以前、経済産業省による「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ」が発表され、その新成長分野*に定めた分野の中に“観光”が挙げられていた。
*他は、グリーン・イノベーション(エネルギー関連)、ライフ・イノベーション(社会保障関連)、アジア経済(アジア市場の需要)
その主な測定系のひとつに、外国人の入国数をカウントしたものがある。これは、法務省の「平成22年における外国人入国者数及び日本人出国者数について(速報値)」にて、発表されている。
発表されている数字を元に、外国人入国数の推移を下のグラフに描画した。
○外国人入国数の推移(昭和60年~平成22年度速報値まで)
グラフからは、近年まで、入国者数は増加傾向で、図の赤矢印付近(リーマンショックの影響)では、特異な減少が見られるが、平成22年度では、回復していることがわかる。
法務省のサイトでも、人数の増加した要因として、リーマンショックからの「アジア地域の景気回復に加え,中国に対する個人観光査証の発給条件緩和措置(法務省HPより)」など、述べられている。
*本記事では上記の施策内容についての記載はここまでです。
* * * * *
本記事でこれから述べるのは、(これまでも幾度か述べてきたが)“パーセントの怖さ”である。
パーセントの使用は、本当に注意が必要である。例えば、学生の頃の試験などでは、もちろん、上限が“100”である制約はあるが、平均80点を取得している学生と平均50点を取得している学生のそれぞれ10%得点を伸ばすとすれば、後者の方が容易である可能性が高い。
元の数字の小さいほうが、○○%向上!などと表明する時にも、有利なものである。
従って、上述の入国人数に関する数字においても――
“前年比24.6%(約186万人)の増加”
という定性情報だけでは、ものすごく、日本に入国する外国人が増加したように感じてしまう。実際には、昨年の多くの企業の業績回復情報であったように、比較する前年がリーマンショックで落ち込みが大きな分、前年比は大きくなってしまっている(図の赤矢印部分)。
もちろん、マーケットを意識した企業情報では、そのような公開の方が、市場への回復基調を訴えることができるが、分析しなければならないデータなどの場合は、参考までに…という程度が適当である。
当たり前の話だが、前年と比較することに意味がある場合や、それを見出そうとする場合に、前年比○○というコマンドは実施されるのである。
では、データはどう分析すればいいのか。もちろん、必殺の方法はないが、大よそ注意する3つの点は―――
○比較
○推移
○相関
である(詳細はこちら)。
何と比較するのか、上記のような年度ごとのデータであれば、推移はどうなっているのか(企業の業績など)、何かと相関性はないか?
など、データを収集し、描画しているうちに、自分の頭で考え始め、それについて、自分の言葉で語ることが出来るようになる。
上述のデータで言えば、前年と比較することより、計算された大きなパーセントの数字で、施策の効果が検証されているかどうかは別問題である。
アジア経済の回復にあたり、以前の水準を取り戻した、かもしれないし、取り戻したにしては、その水準が低すぎるかもしれないし(サチュレートしている)、データを見ての仮説はまたまた誕生する。
それを検証するために、データをサーチしたり、何かと相関性を調べたり、研究、開発であれば、実験を行なったりと次に進んでいく。
そうなると、パーセントというのは、結構、具体的な実データで言わなければならないことを、時間の都合で簡単に言うと…または、当該データを見慣れない人のために…という感じでの使用でパワフルになるが、(話としては)具体的になりにくい。
・・・前年比――わかったようでわからない比較です。
<関連記事>
○相関関係と因果関係
<参考までに>
○データを分析、集計する際の三原則
○相関分析について
○回帰分析をエクセルで行う
0 件のコメント:
コメントを投稿