消費者を代表する声は誰の声か?

2010年11月14日

つれづれ 統計解析

t f B! P L
企業の会議では、顧客、消費者の声を様々な形で聞くことが出来る。

それは、販売員の足であったり、購買部員のヒアリング、開発員の技術調査から…など多岐にわたる。

ただ、それらは、当該企業の代表的調査結果とは言い難い。また、それらを統合的に分析する従業員も皆無であろう。


その代表的に成りうる調査のひとつが“アンケート”である。

アンケートに関しての勘違いのひとつは、“アンケートの質問構成が誘導的になってはいけない”に過剰反応した“アンケートに意図は持ち込まない”という実施者の思いである。

それは、(当該企業のある製品なのに)まるで国民の意見を聞くような、気高い思いである。

新入社員やマーケティング部門一年生であれば、その思いは必要であろうが、製品・サービスの何かしらを調査する意図で作成するアンケートには余分な思いである。

アンケートには何かしらの意図はある。企業のマーケティング部門や戦略立案部門の調査、仮説の検証に加えて、それらを補足するため、また、経営陣を説得する材料にするためなど。

なので、その構成(アンケート自体)を見れば、大よその当該企業の実施部門の程度が分かってしまう。

多くの調査結果は、統計というより集計である。ある意図や把握したい事柄に有意性があるのかどうかを分析するように設問は設計されなければならない。


また、どのような対象に実施するかも注意が必要である。まさか、ネット上で実施されるアンケートで「あなたはインターネットを利用しますか?」とは尋ねないだろう*。
*何かを特定する場合はあります。例えば、“生命保険契約に関して、インターネット~”など。

多くの企業は、それぞれの製品・サービスに関して、大よそ当該企業の販売エリア全体を代表する地域を持っている。例えば、日本で販売しているABC製品であれば、佐賀県のデータが全体の傾向を示しているなど(佐賀県に深い意味はありません)。

ならば、ABC製品での何かしらのアンケートは、費用面という観点から、佐賀県で行うことが望ましい。


結局、誰に、何を聞いたかを突き詰める作業である。


*  *  *  *

ABC大学でおよそ、2,30年前に学生が決議した項目があった。それは、その当時日本の学生の多くが関心があり、多くの大学でその決議は行われた。現在、その決議を見直したいと、ABC大学在学中の学生が思い始めた―

さて、彼らは、誰にその旨を訴えるだろうか?

あらゆる世代に意見を聞こうと、アンケートをとるよりは、大よそ、その決議見直しに好意的な学生の同年代に実施し、“支持を得ている”と表明したほうがいいだろう、とは想像に難くない。

まさか、世の中で、重要なポストに多い40~50代に同意を求めることはないだろう(そう、その年代がその決議の当事者なのだから)。

*  *  *  *


今日のブログの論調だと、アンケートが出来レースのように思われるかもしれないが、(業種にもよるが)アンケートの結果を、本社のマーケティング部門が過剰に「顧客」「消費者」の代表にしてしまうことも誡めなければならない、との意味合いである。


例え、そうだったとしても、このような調査から得られる顧客の声が100万ドルの価値と言われるのは、製品・サービスの成長期である。付加する機能のアドバイスである。


導入期には、あまり顧客がおらず、それ自体を広げていくことが大切である。自動車で言えば、その乗り物自体の便利さ、経済性を顧客に教育していかなければならない。

成熟期では、顧客の声を統合すれば、(またまた)自動車で言えば、燃費がハイブリッド並みで、ファミリーカー(7人程度は乗れ)、『頭文字D』のようなレースを展開できる性能、いや購入時のローンに関する優待など・・・そう、全体を満たすことは出来ない。


(何だか長くなりましたが。。。お付き合いありがとうございます。)
顧客が企業に何かを教える訳ではない。アンケートは設計するものである(企業の資源は限られている)。


・・・仮に、顧客の声、消費者の声を把握しても、当該企業の利益が上がることには直結してはいない―かもしれませんしね。。。


注)
○ ABC大学の決議は、“大学ミスコンテスト開催”に関する事柄を参考にしていますが、特定の大学、年代を批判するものではありません。
○ 『頭文字D』(:イニシャル・ディー)は、自動車を高速で走行させることを目的とする走り屋の若者たちを描いた作品(by Wikipedia【頭文字D】より)。

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