そのデータは、主張の根拠となっているのか?

2011年2月6日

つれづれ 統計解析

t f B! P L
「最近、生産性低いんだよな。」
「程度は?」
「昨日測定すると、だいたい5%ぐらい低い。」
「それは問題だね。」


なんて、よくある会話である。

さて、もしこのことが問題であれば、工場のオペレータは、これらをどのようにデータ化して、生産技術、設計、開発部門へ言えばいいだろうか?

*  *  *  *  *

①“最近”とは?
第一に、“最近”の定義である。とはいうものの、これは、当該組織で生産性を測定する期間が定まっていると思うので問題ないだろう。

②“昨日と比べてだいたい5%”
数字が“だいたい”なのがNGなのではなく、何と比較しているかである。

①で記載したように、当該組織では、週ごと、月ごとなど生産性に関する指標の取りまとめ期間は定まっているはずである。

だが、多くはシフトごと、日ごと、といったスパンで測定している。“昨日”の生産性の指標が85%であったとして、今日が80%であったとした時、現在、この記事の情報だけでは、それが問題なのかどうかわからない。

次の情報を加えて考えてみる。

直近(10生産期間単位)の生産性データが以下とする。

…82,80,79,79,82,82,84,77,76,85,80 <-(今日のデータ)


このデータは、おおよそ(平均、標準偏差)=(80、3)である。太字の部分がいわゆる昨日であったら、今日の80について、生産性が低いということが有意に言えない。


さらに、彼ら(生産技術、設計、開発部門の人)の中でも、比較的新しい人は素直に尋ねるだろう。

日ごとのデータの85%って、どうやって算出したのですか?

もちろん、生産性のデータなので、(アウトプット)/(原料の仕込み)かもしれないし、量産機の稼動データや製品自体の品質データであれば、操業時間内に決められたサンプリング間隔によるデータ(例えば、1時間に1回など)かもしれない。

工場のオペレータはそれを答えるだろう。

だが、大抵の場合、そのような基本的な質問で、彼らが確認したいのは、「それは、本当に昨日を代表しているデータかどうか」であり、何かしらのバイアス*を嫌っているのである。
* 多いのは、新製品を生産し始めた時などは、従来の製法や原料ではない場合が多く、効率が低下した過去の経験などからそう思ってしまっている。
【参考】ヒューリスティックについてはこちらのページの中頃



技術者の多くは、自分でデータを測定するか、よっぽど信用している人のデータか、測定システムがしっかり成立しているデータなどでないと信用しないものである。

だから、バイアスがかかってないか、上記の様な場合とは限らないが、そのデータが、主張の根拠となっているのかを確認するのである。


“誰が悪いかではなく、何が悪いか”
“何を何にどのように変えるのか”


がしっかりしていれば、測定データの質も向上し、必然的に分析精度も向上する。


結局、“何が問題か?”の段階でその問題を代表するデータを提示できなければ、当該組織の会議は単なるムダになる(会議のコストは意外に高い)。

多くの場合、技術陣がよく会議で提示する(決定的な)データは、氷山の一角であり、そのデータに行き着くには、膨大な測定、分析をしていることが多い。


・・・自律した生産現場かどうかは、取得しているデータ、またはその姿勢自体が、その組織の水準を代表しています。


<関連ページ>
工程能力分析
FMEA(Failure mode and effects analysis)
エクセルで行うF検定, t検定

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