テクニカルマネジャーの役割 1/2

2011年11月23日

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昔、係長、今、テクニカルマネジャー

いやに便利な受け皿となっている役職であるが、この周辺の役職次第で組織は大きく活性化する。何より、課長、部長は日頃のあまりにも繁多な業務の中、そう思っているであろう。




職務を分担したり、肩書きを付けたりすることは、だんだん人間が働かなくなることだ。[1]


とは、盛田昭夫の言葉で*、この真意は「各人によって職務分担というものは書くべきでありまして、いわゆる職制表というようなもので職務分担を書くのは間違いだ」というものである。

(製造業をモデルとして)
例えば、従業員がキャリアを重ねてくると、部下を持たせ、当該人物が研究者や開発者であっても労務管理を担当させるなど、当人にも向かない業務を「キャリアを重ねてきた」理由だけで任せてしまう弊害を言っているものである。
(技術職では結構多い問題である)

組織的には、あるひとつの部が5課;5人の課長で構成されているなら、2-3人の労務管理、2-3人のテクニカルマネジャーでいいのではないか、というものである。


特に、技術系では近年の不確実性が高い状況では、研究者、技術者が、その周辺スキルを身につけることすら長い年月がかかる。また、キャリアを積んだからといって、管理職に押し上げられ、社内の連絡係、調整役に留まるのは大いなる損失である。



成長モデルを引きずる職制表では、おそらくシュリンクしていくだろう。とはいっても、盛田の職制は、(若手でない限り)私は何かできます、と表明できるスキルがないと組織には残れない**。

** 「わが社は学校ではないので社員を育てることに注意を払う余裕はない。落伍者は残念だがおいていく」「適材適所というのは自分で決めるものだ。働く場所は自分で選べ」など。


おそらくは、成長モデル(従来の職制表)であれ、盛田のそれであれ、如何に創造性の高い従業員の集団、組織にしていくかが課題であるが、解決のひとつは、そういったことを教えていくことである(禅問答のようですみません・・・)。


この役割は、(労務管理担当でない)テクニカルマネジャーが適任である。技術論を中心にアンテナを張っている周辺のトピックは、多くの従業員の興味を引くだろう。具体的なスキル教育やリストラの横行で息絶えた“組織の潤滑油”的な役割も期待できるだろう。


得がたい人材?いやいや、従来と異なった視点で見れば、人材は必ずいる。能力は存在する。発揮しているか、否かの問題である。


企業の経営陣は、現在では、船が沈まないようにする程度しか操業できない。それほど、近年のビジネスを取り巻く環境の変化の激しさ、高速度化は容赦がないのである。


時代やルールが変われば、利益の源泉も変遷する。その変遷のシグナルを最も客観的な判断でキャッチできるのは、マネジメントとオペレーションの境界に住むテクニカルマネジャーである可能性が最も高い。


(つづく)
テクニカルマネジャーの役割2/2


<参考書籍>
[1] 盛田昭夫研究会編, 『盛田昭夫語録』, 小学館文庫, 1999, pp110-114.
[2] クレイトン・クリステンセン他, 『イノベーションへの解 利益ある成長に向けて』, 翔泳社, 2003, 第7章 破壊的成長能力を持つ組織とは, より。


*2024年2月 一部改編



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