フォロワーが最も嫌がるリーダー企業の戦術とは?

2025年1月3日

01 経営管理の視点

t f B! P L

 リーダー企業とフォロワー企業の関係は、経営学において頻繁に議論されるテーマであり、ビジネスに携われば多くの方が直面します。市場でリーダーとしての地位を確立した企業は、フォロワーの攻勢を受けるたびに、その地位を守るための戦略を講じます。時にフォロワーの痛快なリーダー企業への攻勢は美談として語られています(例えば、アサヒビールのスーパードライなど)。


今回は、フォロワーが攻勢する際、リーダー企業の対応で私が体験した最も嫌だった対応、これだけはやめてくれ、と感じたことについて掘り下げてみます。




結論的には、フォロワーが攻勢する際、リーダー企業の対応で私が体験した最も嫌だった対応は;


横綱相撲を取られること


でした。


当時の概要、競争状況

筆者は工業製品を設計していました(BtoB, BtoC両方あり)。担当していた製品の市場シェアは10~15%程度、リーダー企業のそれは40%を超えていました。主要参入企業は、当時5~6社で、製品は成熟期を過ぎ、衰退期の入口に差し掛かっていました。海外勢の攻勢(主に価格面)が始まろうかという時期です。


当時の業界では、製品ライフサイクル面を考慮すると、機能面での訴求は顧客へ届きにくいフェーズに差し掛かっていましたが、伝統的でかつ日本的な戦略が選択され、機能面での競争が激化していました。


幸いにも、様々な状況が所属している企業に良い方向に働き、競争している機能面はリーダー企業に追いつく性能を発揮し、もともと価格面で安かったので、高品質低価格を体現しているものとなりました。


顧客にも性能を認められ始めると、フォロワー企業の次の新製品では、上記の機能面での訴求は捨て、異なる機能面を訴求したものを事業部トップ、経営陣は企画しました。これは秀逸な戦術で、フォロワーはリーダー企業が腰を据えて取り組むことを最も恐れます。


設計者としての実感としては、訴求した性能面は確かに優れているかもしれませんが、その他の面、例えば、工業製品なので、製品の寸法精度や規格へ準拠する性能の工程能力の高さなど、さすがに当時40%以上のシェアを維持しているリーダー企業の製品は、調べれば調べるほど脅威ででした。


当該製品が社内で評価される一方、総合面ではリーダー企業の製品と一向に距離が縮まらない・・・設計陣は社内や顧客の評価ほど、差が縮まった実感はありませんでした。これがフォロワー内の実情かと思います。


やがて、リーダー企業は、特定のセグメントで他社を圧倒する動きにでました。生産ラインの改造、完璧な箝口令、他社はリーダー企業のプレスリリースによりその動きを知ることになります。


この時、フォロワーである筆者の設計陣は安堵しました。当然、追随することはできませんが、満足する顧客が小さなセグメントであり、満足しない顧客が増加することが明白でした。やがて、リーダー企業の新製品は市場から退場を余儀なくされます。


しかしながら、数年後、満を持してリーダー企業は、あらゆる機能において競合他社を完全に上回る製品を投入してきました。この時すでに、同じ土俵で戦う競合はいませんでした。いずれの企業も当該製品はOEM等で撤退、業界でも製造販売する企業は、事実上リーダー企業も含め2社になり、重要な戦略は撤退戦略となっていました。


*上の動画はSoraで生成しています。


当時を振り返り・・・

経営学的に見ると、リーダー企業がフォロワーに対して取る対応は以下のようなものが一般的です。

  • リーダー企業は市場シェアを守るために、価格競争を仕掛ける
  • 製品、サービスの付加価値を高める
  • 新技術、サービス等フォロワーが模倣しにくい分野での差別化を図る
  • フォロワーの市場拡大を妨げるために、買収や提携、流通網のコントロールを行う


ただ、上記は綺麗ごとで、実際にはリーダー企業内ではフォロワーの製品の検証結果をもとに、「訴求された性能を上回れ」との指令が下されたことは想像に難くありません。何か、ことを起こさなくてはならない状況に陥っていることは明白でした。


リーダー企業はそのシェアを維持しているだけあって、その他の企業にはない競争力を有しています。それに対抗する一つとして、フォロワーは、時には奇をてらった一点突破により突破口を見出します。従って、フォロワーにとって最も痛いのは、無視されることです。それまでの競争優位をもとに、じっくり製品、サービスを比較されると、ほとんどで上回ることはできないことがほとんどです。少なくとも筆者の上記ケースでは横綱相撲が最も脅威でした。


「横綱相撲」とは、リーダー企業が持つ圧倒的なリソースやブランド力を背景に、堂々と優位性を発揮することを指します。例えば、リーダー企業が自社の製品やサービスを強化し、価格競争を避けながら顧客ロイヤルティを高めるような動きです。このような対応は、フォロワーとしては手も足も出ない状況を作り出すことが多く、非常にフラストレーションを感じます。


ただ、現実のビジネスシーンでは、リーダー企業が横綱相撲を取ることは少ないのが実情です。それは、横綱相撲を決定できるのは鶴の一声だからです。合議ではありません。合議では何かしらの動きをとることが決定されてしまいます。開発陣は、競合を上回る仕様を提示され、雪崩式にマーケティングの概要、引いていは発売日まで決められ、営業部門は販売チャネルでの数量目標設定・・・地獄の日々が始まります。


まとめ

フォロワーがリーダー企業に対して何かしらのアクションを仕掛けた場合、リーダー企業に「横綱相撲」を取られると、自社の競争力を見直さざるを得なくなります。しかし、リーダー企業も横綱相撲を取ることを決定することは容易ではありません。何かしらの動きを求められるからです。


もちろん、製品、サービス、製品のライフサイクル、競争への参加者等、状況によるため一般化することは困難ですが、少なくとも筆者の場合は、リーダー企業の反応がないことが、いろんな意味でリソースを消費していたように思います。

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エンジニアの視点から、品質技法、解析技術、生成AIについて発信しています。 (シックスシグマ・ブラックベルト、MBA)

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