モルツ、BOSS、伊右衛門のゆくえは?

2009年7月19日

気になるニュース

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「(仕事が終わって)お疲れ様~」
「今日どこ行く?」
「あの店がいいんじゃない?」
「ダメダメ!あそこはサントリーがないから(モルツが飲めないから)」

仕事の後の一杯は、やっぱりモルツでしょ、という方は多いと思う。
*私はアルコールは一滴も飲めませんのでわかりませんが…

このビール業界―90年代中頃をピークとし、この頃から始まった、価格の安いビールの出現を境に、一気に本来のビールの出荷は落ち込んでいる。

参考)出荷量の推移
http://www.ilibrary.jp/BB/BB_files_CAGR.html

さらに、ビール系飲料全体の出荷量も近年は減少傾向にあり、かつ価格の安いビールがシェアを高め、二重に売上高を減少させていることがわかる。


いわゆる、「ビールに将来はない」と言われるのはこの為である。


そうした中、近年、キリンは、協和発酵を買収、ナショナルフーズ、ライオンネイサンを傘下に収めるなどM&Aが盛んであり、生き残りを模索している。

で、本日の本題―ここにきてサントリー、キリンの経営統合が現実のものへ、との動きが報道された。

記事によると[1]-[3]:
  • 食品メーカーの売上高ベースで、ネスレ、ユニリーバなどにつづき、キリン+サントリーは第5位
  • 段階的に酒類、清涼飲料などの各事業を一本化
  • 生産設備の面で相互補完
  • ・・・
などが述べられているが、世界5位では影響力はないだろうし、生産設備ってそんな簡単に融通が…(他社の仕様を自社で生産できる?)、事業の一本化は製品を合理化することの困難さよりも、サントリーの:

青いバラの開発
社会貢献活動

に見られるような企業風土と「半世紀に近い歳月をかけてビール事業を黒字する[3]」といった非上場で同族企業の強みなどが、近年、その対極にある欧米型企業へ変貌しつつあるキリンの文化と相容れるのか?

「(サントリーの)美術館やコンサートホールの直接の運営は、株主から批判される(利益にならないから)[4]」だろうし、将来を見据えた「海外でのM&A拡大に向けた収益基盤強化[2]」にしても、シナジーが浮かばない。

と、経営統合の最もらしい理由が見当たらない。

まさか、アサヒ(ニッカ)だとウィスキーで独禁法に抵触するからキリンというわけでもあるまいし・・・。

しかしながら、今後数十年を見据える経営者は、日本の経済が、人口動態的にも、政治的にも、近隣諸国の成長には到底追いつけず、長い間逓減することを熟知している。

本格的に海外へ目を向けると、確かにサントリーは不利なのかもしれないし、今後の日本の状況を考えると、超長期スパンでは、(海外投資に関して円高の観点から)最後の機会を向かえている。


・・・いずれにせよ、サントリーは、非上場の同族経営のメリットを捨てるほどのことなのでしょう。


<関連記事>
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<参考>
[1]「キリン、サントリー経営統合へ」日本経済新聞1面, 2009.7.13
[2]「世界で勝ち残りへ先手、キリン、サントリー統合交渉」日本経済新聞3面, 2009.7.13
[3]「キリンと経営統合、サントリー、脱・同族辞さず」日本産業新聞20面, 2009.7.14
[4] 大前研一ライブ#502


photo by Maco

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