*ここでいう±2gとは、データは正規分布に従い、2標準偏差分を表現しているものとする。
その製品は、部材がA,Bから成るものとすると、100±2.8g となる。
誤差は伝播するのである。
++++++++++++++++++++++++++
ある工場の最終の質量検査工程の担当者は、困っていた。設計担当者によれば:
「±1.0gで管理してください。」
という。この根拠を尋ねると:
「この許容差は、伝統的にこうですよ。」
ということらしい。これまでは、それでもいいと考えた担当者であるが、今回は、現在展開中の品質活動で指摘されており、「伝統的」だからという回答では、雷が落ちそうだ。
製品はシンプルなもので、容器1ヶ、蓋1ヶ、粉体、ジェルで構成されている。
流れは、「容器Zに粉体A、ジェルBを注入し、蓋をする」というもので、それぞれ:
容器1 | 2.0±0.2g |
粉体A | 4.0±0.3g |
ジェルB | 3.0±0.2g |
蓋1ヶ | 1.0±0.1g |
ということらしい。
**ここでも±○○gとは、データは正規分布に従い、2標準偏差分を表現しているものとする。これは説明のためなので気にしないでください。
そこで、検査担当者は、設計担当者に:
「±1.0gに決まった根拠データってありますか?次の○○品質運動で聞かれていて…コンサルに答えなくてはなりません。。。」
と聞いたところ、次のデータと説明がなされていた。
* * * *
その工程の量産テストの時、各質量(容器など)が全体の質量にどの程度影響があるか測定しています。それは、以下のようになっています。
上のグラフは量産テストの最終データです。設計上は9.0g~11.0gであれば、副作用なく機能するので、その範囲での工程能力が有効です。テスト当時からおよそ、cpk≒1.50程度ですので問題ありません。
下のグラフは、全体の質量に対しての影響度を分析しています(単なる分散分析です)。粉体の影響が大きく、値がばらついていれば、粉体をチェックしてください。次の容器は、おそらくロットによって違いますので、値がシフトする傾向なので、全体質量の分布が少しシフトしているなら疑ってください。
次に、±1.0gの許容範囲の設定ですが、上記のようにひとつには、製品機能上の範囲、二つには、それぞれの構成物が持つばらつきの伝播で、通常和、差の式は以下で求めます。
⊿R=((0.2)^2 + (0.3)^2+ (0.2)^2 + (0.1)^2 )^0.5=0.42
なので:
構成物が持つばらつきの伝播は±0.42g<製品設計上は±1.0g となり、大きいほうを採用しています。なんだかんだと理屈をこねましたが、結局は製品機能上の問題なんです…。
* * * *
だから、「伝統的」なのかぁ…、検査担当者は次回の準備に入った。。。
++++++++++++++++++++++++++
誤差は伝播する。
工場では公差の設定などではよく知られている(物理実験では”測定精度”ではないでしょうか?)ことだが、うっかりすることもある。
こんなことがあった(つづく)
photo by Maco
(写真はこちらからもどうぞ)
0 件のコメント:
コメントを投稿