ビジネスは結果か?③-了-

2008年10月14日

MBA 書籍

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最近の株価の変動は、それこそ数十年に一度見ることができるかどうかの現象であるが、企業経営では、グローバルに展開している企業においては、売上減少、またバランスシートの毀損など、取り組まなければならないことは多い。

そういったなかで、旧来のオールドスタイルと新たな企業文化をうまく融合させ、作り出していく行為は、今から始めたほうがいい(急進的な企業文化の改革は(古いものを新しいものへとすげ替える方法)、従業員の大半、例えば30%や50%を入れ替えないと出来ないので、まず”融合”が大切です)。

そのなかで、日本を代表する企業が、伝統的製造業であるとするならば、行なうべきは「見えざる資産」のたな卸しである。
*「見えざる資産」とは、技術やノウハウの蓄積、顧客情報の蓄積、ブランドや企業への信頼、細やかな業務をトータルにきっちりと実行できる仕組みやシステム、生き生きとした組織風土など、企業が持っている「目に見えない」資源のことである。伊丹敬之,軽部大,『見えざる資産の戦略と論理』日本経済新聞社,2004,まえがきより。
*より詳しくは、伊丹の『新・経営戦略の論理―見えざる資産のダイナミズム』,日本経済新聞社

いわゆる事業戦略論における系譜は、ポーターの”構造的な戦略論”、伊丹の”構築の戦略論”、そして”構図の戦略論”の視点である[1]。そのなかでも伊丹が表した「見えざる資産」は製造業で言えば、「工程品質の向上を支えるもので言えば、細部を含めた工程のデザイン、それを動かす現場管理者や作業者の技能、その技能を引き出す職場環境、その職場を守る人事制度、その人事制度を育む企業風土などすべてが含まれる」([1]p186)がこれをよく示している。

この概念は80年代に、日本の企業の強みのひとつとして示されたものであり、この後に、この概念を発展させ、”コア・コンピタンス”や”組織能力”に結びついていく。

この概念で最も身近な例は、シャープの液晶である。

実に長きに渡り研究、開発が続けられ、日の目を見たわけであるが、これは「液晶」と製品が素晴らしいのではなく、これを創り出すノウハウや工程、作業者のスキル、開発を育んだ姿勢もパッケージとなって素晴らしいのである(と言われている。現場担当者の苦労は計り知れませんが・・・)。

はっきり言って、あの90年代から今世紀初頭(超円高、アジア通貨危機、株安)を乗り切った、グローバルに展開する企業は、その生き残った製品を生み出す方法について胸を張ってもいいと思う。

業績が苦しい時は、何かと少しの利益を創出するために、多くの「見えざる資産」を放棄してしまうことが多い。これは、伊丹の論じるとおり、”構築”するものであるから、一旦、廃棄したり、破壊してしまうと、回復が困難となる。

・・・経済状況が悪い今こそ、企業にとって大切な大切な「見えざる資産」のたな卸しを行なってみてはどうだろうか。

<参考文献>
[1] 三品和広,『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』,東洋経済新報社,2004,pp181-189.

photo(c) Maco

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