社会人MBA-技術者編

November 26, 2008

大きな企業だからと言って、何もかもが優れていることはない。

パナソニック、トヨタ、ドコモ、ソニー・・・日本を代表する企業であり、その経営手法は・・・というつもりではなく、日本では大きな企業であると同時に、大きな広告主である。マス媒体で、これらのスポンサーのネガティブなことは書けない(放送できない)ことが多い。

別段、このことを批判するつもりはなく、それなりにお金を出しているのであるから、顧客に対しては配慮も必要である面もある。要はその程度の問題である。

さて、その議論はさておき、以前のブログでも述べたが、今後の日本企業は、企業の規模や知名度に関わらず、その経営力が利益創出に大きく作用する期間へ入っていく。上記の企業も例に漏れずそうである。

幾つか、最近これらの企業に関する記事があるので集めてみた。

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  • 「トヨタ、ゼロ金利、欧州でも、米国に続き販売テコ入れ」[1]

  • いわゆる金利なしで新車をローン販売するキャンペーンを米国に続き欧州へも展開することに関する記事である。ゼロ金利戦略は、確かに素晴らしいが、時期が悪い。時期が悪ければ、結局は戦略として良くはないことになる。ビッグ3の顛末を見てからでいい。何に切羽詰まっているのかがわからない。このままでは、ビッグ3の状況如何では、素晴らしい反撃を米国発で食らう可能性がある。

    ちなみに、他の自動車会社も打ちだした(主には)非正社員の契約解除や事実上のリストラは、生産方式自体が在庫を持たない方式なのであるから、生産台数が増加すれば増員、減少すれば減少と人員に関しても、ジャストインタイムであり、動きとしては(彼らにとっては)自然な経営行為である。


  • 「厚労省たたき、奥田氏「異常」、ワイドショー報道を批判」[2]

  • 記事によると奥田氏は以下のように発言したことが伝えられた。

    「スポンサーをやめようかなとも思う」
    「テレビが朝から晩まで年金や厚労省の問題をあれだけ毎日やるのはちょっと異常な話。正直言ってマスコミに報復してやろうかな」


    やってしまったかもしれない・・・。今後自動車会社の業績は下がるであろう中、当然、スポンサー料は低下する。そうなれば、中には遠慮がいらなくなるマス媒体も登場するであろう・・・当然・・・。

    こんなことを言わずとも、あなたの部下はしっかりしていますよ。


  • 「パナソニック、三洋買収額、大株主側と開き、一株120円提示――交渉難航も。」[3]

  • パナソニックのTOBに関しての記事である。どうもゴールドマンは一株200円後半を視野に入れているみたいであるが、パナソニックは120円を提示した。妥当ではないか、この価格。三洋電機の時価総額を考えれば、わざわざ金融会社に莫大な利益を持たせる必要はない。なぜなら・・・パナソニックから見て、重複している分野は単に格安製品のOEM先が出来ればいいし、エネルギー部門(電池など)では、確かに三洋の技術はあるが、パートナーは三洋でなければならない理由はない。パナソニックから見て、お買い得感がなくなれば・・・


  • 「印タタ系に2640億円出資、ドコモ“財閥”、英断か過信か――欧米で過去に大損」[4]

  • 出資先は業6位で出資比率は経営判断に拒否権を発動できるギリギリの26%である。これまでもドコモは海外通信会社へはよく出資している。成果はITバブル崩壊の余波もあるため判断しにくいが、iモードの普及具合をみれば・・・またか・・といった感じかもしれない。背景には国内市場の頭打ちがあるが、そのインフラを活かした新事業に出資、育てていくのもいいかもしれない(実際にそのような研究もあります、ないわけではありません)。

    なにより、料金を引き下げてほしいのは、ユーザーの意見ではないでしょうか。


    ・・・今回の米国発の金融危機は、日本のバブル崩壊後の10年を圧縮した振動が伝わりそうである。今後数年の取り組みは、いい意味でも悪い意味でも、後々に語られるであろう大切な期間である。その取り組みの品質の高さを決定付けるのは従業員の行為より経営陣の行為である。そのことに、企業の大小は関係ないことは言うまでもない。


    <参考記事>
    [1]「トヨタ、ゼロ金利、欧州でも、米国に続き販売テコ入れ」2008/11/17, 日本経済新聞 朝刊, 9ページ.
    [2]「厚労省たたき、奥田氏「異常」、ワイドショー報道を批判」2008/11/13, 日本経済新聞 朝刊, 5ページ.
    [3]「パナソニック、三洋買収額、大株主側と開き、一株120円提示――交渉難航も。」2008/11/25, 日本経済新聞夕刊, 3ページ.
    [4]「印タタ系に2640億円出資、ドコモ“財閥”、英断か過信か――欧米で過去に大損」2008/11/13, 日経産業新聞, 22ページ.
    *検索はいずれも日経テレコンを使用。

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    November 9, 2008

    パナソニック、三洋電機・・・いよいよ始まる大買収

    「現在の企業を取り巻く環境は、経済的利益を追求する競争に加え、CSR、コンプライアンス、環境適合製品など、人道的な競争が加わりつつある。」

    ビジネススクール時代、何かのリポートに記載したことがある文章である。現在の後退する経済状況からは、ソフトパワーが重視されつつあるとは言え、まず、環境と正面から向き合う施策を推し進めることが、同意を得やすいことである。それは、お金がかかるかもしれないが、多くのイノベーションを生み出すからである。
    現時点で言えば、新たなエネルギー事業である。

    かつて、日本には「経営の神様」がいた:(以下項目の表記は[1]より)

    • いち早い事業部制の導入
    • 販売制度の改革
    • フィリップスとの提携
    ぼくでも社長が務まった”山下跳び”など事例は枚挙に暇がないが、松下幸之助の手腕としての脱帽はM&Aである。被買収企業の財務をがっちりつかむことと同時に、その企業の事業を伸ばしてきた。

    いよいよそのパナソニックが三洋電機を買収する。

    一昔前、”関西の大手電機メーカー”と揶揄された企業が、日立製作所を上回る企業になる。

    三洋電機の大株主といえば・・・優先株が普通株に転換された場合、米ゴールドマンサックス、大和証券SNBC、三井住友銀行であり、その優先株の保有比率はそれぞれ、41.7、41.4、16.6%である[2]。これらの割合は発行株式の7割に相当する。

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    *優先株・・・普通株に優先して、配当や残余財産の分配が受けられる株式で、配当に対して優先権をもつ反面、経営参加権が与えられていないのが普通(金融用語辞典より)。
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    将来有望なエネルギー事業(太陽電池や充電池)を有しながら、とにかく、ここ数年迷走を続けてきた企業である。事業を切り売りされることを阻止しながら、その相手を模索し続けてきた。現在の金融状況で、何とか、米ゴールドマンサックスの影響力は低下させたいところでもある(実際のところ、本買収に関してゴールドマンは損しなければOKであろう)。

    ご存知のように、パナソニックとしては、他の子会社のようにシステムに組み込みたいのは”三洋電池”である。

    重複する「半導体、AV(音響・映像)機器、白物家電などの事業は技術協力や資材の協働購買などでコスト削減を進める[2]」とされているが、選択と集中が基本の重複解消では、市場で通用する三洋ブランドが若干残る、優秀な生産部門をEMS化するなど、三洋電機の原型は残さない方向に進む

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    EMS-Electronics Manufacturing Service
    電子機器製造における調達、製造、設計に加えて、物流管理等までを総合的に請け負う電子機器の受託製造サービス(経営用語の基礎知識(野村総合研究所)より)。
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    さて、なぜ電池部門なのか?

    多くのマスメディアは自動車との関わりを述べているが、その背景には、代替エネルギー産業には:
    • 物理電池
    • 化学電池
    の両軸が必要だからである。

    物理電池の代表格は”太陽電池”、化学電池は乾電池や充電池、燃料電池である。今回、自動車に関する電源の扱いが多いが、それは現在ではまだ、リチウムイオン電池ではない。ニッケル水素電池で、今回の合併により、その電池の自動車搭載用のシェアは98%に及ぶ[3]。

    さらに、民生用のリチウムイオン電池のそれは、39%に達する。

    パナソニックは太陽電池部門は比較的小さい。また、三洋と言っても、世界的には規模は小さい(国内ではシャープに続いていますが)。重要なのは、太陽電池産業は、他に比べて規模がものを言う(生産)産業である。

    パナソニックは”技術”が、三洋は”時価総額”が欲しい。
    両者がひとつになることで、世界有数の太陽電池メーカーを買収することが容易になるのである。

    こう考えると、代替エネルギー産業は、パナソニックの経営次第なのかもしれない。

    電池の産業は、パナソニックをはじめ、三洋やソニー、東芝、日立など多くの企業が参入しており、そのほとんどが乾電池の頃から操業している老舗産業である。ポッとでの企業は研究ぐらいはできるが製品化へは、そのノウハウなど、参入障壁があまりにも高く、先進的な技術を特許取得し、権利料を発生させることぐらいしかできない。

    今回の動きでは、それらの電池でも充電池が注目されているが、パナソニック、三洋とも、乾電池やリチウム電池(例えば、火災報知機用など)など一次電池も多く生産している。これらも合併するのであるから、パナソニックは、三洋の技術力が高い場合は、うまく取り入れることができ、三洋が低価格戦略で販売している製品(乾電池)などは、ハイエンドをパナソニック、低価格を三洋と住み分けを行なうことができる。

    そうなれば、特に市販している製品の場合、これまで”三洋”ブランドだから量販店で棚を有していなかった製品が、パナソニックになるのであるから、他企業では、狙う市場がない。

    自動車用のリチウムイオン電池に関しては、他に、NECグループ、GSユアサ、日立製作所があり、パナソニックとトヨタの関係と比較的自動車メーカーと全方位的関係であった三洋とを考えると、(自動車メーカーから見て)パートナーとしてのいくつかの課題は残されるが[3]、(電池供給メーカーとしては)技術が成熟期を向えるリチウムイオン電池で独自の特色を出せるか、技術的ハードルが幾つもある燃料電池を利用するか、他企業にとっても正念場を迎える*。

    *現在は、ニッケル水素電池が実質の商売アイテムなので、将来に対しての正味現在価値が減じることに対する対策となり、喫緊に利益が大幅に減じるという事態ではありません。ビッグ3がボロボロ、生産台数は激減、(このドメインで実質利益的に)苦しいのは現在電源を供給しているパナソニック、三洋のほうです。

    確かに、ダイムラー、クライスラーのように技術的な融合には5年、10年といった長い時間が必要であるし、最終的には融合できない可能性もある。

    とは言っても、三洋電池にあの時価総額が加わるのである。現段階では、この不景気のなか、ピッカピカになる明るい材料であることは間違いない。

    ・・・いずれにせよ、キーファクターは技術である。時に、技術者は行き過ぎたアメリカ型経営を毛嫌いする。何しろはじめての大きな案件である。原点を忘れさえしなければ(人材の流出を防ぐことが出来たら)、この買収は大きな成果を生むであろう。

    <参考資料>
    [1] 宮本又朗, 『日本の近代 11 企業家たちの挑戦
    』中央公論新社,1999,pp409-413.
    [2] 2008.11.8 日本経済新聞1面「三洋株、過半取得めざす、パナソニック、買収方針発表、ブランドは当面維持」。
    [3] 2008.11.7 日本産業新聞3面「自動車との「間合い」課題――パナソニックはトヨタ、三洋は全方位(電機再編)」

    photo by Maco

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