技術で勝って、ソフトに負ける。

2010年3月31日

書籍 有意差あり!

t f B! P L
その昔、“テープ”が音源、映像の記録媒体として、使用されていた(一部は現在も使用されています)。


40代前後から上の世代の方は、“VHS”や“ベータ”と聞くと懐かしく思う。そう思う方は、オッサンでありオバハンである(いや、あろう)。U規格など言えば、マニアである(U規格は主に業務用)。
ベータマックス(Wikipedia)
VHS(Wikipedia)、中ごろに規格争い

この当時のこのトピックは、その後の似たような競争でも(例えばDVDなど)、いろいろ言われ、ここから得られる教訓も多い。生き証人もまだまだ健在である。私も直接話を伺ったこともあるが、大よそ一般論としては、次のように収斂するのではないかと思う。


(ソニーが)技術勝って、(当時の松下、ビクターではなく)ソフトに負けた。


技術屋は心情的にソニーに肩入れするが、ビジネスが成り立たなくなれば、技術*は終わる。
*特許等のことは除く。

当時、今で言ういわゆるコンテンツである映画などの市販ソフトを充実させることが、キーファクターだとし、種々の支援を怠らなかったVHS陣営がベータを市場から退場させた。



本質的には似たようなことが、今もあるように思う。



例えば、FeliCa(フェリカ)は、ソニーが開発した非接触ICカード技術方式(SONY公式HP)であり、技術的には優秀である。なんだかんだで、名前は違えど、中身は“FeliCa”というのは多い(ちゃんと制御できている)。


若干ニュアンスは異なるが、電子マネーでトップを取れる機会を失ったのは(部品ではなく)、顧客の使用シーン、ビジネスの性質をもう少し深彫りしていたら・・・と考えると、とてもとても惜しい。


また、iPhone vs グーグル携帯(Android端末)も、結局はユーザー数がモノをいう。それぞれの端末の技術競争なら・・・であるが、iPhoneアプリなど、ソフトに纏わることの方が顧客目線であり、特に、iPhoneアプリの開発者は、収入も想定しているので、ユーザーが多い方がいいに決まっている。


なら、端末をひたすら広げるしかない。企業は(AppleやGoogle)、それ(いわゆるソフトの広がり)を如何に支援するかである、という教訓は、おそらくVHS対ベータのそれと、あまり違いがないと思う。


だが、いくつもの企業の経験を積重ねても、経営陣の考えなければならないことは、〈勝つこと〉より〈負けないこと〉である。


「勝敗は兵家の常」とも言われるが、時に、どうしようもないことが命運を分けることもある。それを曲げれば、当該企業のアイデンティティを損なうので選択しないこともある。


ならば、将来に備えて、その知見を受け継いでいき、学習する組織を築いていけば、その経験は百万ドルの知的財産となる。



・・・技術で負けても、ビジネスで負けなければ問題ありません。




<参考資料>
○伊丹敬之ら編集『企業家精神と戦略 (ケースブック 日本企業の経営行動)』有斐閣,1998,CASE4業界標準と規格戦略。
○週間ポスト2010.02.19号、「ビジネス新大陸の歩き方」より。
高性能技術への飽くなきこだわり・ソニー『ベータ』/Tech総研

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