QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。②

2010年3月10日

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QFD(品質機能展開)TRIZ(発明技法)、及びタグチメソッドは何故簡単に使えないのだろうか?

本日は、QFDについて述べようと思う。


さすがに、この手法は、60年代から試験的に使用されてきたこともあって、その時代の日本のお家芸であった“コンカレント・エンジニアリング”そのものである。

だから、普及の困難さは、手法そのものと組織的な理由に分類される。


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QFDは品質機能展開とよばれ・・・いやいや、要は顧客の要求を、サービス、製品を発信する企業の開発目標やその生産工程にまで落とし込む、マーケットイン型の手法である。

とはいっても、「発明」というよりは「改良」に向いており、ライフサイクルでは成長期での適用が好適である。

*上の表は、統計解析ソフトJUSE-Statに添付されている例で、実際の製品・サービスのものではありません。


さて、なぜ浸透しないのか?
第一に、前回も述べた“数学”の習得の問題
第二に、組織のレベルの問題

がある(と思う)。



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第一の数学の習得に関しては、詳細には、QFDは、主成分分析などを行なうと、行列、固有値*の話が出てくることもある。時には、競争参加者を分類するためにクラスター分析も行なわなくてはならない。多くの人は、数学は避けて通りたいものである。ここで、門が狭くなる・・・。
*一般的な統計学では、行列、固有値は含まれていない。固有値・固有ベクトルは大学の初年度で習うことが出来る。


「あぁ・・・結果を教えてくれる?」


と言われることが多い。


が、その結果を簡単に伝えると、「どうしてこうなるの?」と尋ねてくるので、分析根拠を述べ始める・・・簡単に説明しようとするが・・・やはり、行列、固有値は説明しにくい面もある。


やっぱり、わからないものは信用しにくいものである。


これが、次に述べる第二の組織レベルの問題でもある。レベルとは習熟レベルで、長年、企業が培うものなので、今日明日の話ではない。


製造業では、伝統的なQC程度は運用しているか、従業員が習得しているかのレベルでなければ、QFDは現場へ展開できない(管理が出来ていないから)。


販売員、特に、マーケターが「この分析(=ここでは主成分分析、因子分析)は知らない」となれば、顧客からの声は届かない(顧客を分類できなければ、ターゲットは決められないので)。


開発従事者が、QFDを意識しなければ、マーケットと現場を紡ぐことができない。その開発の価値が不明である。





また、この手法は、その特性から、各部が連携をしなければ、成り立たない手法である。そのことは、顧客の声からはじまって、現場までの展開表が作成できることからもよくわかる。


QFDは、サービス・製品が成長期にあるときその威力を発揮するが、その時の組織の学習度合いは成熟していなければ、混乱するばかりなのである。


どうして、ここまで組織、チームについて言及するかと言えば、実際に実践することを想定してみると・・・


まず、顧客の要求を把握する。次に、それを製品・サービスに適用する言語に翻訳する。開発陣はここで機能、機構に展開、また、現場には、部材などに展開していく。生産現場ではどうか?さらに、競合の特徴も入力しなくてはならない。


そう、全体を把握することが、QFDの品質の高低に相関するのである


だから、遂行するチームやメンバーは、企業の計画された教育課程の中に組み込まれていないと、絵に書いた餅なのである。


・・・しかし!QFDの書籍(下参照;水色の表紙のもの)にある、100円ライターの例、是非読んでください。100円ライターでここまで展開表ができるものか・・・と初見でうなったことを覚えています。


<関連記事>
QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。①


<関連書籍>
○TRIZに関して
超発明術TRIZシリーズ (1)』日経BP社
*この書籍はシリーズ(6)まであります。
*産業能率大学 総合研究所からも案内がありましたが、現在は絶版です。
*Amazonでも在庫がないようです(2010/2末の時点)。

Darrell Mann著、中川徹監訳『TRIZ 実践と効用 体系的技術革新』創造開発イニシアチブ,2004.
*大阪学院大学の中川徹先生が監訳されています(紹介ページはこちら
*「TRIZホームページ」―TRIZは、こういうWeb上で情報交換することの方が一般的で、日本では、中川先生が運営されているページのことです。まずは、このサイトを参考にしてください。
*大手書店で販売されている書籍の多くは、管理者向けで実践できるものではありません(TRIZはとても一冊では説明できない)。
*TRIZ実践者が納得できる数少ない書籍です。


○QFDに関して
QFD3部作はこちらです。
・赤尾, 『品質展開入門 (品質機能展開活用マニュアル)』,日科技連出版社, 1990.
・赤尾ら,『品質展開法(1) 品質機能展開活用マニュアル第2巻』, 日科技連出版社, 1990.
・赤尾ら,『品質展開法(2) 品質機能展開活用マニュアル第3巻』, 日科技連出版社, 1994.


○タグチメソッド(≒実験計画法)について
これについては、日本規格協会からの書籍が自習に適しています。
横山,『品質設計のための実験計画法 (品質工学講座)』, 日本規格協会, 1988.




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