社会人MBA-技術者編

June 30, 2008

マーケティング⑩(製品ライフサイクルと消費者)

製品・サービスはその登場後、段階を経ることが概念化されている。導入期、成長期、成熟期及び衰退期である。概念的には下図のようになり、売上、収益(=利益)曲線で示される。時に、企業にとっては曲線は不連続になり、成長期を待たず撤退することもある(いわゆるキャズムを超えられない)。



消費者はこの各段階で採用を決定する。いわゆる:

  • 導入期:イノベーター(Innovators)
  • 成長期:初期採用者(Early Adopters)
  • 成熟期:追随者(Majorities)
  • 衰退期:遅滞者(Laggrds)
である。

それぞれの要求が異なるため、企業は種々の対応をしなければならないが、種々の対応とは、各消費者に対し、例えば、一様に研究開発者が対応するというものではなく、主役になる部門(や機能、時に活動)を変遷させるということである。

また、これらの消費者のどこをターゲットにするかは企業により異なる。ファッション業界で高級感をブランドにしているのであれば、イノベーターを狙う。電機業界では、規模の経済を活かすために、イノベーターから追随者まで狙う製品もある。

さらに、近年、ライフサイクルは短くなっている。これには、イノベーション期間の短縮が不可欠であるが、単に、製品化への期間を短くすれば良いというものではなく、これまでの記載からも想像がつくように、組織全体の対応力の増加が、その対応可否を決定する

例えば上級管理者は、新機能などの差別化製品を同じチャネルで売ろうとしたり、同じチャネルを使用することが決まっているのに(=マーケッターが新機能を必要としていない)のに研究開発に大きな投資を決定したり、などを避けなければならない。

また、新機能を持たせるのであれば、タイミングを逃してはならない。これは、単に早めればよいというものではないし、遅らせることでもない。時に、タイミングを逃さないための予算オーバーは、タイミングが遅れてしまった場合に比べて、減益の度合いが少なく、また、タイミングを単に早めた場合は、社内コストが増加し、周辺環境(サプライヤー、顧客)との交渉力が低下するため、これを見越した利益がなければ、早める必要性がない。

マーケッターにとっては、ライフサイクルのパターンや期間が多様であるため、一意的には、マーケティングプログラムには適合できないが、それぞれのステージで、製品、価格、流通、広告などの戦略が変わるため、概念の理解と、携わる製品・サービスの研究は必要である。

・・・当たり前のことって、意外に忘れるんですよね。。。


<今日の記事で参考にした書籍>
*コトラーの書籍では、第九章「製品ライフサイクルを通じての製品の開発、差別化、ポジショニング」、ムーアの書籍では、(ハイテク産業における研究から)イノベーターと初期採用者の「溝」=「キャズム」の表現を引用した。

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June 27, 2008

景気と投資

現在の米国は、住宅には暗雲、失業率は増加し、債券の金利は低下していく(=債券価格の上昇)、イールドカーブ(Wikipedia)は順傾斜…景気が下降していく典型的なパターンである。このようなときの金融緩和は資金をリスク資産へと向かわせる。例えば、商品市場、高金利通貨などである。そして、商品市場の下落は、本格的な景気局面の転換点であることが多い。

投資の観点から見ると、株式には株式の、債券には債券の、為替には為替のロジックがある。為替は博打とも考えられるが、短期的には行動ファイナンス的な影響、中長期的には、ファンダメンタル的な影響を考えることができる知的刺激の強い分野である。

長期的には、米ドルは下落するが、本格的な下落が確認できるまでは、状況次第で上昇したりもする。ドル安の受け皿である円では、円高を利用して、今後少しずつタイミングをみて対外投資を行なうことが望ましいのかも知れない。

経営者は再び訪れる円高に備えなければ、もう、為替の影響で…サブプライムの問題で…という減益の際の言い訳は市場は聞く耳を持ってはくれない。

ただ、投資行動において、予測することと収益を上げることは別物で、収益を上げるには訓練が必要となる。

やはり、利益は待ちきれないし、なかなか損を切れない(プロスペクト理論的な行動(Wikipedia))。情報過多になると意思決定できないし、マクロ経済を学んだにしても、経済は静的でないし、行動ファイナンスを学ぼうにも、セオリーどおりの動きをすることもある。

かといって、マクロ環境を理解しなければ、ビジネスでは相手にされないし、投資行動をしなければ、その分野に興味はわかないものである。

・・・資本を投下し、それに見合うリターンを得ることは底流でビジネスと符合することである。

下のサイトは、為替を含む種々の環境を考えられるサイトです。シリーズは終了していますが、読み応えがあります。

  • 田中 泰輔「FX Clairvoyance(為替透視鏡)楽天証券より


  • *この記事は投資や投資に関する勧誘を意図するものではありません。
    *投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。

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    June 26, 2008

    東大と車と愛犬と

    先週から今週にかけて気になるニュースを2つ+1つ。

    最近の専門職大学院の設立など、少子化の影響もあり、大学が社会人向けの教育に熱心である。今回のこの動きは、期間は半年、人数は30人程度となっている。学位取得ではないことと半年の短期間から、研究をするわけではないが、人脈は強固なものが形成されるメリットはある。

    国内の自動車メーカーは日本の市場はすでにこうなることを認識しているが、とうとう国内では市場がシュリンクし始めた。

    ハイブリッドなどハイエンド市場へ移行する、とるに足らない市場を新興国メーカーに譲っていく…どこかで聞いたイノベーション論だが、ハイエンド化に加え、市場がないところへ移動し利益を計上していくことで、自動車メーカーは、イノベーションの解を模索している。おそらくこの選択は正しいものとなる。問題はどこに出て行くかですが…。今後は格下げが予想されるビッグ3を合わせた政治的な問題へ注力しなければならない。

    • 我が家の愛犬-ラムちゃん-再び肉球を負傷する
    最後は、???な話だが、以前、右前足の肉球を負傷した愛犬は、その前日に行ったドッグランではしゃぎすぎていたのであろう、と思われていたが、今度は左前足を負傷。特に何もイベントがなく、獣医との結論は…アレルギーで足をよく掻く(噛むのです)のだが、自傷だろう…とのこと。

    投薬は抗生剤と塗り薬。散歩は靴下を履きます。

    ・・・当分、歩きにくそうです。。。

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    June 22, 2008

    マーケティング⑨(価格の設定)

    価格設定の必要が生じるのは、新製品を開発するとき、従来の製品を新しい流通チャネル他地域に導入するとき、新しい契約業務に入札するときであり、ほとんどの市場には3つから5つの価格ポイントがあるのでそれ相応に価格を設定する。

    その目的は:

    • 企業は生き残りを追及
    • 利益最大化を狙う
    • 市場シェア拡大
    • 製品品質のリーダーシップを目指す
    ことを目的としている。

    企業内部では、コスト、需要を見積もる。特に、マーケッターは価格の弾力性を知っておく必要がある(価格弾力性(Wikipedia):価格変化に対する重要の敏感さ)。

    *    *    *    *

    身近な例では、”ラーメン”に関するケースが考えやすい。「行列のできる」ニッチな高級ラーメン店、幸楽苑(Wikipedia)ラーメン一番本部(Wikipedia)のように価格に挑戦する企業、はたまた、インスタント麺(「カップヌードル、値上げの影響で売り上げ半減」は価格弾性力を考察しやすい例、また、顧客とのコミュニケーションで有名タレントを使用したが、効果がないことも興味深い)など種々の業態で種々の企業が参入している。

    ここでは①低価格化、②低価格ラーメン店のショッピングセンター(以後SC)参入について考える。

    • 低価格化
    低価格化で成功するには、他の企業が模倣困難なシステム(製法など)を構築することが重要である。仕入先、機械化、マニュアル化による作業スキルの不必要性(=低労働単価)、などである。簡単に模倣されては、単なる値下げになり、客単価は低下、利益低下につながる。競合は、ラーメン店ばかりでなく、牛丼店、ハンバーガー店に広がり、立地や価格設定は慎重を要する。

    また、成功した場合に「上場」すると、市場から常に「成長」を求められるので、利益の源泉をさらに増加しなくてはならず、経営管理上の負担になる。将来的に、蓄積された利益を円滑に他の利益の源泉へ注力しなければならないことを考えると、長年のR&Dすら嫌う最近の市場であるから、経営管理力を十分蓄えた上で望まなければならない。

    • SC進出
    SCでは、言ううまでもなく、顧客は消去法で食事を選択している。あまりブランドは関係ない。残念ながら低価格ラーメン店は有名なハンバーガー店ほどブランド力はない。低価格ラーメン店がこれまでの展開スキームと同様なのであれば、あまり出店しない方がいい。出店するなら、ブランド(店名)を変えることが望ましい。

    ただ、SC内は競合が目に見えているので、顧客行動を分析できる絶好の機会でもある。ポイントカードなどにより、顧客を分析すれば、本業の展開(立地や価格)にとっては大きな財産である。それを踏まえた財務会計の構築も当該企業にとっては、ひとつの経営力である。

    ・・・いずれにせよ、第一は市場の把握、推定、損益分岐の確認です。

    <参考書籍>いずれの書籍も「価格設定戦略と価格プログラムの策定」の章を参考。

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    June 17, 2008

    腕時計-電波時計は広まってほしい製品である。

    サマータイム今国会見送りが報じられ、要審議の状態となっている。メリット、デメリットと十分に協議すれば、大抵実行しない。企業の長々と続く会議でも同様である。クォーツや自動巻きの時計では、サマータイムが実施されれば、時計を合わせなくてはならないが、電波時計であれば(電波の届く範囲であれば)、勝手にセットしてくれるので便利である。

    さらに、電池の交換もいらないものもあり、非常に良い。

    ひそかに、スイスの高級腕時計といえども、これの模倣には時間がかかるのでないか?と日本のメーカーの技術を賛嘆したりなんかもする。

    さて、その腕時計、日本時計協会によれば(世界のウオッチ生産の推移(推定値))、年々生産台数は減少傾向にある。大きく言えば、台数は減少かもしれないが、単価が増加しているため、高級化が始まっているといってよい

    こんな便利なもの売るしかない(サマータイムが実施されそうにないが…)。残念ながら、日本で認知度が高い電波時計も欧米では3人に1人程度しか認知していない(日本は80%:出所:ソーラー電波時計で巻き返せ 正確さでスイス勢に対抗)。ビジネス展開も補完的な資産として、電波塔を建設していかなければならない事情もある。

    しかしながら、日本で環境に関する会議が開かれ、今後、日本の売りにもなる技術を日本に留めておくことは惜しいことである。

    現在の日本のメーカーには申し訳ないが、自社のブランドではなく、別の高級ブランドで、消費が好調な新興国、ロシアなどに高級時計としてプレミアムをつけて、売り出すことが、経済のパイを広げる有効な方法である。

    私もクォーツ、自動巻きと腕時計は、7-8本持っているが、高級腕時計のカテゴリーで日本のブランドは思いつきにくい。どうせお金を払うなら、スイス製かなぁ、と考えたりもする(日本メーカーファンの皆様にはすみません)。

    スウォッチグループ、リシュモングループ、LVMHグループ、ロレックス、で売上金額のほとんどを占めている状態では、今更、日本のメーカーが有名とはいえ、高級セグメントに顧客とコミュニケーションをとろうとしても、コストがかさむだけである。

    ゲームの理論的にいえば、上記の単独がパイを伸ばすのであれば、(自社ブランドではなく)高級ブランドとして売り出せばいい。純粋に電波時計を普及させたいのであれば、このゲームは市場を作り出すまでは補完的関係でいき、競争は、パイが広がって奪い合う時までお預けである。

    ・・・広まってほしい物です。

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    June 15, 2008

    マーケティング⑧(時間管理のマトリクス)

    企業は製品やサービス、もしくはスタッフやチャネルを通じて差別化を実現する。おそらく、その差別化は他企業がしばらくは模倣のできないものである。そうしているうちに当該企業は”忙しく”なっていく。その忙しさは「重要」で「緊急」な案件ばかりなので、いつのまにか差別化要因である”ナレッジ”が陳腐化していることに気付きにくい…。

    スティーブン・R・コヴィーは『7つの習慣―成功には原則があった!』で幾つかの課題に直面している時、企業が取り組む基本姿勢として、「重要さ」「緊急さ」による時間管理のマトリクスを示している。一部上場の企業では係長クラスが研修で学ぶ内容である。



    実は、多くの企業が差別化を成し遂げた時、その企業の規模に関わらず、上図で「1」の領域の案件(重要で緊急)ばかり優先させてしまう嫌いがあり、その後の成長を鈍化させている場合が多い。ニッチ型企業の急成長後によく発現する現象である。

    第1象限に集中してしまうため、問題対応に追われ、ストレスがたまり、燃え尽きる…。

    忙しいはずなのに、いつの間にか差別化のナレッジが陳腐化してしまっている。このマトリクスでは、「2」の「重要だが、緊急でない」案件をできるだけ取り組むことを示唆している。

    「2」の領域は企業の人材育成の側面が強い。そのようなことはないと考えているかもしれないが、次のことに心当たりはないだろうか?

    第3象限への集中:構成員が意味がないと思う業務への集中してしまうことは、目標、計画に意味を感じなくなり、周りに振り回され、人間関係は決裂が多く、視野は短期的…。
    加えて第3,4象限への集中:責任領域の矮小化、他人、組織へ依存しきり…。


    これは、どのような企業でも起こる可能性がある。

    ・・・ナレッジとはいえ、その発生源は当該企業の構成員です。構成員の創造性が削がれれば同じことです。


    <参考書籍>

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    June 12, 2008

    適応の限界-ビジネス環境は急速に変化しているか?

    ビジネス環境は急速に変化している、と認識されている。確かに、企業の研究開発部門では、それに対応するマネジメントの確立が急務であるが…。

    しかしながら、ふと担当する事業を見直して欲しい。
    変わらぬ、競合企業、サプライヤー、顧客…その事業環境の変化は緩慢ではないか?
    緩慢な変化に対し、従来の対応をしてはいないだろうか?

    組織の適応理論は、企業とビジネス環境の変化のスピードが一致しなければ、歪んでしまう。一致することなどないので、その歪を修正することが業務なのだが、この条件が満たされなければ、適応は組織を破壊してしまう。

    ビジネス環境の変化が緩慢であるとき、実は、理に適った行動をとっている。そして、長い間、そのやり方は近視眼的にはうまくいく…。

    *  *  *  *
    統合型鉄鋼企業は低品質低コストのミニミルに補強鋼の市場を明け渡すことで、利鞘の厚い製品にシフトした。むしろ、ローエンド市場を放棄する理由が見つかったことを歓迎した。その後、ミニミルはジワジワと上位市場へ移行してきたが、その間も統合型鉄鋼業は独占している鉄鋼の高品質化で対応できたため、うまくいっていた。ミニミルの上位市場への移行は実に緩慢な変化であったため、やがて統合型企業を駆逐するまでには15年以上の歳月を要したが、統合型企業が抜本的な変革をの必要性が明らかになったときは、もはや手遅れであった…。
    *  *  *  *

    顧客に当該企業とは異なるアプローチで接近し、急速な変化をもたらす可能性の高い企業は現われていないだろうか?
    利鞘が低いからと「合理的」に放棄した市場は、どのような企業が満たしているのか?また、その企業が上位市場へ移行している事に対し、同様の競争軸で対応しようとしていないか?


    そう、抜本的な改革に気づいたときには、もう手遅れなのである。組織を破壊する帰結を生むのであれば、当該組織を適用させないほうがマシなのかもしれない。恐らくは、当該企業が適応できる文化、技術ではない。

    適応には限界がある。予測不能な将来には、新しい能力の獲得が必要である。それが何か明確でないことは、競合企業をはじめ、すべての企業において平等である。


    ・・・最も目に付くからといって、それが最も注目を向けるべき対象とは限らない(マイケル・E・レイナー)

    *本記事は以下の書籍の第四章「適応の限界」を参考にしています。

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    June 9, 2008

    マーケティング⑦(エーベルのフレームとVRIO分析)

    私は書籍はほとんど書店では購入しない。amazonでの購入がほとんどで、ビジネススクール時代を含めて、多くの書籍を新書、中古など(私は書籍は読めればいいのでほとんど中古なのですが)、その冊数は、それこそ大げさではないが、数百冊に及ぶ。現在でも、少なくとも300-400冊が部屋にある。

    一時は、棚に入りきらず、溢れかえってくれば、ブックオフにとりに来ていただいていたが(ちなみに、とりに来ていただくには、忘れましたが数十冊以上が必要です)、論文かリポートを書いているとき、「あぁ引用する書籍…そういえば、売ってしまったかも」ということがあり、いつからか売るのはやめてしまい、本棚が増え始めた…。

    10年前とは大きくかわった購買行動であるが、amazonやブックオフのビジネスモデル、一般的には企業のビジネスモデルをディスカッションする時、どういうことに気をつければいいのだろうか?

    このことに関して、エーベルは事業ドメインをWho、What、Howの観点から定義する。いわゆる:

    • Who:顧客は誰か?
    • What:どのような顧客ニーズを満たすのか?
    • How:顧客へのアプローチは?充足方法は?
    →アプローチ:4Pのプロモーション、プレイス
    →充足方法:4Pのプロダクトとプライス
    である[1]。大抵の議論を収斂させると、上記の内容のことを議論していることが多い。

    さらに、補完的にはVRIOを考える。VRIOとは:
    • Value:経済価値に関する問い
    • Rarity:希少性に関する問い
    • Inimitability:模倣困難性に関する問い、追加的に代替困難性に関する問い
    • Organization:組織に関する問い
    である[2]。経済価値は抽象的な感があるが、例えば、「デルコンピューターのジャストインタイム方式の購買は、価値があり、希少である」などである。

    フレームは、種々の企業を分析し、合理的に提示されているため、どのフレームにも限界はあるが、入り口としては考えやすい。

    ・・・消費者は様々な動機で行動する。そのニーズを捉えることは、当該企業にとって、利益を抽出出来うるビジネスモデルとなるのか否か、また、継続しているビジネスではどうか。なんだかんだ言っても、ビジネスは総合力の勝負である。

    [1]に関する邦訳書籍はこちら:事業の定義―戦略計画策定の出発点 (マーケティング名著翻訳シリーズ)
    [2]企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続

    photo(c) Maco

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    June 8, 2008

    橋下大阪府知事はどうしてここまで、頑張らなくてはならないのか。

    橋下大阪府知事はどうしてここまで、頑張らなくてはならないのか-2008年1月10日、大阪府知事選が告示された。その少し前に、次のようなニュースが報道された…。

    「府債2930億円 返済見送り-大阪府、再建団体回避狙う」(2007.12.31 日本経済新聞地方経済面)
    「赤字隠し、太田・大阪府知事認める」(朝日新聞2008.1.5 朝刊26面)

    なんのことはない、「大阪にはまだ、借金がありました」なのである。しかも、財政再建団体への転落寸前なのである。おそらく、誰が知事になっても、橋下知事の再建案の額面(2008年度で1100億円)程度の改革は必須だったのである。

    太田前知事が「財政当局が見つけた技術的な手法」(2008.1.9 朝日新聞)とも言ったように、「これまでの借金を返すための金(減債基金)に手をつけて借金に借金を重ねてきた(2008.6.6 日本経済新聞3面)」こととは、単なる自己資金の流用であり、民間では借り換えを含め、大したことではないかもしれない。実際に、「借り換えも減債基金からの借り入れも法令に違反しない」(2008.1.11 日経金融新聞1面)。

    問題は、情報開示がなかったことである。実際、「市場は疑心暗鬼になり、大阪府債の国債利回りに対するスプレッド(上乗せ幅)は、問題発覚前の0.2%程度から0.3%近くにまで拡大している」(2008.1.11 日経金融新聞1面)*。

    いずれにせよ、赤字を隠したことではなくとも、返済を先延ばしにしたに過ぎない。

    次には、財政指標に関してである(以下は2008.1.11 日経金融新聞1面参照)。
    大阪府ではいわゆる十年債を二回借り換え、当初の十年間で元本を39%減らす計画であった。ということは、61%を借り換えるのだが、実際は、ほぼ全額借り替えていた。2006年度末には減債基金(借金を返すために積み立てる金)は底をつき、理屈の上では、2007年度に財政再建団体へ当確していたのである。いわゆる、地方財政の健全性を示す「実質公債費比率」を実態以上に良く見せていたのである。

    基本的に企業の破綻とは異なり、この適用団体の破綻は、債務免除ではないため、首長から住民まで激しい痛みを伴ってしまう。職員は給料減、税金増、さらに職員減による業務増加と三重苦である。府民においては、寝耳に水の負担増となる。

    経済は人口動態に左右される面がある。団塊の世代の引退が始まり、第二次ベビーブーマーの労働年限(あと25-30年程度)の間に、大阪と同様の状態である日本財政も健全化できなければ、その後の世代では負担を受け止めきれない。

    現代の環境から言えば、破綻した国は見向きもされない。発言権はなく、復興するまでの種々の取り決めは、復興後も重くのしかかる。ましてや日本には、ロシアのような資源もない。

    ・・・タレント知事(とはいっても本業は弁護士です)の誕生からはじまった改革、それへの専門的意見、批判、非難、また、賞賛、大阪の取り組みは、日本の縮図となっているかもしれない。

    *債券はリスクが大きくなると利回りが大きくなる。従って、国債<地方債。
    *「財政再建団体」は新法では「財政再生団体」です。
    *各種新聞の情報ソースは日経テレコンによる。


    June 6, 2008

    原油価格の動向と経済

    NY原油続落、一時121ドル台(日経NET)と、原油価格が乱高下している。世界に余ったお金は、今後どう動くのだろうか…。

    インフレ懸念に関しては、日銀の白川総裁は、「金融政策とバブル発生の因果関係は「極めて複雑であり、明確な答えは見つかっていない」としながらも、日本のバブルは「低金利が長期間持続するとの予想が無関係であったとは言い切れない」(日経NET)」と述べている。

    はたまた、「ジョン・テーラー米スタンフォード大教授は28日、日銀金融研究所主催の会議で講演し、「米国をはじめ各国中央銀行の過度の金融緩和が最近の世界的なインフレの一因」という見方を示した。(日経NET)」とおり、この二人の発言の信憑性はともかく、なにやら、金利を上げたがっているようである。

    米国がこのまま、更に金利を低めると、過剰な流動性に勢いがつき、余っている世界のお金は、不調な株式、債券ではなく、原油やコモディティに流れ込む。特に、原油価格の高騰は種々の経済に重荷になることは御存知の通りである。

    日経平均に目を向けると、4,5月は外国人投資家が買い越し、価格が上昇しているが、日本を含め、アジア各国の株式は、基本的にハイリスクなポジションであるため、お得な投資先があれば、すぐにでも、ポジションを解消しかねない。

    さらに、原油など価格上昇が見込めなくなれば、機関投資家は個人投資家とは異なり、「待つも相場」が出来ないため、すぐ動くであろう。

    ○日経平均株価の比較(89年バブル期、最安値時)


    ブルドック裁判後の株価下落で、鎖国的市場と映り、外国人投資家が好む経済成長路線を突き進んでいるように見えない日本への資金流入はどうなんだろうか?

    ・・・個人はとりあえず「待つ」ことにします。

    *本記事は投資や投資に関する勧誘を意図するものではありません。
    *投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。

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    June 2, 2008

    マーケティング⑥(プライベートブランド)

    トップバリュ、セブンプレミアム、グッド・アイ…小売業者にとっては重要な意思決定となるものが、プライベートブランド(以下PB)である。

    通常、製造業者のブランドをPBに比してナショナルブランド(以下NB)と呼ばれる。現在、NB製造業者は、プロモーション費用を増して、NB維持に努めるが、棚面積増加のためにはPBへの投資圧力を流通業者がかけてくるため、悩みは大きい。

    多くのPB品がそうであるが、その製造はNB製造業者であることが多い。PBを展開する業者にとっては、「製造業者が研究開発費などを負担しなくてもいいのだから」となるが、製造業者にとっては、「価格が安すぎて製造ラインの固定費用調節」にしかならない。

    この両者は、お互いに満足することはない。NBの弱体化に関しては、一般に、流通、小売業者が力をつけてきたことが言われるが、消費者の観点からは、価格に敏感になってきている背景がある[1]。

    結局は、原点である、消費者の認知ブランドを製品・サービスで、知覚価値を価格で実現しなくてはならない。

    ソニーはコストリーダーシップのブランドではないし、パナソニックはイノベーターが好むブランドではない。この両者は、そのブランドをそれぞれに構築してきた。ベータvsVHSでの記憶は製品品質のソニー、コストリーダーシップのパナソニックなのである(これらの戦略の考察は[2]に詳しい)。

    現在の有力ブランドの最大の弱点は、「製品品質」と「コスト削減」に、いや、それらのみに執着しすぎなのである。

    ケチャップの製造業者がその味(製品品質)だけに執着しても、安く製造することに執着しても、うまくいかないであろう。消費者はそのブランドに何を期待しているのだろう?それが答えである。その答えが、当該企業で利益の見込みがないのであれば、撤退するしかない。いつまでも同じ製品・サービスを提供して、利益を捻出できるほど、現在のビジネスはあまくない。

    「製品品質」と「コスト削減」のみに執着したブランディングはやがて色褪せる。

    理由は簡単で、どちらもやがてはサチレートするからである。
    ○製品品質を謳うはずの広告が商品名の連呼であったり…
    ○対外的にアピールしているポイントがブランドイメージと異なったり…
    例えば、「ソニーがジャストインタイム」と言っても???ではなかろうか?
    最も危険なのは、この二つの因子が臨界点を超えると、顧客クレーム(や事故)が増加するということである(これは組織的な要因が大きい、責任所在、低モチベーション化など)。

    ・・・そのような悩みが深い企業が取り組まなければならないのは、「よそでもやっているから」との馬鹿げた理由から導入されるシステム導入ではなく、「ブランドから商品まで管理するプロデューサー」の育成なのである。

    注)
    [1]『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版』第六部 小売業、卸売業、ロジティクスのマネジメント、p646より。
    [2]『戦略のパラドックス』第二章 完璧な計画より。

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