
イチローがあるインタビューに答えていた。
「嫌な奴の空気は皮膚から入る。」
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いわゆる、嫌な奴=”クソッタレ(本文のまま)”はどこにでもいる。ここでいうそれは:
目下の者を対象とし、会話を交わした後に標的となった人物が憂鬱になったり、屈辱を感じたり、やる気を失うことである(p25)。
まぁだいたい、地位のある人の目下の人に対する行為でその人物の人間性がわかるのは本書に限らないことである。
本書の著者は、スタンフォード大学教授のRobert I. Sutton である。装丁とタイトルからそうは思わないが結構真面目な書籍である。
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こういったクソッタレの及ぼす影響の特徴は:
○離職率が高く、辞めるに辞めれない従業員達の士気は最低となる(p49)。
○会社のために尽くそうとという従業員の気持ちをそいでしまう(p67)。
というものであり、それは、周囲の従業員の生産性を低下させるばかりか家庭生活を蝕んでいく(p51-52趣意)。
こういったクソッタレの評価は、ヴァージニア大学のロブ・クロスの調査を引用し:
他人のエネルギーを奪う人間は、組織内での評価自ら落としている(p57)。
と帰結している。
つまり、その組織の上からも下からも全く評価されていない。時に、ワーナコのCEOであったリンダ・ウォチナーのように日頃の言動をニューヨーク・タイムズに掲載されてしまう屈辱を味わうことになることもある。
このクソッタレが全方位であればどうだろうか?
組織のヒエラルキーに関係なく上下、同僚を無差別的に軽蔑、辱しめる人物である。たとえ、これが従業員でなくお雇いのコンサルタントであっても・・・である。この場合企業はとんでもない危険を抱え込んでいる(p60-62)。

クソッタレ個人ではない。それも当然だが、マーキュリー社のように管理責任を問われた企業自身に巨額の賠償がのしかかかるのである。
第二に株価である。
サーナー・コーポレーションのCEOが送った恫喝的なメールがインターネット上に流出し、「奴隷制度のビジネス版」として市場の反発を買い、3日間で22%株価が下落した(事態はCEOの謝罪によりうまく処理された)(p70-71)。
これは、単なる人物評ではない。グーグルやサウスウェストなどでは、企業独自のルール化が進み、管理職に適用しない、雇用しないなど、採用と解雇においても適用されている(p87-88)。
クソッタレは何も組織内にとどまらない。クライアントでもそうである。
サウスウェストの役員、アン・ローズは出張中、空港カウンターで、サウスウェストの係員を怒鳴りつける顧客に遭遇した。悪態をつき、大声をだし、威嚇し、カウンターへ乗り出す様である。その顧客に向かって彼はこう言った。
「サウスウェスト航空の人間にそんな態度をとることはやめていただきたい。あなたがほかの航空会社を使ってくれれば、誰もがハッピーになれるはずだ。」(p108-109)
そして、別のカウンターへ連れて行き、別の航空会社のチケットを買ってやったという。
当たり前である。自社の従業員に対して、それが顧客であろうと、サプライヤーであろうと、コンサルティングであろうと、そのような態度をとる者は、絶対許すべきではない。退場してもらえば済むことである。

偉くなったクソッタレはもっと厄介である。
「あなたはそれ(給料や待遇)に見合うだけのことをほんとうにしてるんですか?」と言ってくれる者がいないからである。たとえいても、有能な右腕が「ああいう感謝知らずな連中は、まるでなにもわかっちゃいないんですよ」と言ってくれるからである(p111-112)。
そういった姿の真実がわかるのは「業績が悪化したとき(p138)」だそうである。
重要なことは、このようなクソッタレを撲滅することであるが、それ以上に、このような現象を理解することである。なぜなら、それは、感染するからである-感情感染(モラルの欠如は病原菌のように広がる)-(p144)。こう書いている私も皆様も嫌な奴になり、負のスパイラルに火がついてしまうのである。
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さて、イチローは次に何と言ったのだろうか。
「そのような時、ロッカールームからすぐに出る」
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本書での内容も多くあるが、まとめると「離」である。顔を合わさない、距離を置く。よもやクソッタレが変わるなどとは期待しないことである。反撃などはしないほうがいい。それこそ、負のスパイラルである。
もうひとつは、クソッタレとは全く逆の人と密接になることである。
最後に、教授は皆様からのエピソードを期待している。ただし、その条件は以下である。
「許可を受けないかぎり氏名を公表しないが、自身の著作や講演などでの引用する許可は下りたものする。」
・・・意外に身近なイヤな奴。秋の夜長に付き合い方を研究してみては・・・。
*「クソッタレ」という表現は公の場での表現としては適切でないかもしれませんが、本書の特徴を出すために、あえて、本書のままで掲載しております。ご理解くださいますようお願いいたします。
<参考書籍>*記事のページは以下の書籍のものです。
Robert I. Sutton, 矢口誠訳『あなたの職場のイヤな奴
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