなされていた。

*  *  *  *
その工程の量産テストの時、各質量(容器など)が全体の質量にどの程度影響があるか測定しています。それは、以下のようになっています。


上のグラフは量産テストの最終データです。設計上は9.0g~11.0gであれば、副作用なく機能するので、その範囲での工程能力が有効です。テスト当時からおよそ、cpk≒1.50程度ですので問題ありません。

下のグラフは、全体の質量に対しての影響度を分析しています(単なる分散分析です)。粉体の影響が大きく、値がばらついていれば、粉体をチェックしてください。次の容器は、おそらくロットによって違いますので、値がシフトする傾向なので、全体質量の分布が少しシフトしているなら疑ってください。

次に、±1.0gの許容範囲の設定ですが、上記のようにひとつには、製品機能上の範囲、二つには、それぞれの構成物が持つばらつきの伝播で、通常和、差の式は以下で求めます。



⊿R=((0.2)^2 + (0.3)^2+ (0.2)^2 + (0.1)^2 )^0.5=0.42

なので:
構成物が持つばらつきの伝播は±0.42g<製品設計上は±1.0g となり、大きいほうを採用しています。なんだかんだと理屈をこねましたが、結局は製品機能上の問題なんです…。

*  *  *  *

だから、「伝統的」なのかぁ…、検査担当者は次回の準備に入った。。。

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誤差は伝播する。

工場では公差の設定などではよく知られている(物理実験では”測定精度”ではないでしょうか?)ことだが、うっかりすることもある。


こんなことがあった(つづく)


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