事故は悲惨である。
安全衛生情報センターの統計によると、平成21年度における確定値では、1,075人の方が亡くなっている。
-> http://www.jaish.gr.jp/information/h21_kaku/h21_fa00.html
労働者死亡災害の発生状況の推移は下の通りで、年々減少傾向にはある。
○労働者死亡災害の発生状況の推移(平成元年~平成21年)
注)データは安全衛生情報センターのHPに掲載されているものを参考に作成した。その出所は、厚生労働省「死亡災害報告」による。平成15年以前は厚生労働省安全課調べ、平成12年以前は労働省労働基準局調べ。
年々減少しつつあるとはいえ、特に、死亡災害の業種別構成率が高い「建設業」「製造業」では、一瞬の油断が大きな事故を招くことに変わりはない*。
* 平成21年度では、建設業:34.5%、製造業:17.3%であり、およそ半分を占めている。
こういった事故の性質は、当該組織の訓練や教育の程度を測りえる測定系でもある。過去からの遺産に頼って現在の教育を怠っていれば、ハインリッヒの法則が示すように、ヒヤリ・ハットが重なり、やがて重大事故を起こすだろう。
経営状態が良くなければ、教育面の費用は真っ先に削減される。難局を乗り切ったところで、その費用の復活は難しい。
特に、日本型製造業の場合、習熟曲線が重要であるため、教育費の削減の意味するところは、将来利益からの借り入れを意味する。
また、製造業において、デジタル化(習熟曲線が重要な面をアナログだとすれば)されたパッケージを取り入れた新興国には、そのあまりにかけ離れた固定費の違いにより、日本型製造業は太刀打ちできないだろう。
“どうしてそんな事故が起こるんだ!”
“なぜ、その事故を防ぐ仕組みがないんだ!”
凡ミスに近い軽微な事故に対して、よくある台詞であるが、ある一面では―
そんな事故は、今まで起こったことがないのだから・・・
無免許運転のような従業員が操業に携わることなど想定していない・・・
など、アナログ的な教育を実施できない、また受けようとしない、などの現場の声もある。「意識の問題」と同時に、組織的な「教育の問題」であることも挙げられるであろう。
・・・「機械化、組織化、規格化には、社会的、審美的なマイナス面がでてくると同時に心理的なそれもある。心理的なマイナスとは倦怠である。」(A.J. トインビー)
<関連サイト>
○安全衛生情報センター
○独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
○中央労働災害防止協会
<参考>
○Arnold J. Toynbee, Change and Habit, Oxford University Press, 1966 (A.J. トインビー, 吉田健一訳, 『現代が受けている挑戦』, 新潮社, 2001, p343)
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