社会人MBA-技術者編

September 29, 2008

米国の短期国債の利回りが急激に低下

世界はフラット化する、とは、トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』の主題である。ひと昔前であれば、世界の状況を間便に家庭で入手するなどは思いもよらなかったが、今は、世界が小さくなった分、その技術は発達しており、いとも簡単に行なえるようになった。

さて、米国の短期国債の利回りが急激に低下しているが(債券なので債券価格は高くなる=買いが多い)、0.5%程度などは、前代未聞である。近代では最近の日本ぐらいでしかない。米国に長期的な信用がなくなっているのが市場の声である。

日本のバブル崩壊後の株価推移を米ドル換算と合わせて下に示す(なんか、米ドル換算に意味がないような・・・)。問題は、現在の米国は、似たような性質でバブルが崩壊した日本と比べてどの位置に来ているかである。

日経225推移(86/1~08/9/26 週足)
*MNSマネー参照

ご存知のように、米国は07/10付近がピークですでに約1年が経過している。日本を振り返ってみると:

  • 流動性危機
  • 長銀、日債銀などの破綻
  • 貸し渋り、貸しはがし
の段階を経てきた。

日本は世界の手を借りず、日本の国民がこのバブルのツケを払ったので、米国のほうが進むスピードは速いかもしれない。今は流動性危機と第二フェーズ(かつての長銀、日債銀の破綻)の間ぐらいではなかろうか。

そのうちに、不良債権などを抱えた金融機関が倒産していけば、日本では長銀、日債銀の破綻の程度となる。

いずれにせよ、暗い暗い未来ではあるが、プロの機関投資家は空売りで儲けるので、絶好の機会かもしれない(一部空売りが規制されたニュースもありましたが・・・株価が好調な時は、週刊誌などの紙面は株や投資信託のことでいっぱいになるが、やはり「売り」から入ることは概念的に受け入れにくのかもしれません)。

・・・現在はまだ方向が定まっていない感があるので、待ちますか・・・。


<『フラット化する世界』>
 


<広告(英語学習に関して)>
 


*この記事は投資や投資に関する勧誘を意図するものではありません。
*投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。

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September 25, 2008

今日はタイトルがありません。

安かろう悪かろうの製造から、高品質の"made in Japan"へ導いたのは、QC、TQM、シックスシグマ、リーン生産・・・などではなく、カイゼン意識の高い従業員とそのチームワークである。

これらの手法に共通することは、手技ではなく、プロセスである。

当該企業が利益を生むシステム、プロセスは様々である。そのプロセスおいて、制約条件になる因子が生産現場にあるのであれば、その問題、課題に対する対策を行なう。研究開発にあるのであれば、やはりそこに対策を行なう。いわゆるそのシステムの血流を良くすることがマネジャーの責務であり、血管の仕組みを作ることが、上級管理職の責務である。

ビジネス界でのある種の常識-ハイリスクハイリターン-リスクを取れる立場にあるから、高い給料を支払っているのである。品質を高めたい→シックスシグマ、在庫など無駄が多い→リーン生産、あまりに短絡的で、ほとんどノーリスクの意思決定は、上級管理職のメインワークではない。

コンサルタントを雇ってビジネスのやり方を教えてもらえば、もっと効率的になれると思っているが、それはたわごとだ。コンサルタントではなく、マネジャーがビジネスを立て直すのだ。(ジョエル・クルツマン他『MBA全1冊』日本経済新聞社, 2005, p166)

燃えている建物の消火活動は、マネジャーに任せればいい。上級管理職のタスクは、燃えない建物のしかけをつくることである。

仕掛けをつくれない、リスクをとれない・・・それは給料泥棒という。

しかしながら、現代の厳しい経営環境で上級管理職ばかりを責めることはできない。QC、TQMなど、確かに人気もなくなり、衰退しているように見えるが、従業員にとって、その中核にある統計的管理やプロセス思考は「ものづくり」には必須のスキルである。

変化の激しいビジネス界において、業務も多忙を極め、管理職同様従業員も疲弊しているのも事実である。だからといって安易にコンサルタントに任せるのではなく、企業は彼らを利用しなければならない。

行き着くところ、種々のビジネスシステムのイネーブラーは「教育」「学習」にかかっている。

グローバル化が進んだ企業の人材像は、よく国連が求める人材像が参考にされる。チークワークを遂行できるマインドやロジカルな思考は当然だが、複数のディグリィ、英語、フランス語・・・など生涯にわたり学習することをコミットしている人材像が求められる。

+++++++++++++++++++++++++++++++++

さて、話は変わり:
「MBAっぽい内容が一冊程度でわかるような書籍ってないもんですかねぇ」
と聞かれることがある。
「う~ん・・・」正直な感想である。

MBAの内容は広く浅い面があるため、回答は難しいが、会計やマーケティングなどの各分野別に関しては、以下のリンクに、MBAで使用した書籍や先生が紹介してくださった書籍を載せています。
http://www.ilibrary.jp/MOTtextBooks/MBAbasic/MBABasic.html
http://www.ilibrary.jp/MOTtextBooks/MBAbasic/MBACategory.html

入り口になる書籍と言えば・・・不足分や不明な箇所はネットで補うことができる環境にあるので、それを考慮すると、以下のMBAに関する2冊、「グローバリゼーション」に関しては、下右の書籍はマネジャーには一般的な書籍です。

 

*英語の学習を重ねたい方は、原著の購入をお勧めします。
●『MBA全1冊』
→『MBA in a Box: Practical Ideas from the Best Brains in Business
●『マネージャーのための・・・』
→『A Manager's Guide to Globalization: Six Skills for Success in a Changing World

・・・秋の夜長の読書もいいのもです。

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September 19, 2008

結局、トヨタの評価ってどうなのよ!?

「トヨタって実際、どうなのか?」よく尋ねられることである。MBAコースでもゲストスピーカーに上級管理職の方をお招きし、講演してもらったこともある・・・何人かの同僚が、トヨタへ転職し、その状況は・・・。

結論から言うと、ビジネスでは「勝てば官軍」である。利益成長を遂げている企業は、当該企業が実施している事柄のほとんどが、成長の源泉であると研究される。反対に、同じ戦略でも、利益を損なえば、それが敗因であると分析される。

スマイルカーブ*1)から考えると、日本の製造業では、組立て、量産過程において、残存する利益はほとんど残っていない。特に問題がなければ、現状維持で、特に方法を変更したり、最新設備以外の投資(人的も含む)は行なわない*2)。

*1)スマイルカーブ→このリンクはモジュールの説明ですが、”ハードウェア”の説明後半にスマイルカーブの記載があります(Wikipedia)
*2)これは今ある技術をカイゼンしたほうが経営的に安くつき、方法を変更することで余分な組織的コンフリクトを避けられるためである。ただし、最新技術を開発する産業では、この部分は「研究」にあたり、この限りではなくなる。


従って、利益率の高い研究開発分野、販売、アフターサービスなどに資源を投入する。例えば、トヨタやその他の自動車産業が確実に海外へ進出し、利益を伸長させ、ハイブリッド車を開発、上市する、ことである。

特に、組立て、量産過程に利益を求めない米国、欧州では、iPodのように、コンセプト、デザインのみで、製造を担当したのは、結局、東アジアのドリームチームである。

日本の場合、海外の研究者がよく上記を調べ、日本でも高名な学者も多くいる。その結論は、「日本の製造業のチームワークは独特である」ということで、これは、もはや文化的側面を説明していることが多い。このことが、日本の製造業において、未だに量産、組立てで利益が残存している一因である。

さて、そういったことから、トヨタを善悪両面から観察する。

まず、最近のトヨタ研究で賞賛側の代表作は:

     
*画像のリンク先はオンライン書店ビーケーワンです。
*amazonへのリンクは記事の下にあります。

負の側面を語ったものが:



おまけでこういうのもあります。

*画像のリンク先はオンライン書店ビーケーワンです。
*amazonへのリンクは記事の下にあります。

*   *   *   *

①開発について
  • トヨタ(を含め多くの自動車メーカー)は、内燃エンジンの効率化をひたむきに研究し、ついには、ハイブリッド車を製品化し、新たな競争軸(またはハイエンド)にてリードしている。米国のコンペティター達が老年期であることは否めないが、電池を搭載するコンセプトは、電池産業は日本のメーカーが世界をリードしている利点も考えると、大きな開発成果である。

  • 反面、長年、それしか製造していない。自動車は経済的側面から排ガスを許容され、成熟期が長いのである。ハイブリッドの成果は主に電池メーカーの成果と言ってもよい。それも、燃費効率を高める延長上にあり、目新しい技術ではない。さらに、現在搭載されているニッケル水素電池から、携帯電話やノートPCに搭載されているリチウムイオン電池へシフトする開発は、単に、リチウムイオン電池がニッケル水素電池に比べ、軽く、容量が大きいから、という従来の燃費効率上昇のコンセプトから生まれたものであるならば、その設計思想は危うい(とは言っても、安全性は確保するでしょう)。

②生産方式について
  • トヨタが実施する生産方式は、在庫が最小となり、また、顧客の要求に応えるリードタイムは常に更新され、経営上、すばらしいインパクトがある。また、それは、サプライヤーが集積している利点を見事に生かしたものであり、高額な給料を支払うこともなく、一部、非正社員で実施できる利点を持つ。

  • ただし、それは、70年代の石油ショック時に考案されたもので、外資に吸収された日本のメーカーもほとんどがその方式であるのに関わらず、経営状態が異なることから、経営上ではなく、生産上のカイゼンであり、過大評価の嫌いがある(例えば、この方式で利益を捻出することを戦略にするなど)。
    また、この方式の在庫の最小化は、運送業者による排出ガスと反比例である。在庫を持つほどに、部材などの運送で排出されるガスは低減される。その効果は、ハイブリッド車の低減分と比べてどうだろか・・・。

・・・少し前はソニーがよく議題に挙がりましたよね。現在は、エネルギー価格の高騰も手伝って、トヨタですよね。ある学者は、トヨタの発展はミステリーだそうです。いずれにせよ、そうなることは企業としては素晴らしいことです。皆様の見解はどうでしょうか。


<参考書籍>
ジェフリー・K・ライカー, 『ザ・トヨタウェイ(上)』, 日経BP社
ジェフリー・K・ライカー, 『ザ・トヨタウェイ(下)』, 日経BP社
渡邉 正裕, 林 克明, 『トヨタの闇』, ビジネス社
鎌田 慧, 『自動車絶望工場―ある季節工の手記 (講談社文庫)』, 講談社文庫
若松義人, 『マンガでわかる トヨタ式カイゼン [宝島社文庫] (宝島社文庫 D わ 1-3)』, 宝島社文庫

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September 16, 2008

金は金を生まなかったのか。

最近の米国発のニュースは非常に暗い。しかしながら、かつて日本が経験したバブル崩壊で言えば、長銀破綻後すこし・・・の段階であり、安易な楽観論は居心地が悪い状況である。

さて、下のグラフは、日経225、ドル円の推移を示している(ソース:MNSマネー)。日本の景気回復の測定系のひとつに株価を挙げるなら、通常であれば、株高円高となりそうであるが、日本の場合は、多くの場合が株高円安である。

従って、政府は株安円高を嫌う。当然、日本を支える多くの輸出企業は忌み嫌う。グラフでは、2000年からしばらくは、株高円高という妙にスッキリ(?)した形態であるが、どうも、デフレ環境下で日本のマネーの動きが悪く、外国人投資家による:

  • 日本経済が好調→円買い
  • 日本経済が低調→円売り

の寄与率が高くなっている。回復の兆しが見え始めた2005年頃からは、例の株高円安(株安円高)に戻りつつある。

日経225, ドル円推移(週足:1999/1/8~2008/9/16)
米国ドル主導の影響を受ける日本経済では、今回の影響も確実に受ける。以前にも述べたが、それぞれに発端となるイベントがあるが、原油の価格下落(商品の下落)はそのトリガーであった。これに伴い、商品、高金利通貨の下落がはじまり、いよいよ本格的な底を経験する。今は入り口をやや過ぎた頃である。

一日に為替や株価が数%動くのは、短期筋の動きであり、相当に市場が動いている(混乱している)。

日本の場合、株安円高を嫌うので、日銀の政策、また企業の血のにじむような努力により、かつての苦境もそうであったように、この苦境を乗り超えていく。一説によれば、2年程度かかるらしい。

89年型のバブルが底を迎えるまで、また、2003年の株価最安値を迎えるまで、それぞれの直近の株価最高値からの経過週数は約150週前後である。歴史は繰り返さないが、現在の場合、ブルドック裁判以後の最高値を基準にすると、底値まであと約100週前後となっている。


とりあえず、今回の「金が金を生むシステム」は精巧なもので、その瓦解には、相当の痛みを伴うが・・・、なんて、他人事のようであるが、多くの年金基金や企業の運用部門などは株式へ投資していることから、他人事の方は実は少ない。

・・・これからが絶好の買い時!なんて方もいらっしゃいますが、どうなんでかねぇ、この錬金術。。。


*この記事は投資や投資に関する勧誘を意図するものではありません。
*投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。

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September 10, 2008

『涙が出るほどいい話』 (「小さな親切」運動本部編)

世界的な景気後退、その中でも儲ける人たち、企業間の激しい生き残り競争・・・疲れて帰宅する日々・・・そこで目にする少しの親切。



茶髪の若者の思わぬ行為、見ず知らずの人の思わぬ親切・・・

この本は「皆さんのまわりで起こった小さな親切」をテーマに、全国から寄せられた「いい話」を一冊にまとめたものです。(amazon 商品の説明より)

・・・たまには、こういうのもどうでしょうか。。。

<参考書籍(amazon)>
「小さな親切」運動本部 , 『涙が出るほどいい話 第一集 (河出文庫)
*記事トップの画像は”オンライン書店ビーケーワン”へリンクしています。

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September 7, 2008

米大統領選-オバマ氏 民主党候補の受諾演説 Barack Obama at Mile High -- "The American Promise"

November 4th -- On November 4th, we must stand up and say: "Eight is enough."
11月4日には私たちは立ち上がって、「8年で、もうたくさんだ」と言わなくてはなりません。

先月、バラク・オバマ氏が民主党候補の受諾演説を行った。今、民主党にはスターが多い。ヒラリー、ビル、ゴア・・・そして、今回の演説の主役であるオバマ。(今後の状況はわからないが)この演説をされると、指摘される経済分野の弱点があったとしても・・・
”これでオバマが選ばれなかったら、米国は大統領に何を期待してたの?”
見たいな雰囲気になりかねないものである。

英語の学習には、よく過去の偉人の演説が取り扱われるが、おそらく、今回もそうなるだろう。

We're a better country than ・・・:
We're a better country than one where a man in Indiana has to pack up the equipment that's he's worked on for twenty years and watch as its shipped off to China, and then chokes up as he explains how he felt like a failure when he went home to tell his family the news.
((インディアナ州のある男性の場合)20年も使い慣れてきた機材が梱包され、中国に送られていくのをなすすべもなく見ていた彼は、家族に失業したと伝えなくてはならず、どうしようもなく情けない思いをした。その体験を私たちに語るとき、声をつまらせて言葉を失った。働く人がそんな思いをしなくてはならない、そんな国でいいわけがない。)

"a nation of whiners"に関して:
Tell that to the proud autoworkers at a Michigan plant who, after they found out it was closing, kept showing up everyday and working as hard as ever because they knew there were people who counted on the brakes that they made.
(「愚痴っぽい国民」? あなたたちは愚痴を言っているだけだと、その同じことをミシガンの自動車工場で工員たちに言ってみたらどうか。自分の仕事に誇りをもつ彼らは、工場が閉鎖されると知ってもなお、自分たちが作るブレーキを必要としている人たちがいると分かっているから、毎日出勤して、前と同じように真面目に働き続けたのです。)

などなど、イラク、経済などの演説が続いていく。

残念ながら、日本への影響は、大きな括りでは、民主党候補が勝利することは、経済的にマイナスであるが・・・。今日本でも、自民及び民主党のそれぞれのトップを選択することが行われようとしている。とにかく、演説は米国はうまい。

<参照サイト>
演説 & スクリプト
http://www.americanrhetoric.com
http://my.barackobama.com
和訳サイト
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/world/gooeditor-20080830-02.html


ビジネスに目を向けても、彼らは、プレゼンを”設計”する。日本の現場では、せいぜい、「時間以内に終われるか?」程度ではないだろうか。プレゼンをチェックする人がそうなのだから仕方がないし、文化的側面もある。

”米国で流行っているのだから・・・、米国の方が言うのであるから・・・”正しい”という根拠無き米国礼賛はどうも受け入れがたいが、プレゼンに関しては、それは正しいかもしれない。

有能だから出来ているのではない。内容、所作・・・練習、練習、練習!なのである。

会議直前まで資料を作成して、ぶっつけ本番!なんてこともあるが、中長期の計画を、直立不動の棒読みでプレゼンされて、「質問はないのか?」「もっとちゃんと聞け。」と『何のために座っているんだ』と半ば脅迫されても、聴衆は時に眠たくなるような下手くそなプレゼンを延々と聞かされ(聞くのも仕事と)、当日に配られた資料、しかも会議のファシリテイトも出来ていない状況下で、一体何を質問すればいいのだろう。

ビジネススクールでプレゼンは考えさせられた。私の”聞けるタイム”は、15分枠ぐらいのプレゼンであれば、最初の1分半~2分、5分枠ぐらいのプレゼンでは45秒であった。あとは結構聞いていない。だから、ビジネス現場でよく言われる「結論は最初に」は徹底していた。(とはいってもプレゼンの入り次第で伸びたりしますよね。つかみは大切です!)

時には、『あぁ、今日結構長いかもなぁ』とプレゼンしている時に感じていると、ある講義の先生から、「まとめてください」合図が出されており、時間を結構オーバーしていた事がある(15分枠で2,3分オーバー)。かと思えば、5分枠の際、(私にとっては)どうでもいい内容についてだったので45秒程度で終わらせたところ、「もう少し話してください」合図を送られたこともある。

・・・なんだかんだ言ってもプレゼンは技術的な側面が大きなことは間違いなさそうです。

<参考書籍>

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September 4, 2008

『自動車産業の終焉-次世代クルマ戦争に勝ち残るのはどこか』(イアン・カーソン他)

現在の経済状況では、自動車は、必要悪である。環境や人体には好ましくないが、無くては経済が停滞する。

自動車の機能を維持しつつ、環境や人体への問題をクリアするためには、燃料である石油の使用を無くす、もしくは、それまで逓減していくことである。

このような状況のとき、経営力が垣間見れる。自動車は政治的な配慮も必要になり、日本、米国の企業が、また、代替エネルギーで参入してくる新規参入者が、どのような行動をとるだろうか?

クリステンセンの指摘の指摘のように既存の企業は対応できないのか。いや、これまでがそうであったように、日本の企業は対応していくのであろうか。

本書は、自動車産業と石油産業に焦点を当てている。

多くの起業家や、業界内部の革新者や、業界外部の人間がいま、イノベーションを加速させようと取り組んでいる。それはこれまで既得権益層である大手の自動車メーカーや石油企業によって意図的に避けられてきたイノベーションだ。既得権益層は地球を救うための努力を怠ってきた。地球の最期をいくらか延ばせる程度の小手先の改革しか行なっていない。自動車業界は技術的にはもっと燃費のいい自動車を生産できたのに、そうはせず、燃費のよくない自動車を作りつづけた。(本文「はじめに」より)

本書は、大きな論旨としては、自動車、石油産業を切り口に、環境問題へ対応していくには、石油の代替ではなく、クリーンなエネルギーを結集させていくことを広範な調査をもとに述べているものである。
  • 自動車で言えば、エタノール、電池などの代替エネルギーに見られるように、次のイノベーションの担い手は何なのか。
  • 石油産業の力はどれほど強いのか。
  • 燃料電池車を手がける企業が本当に最終的な勝利者なのか。
  • 中国、インドなどガソリンインフラが整っていない国や地域が新たなインフラを築きやすいのではいか。
など、これらの業界を概観できる書籍である。

イアン・カーソン他『自動車産業の終焉』二見書房 より。

*   *   *   *   *


さて、日本についてはどうだろうか。簡単ではあるが、考えてみたいと思う。

本書の第四章「プリウスを手本に」でも、トヨタの概観している(見慣れたトヨタ礼賛論)。この内容はトヨタに関わらず、日本の製造業の特徴であることが多い。

プリウスを例に考えると、その代表格であるバッテリーはトヨタと松下電器産業の共同出資企業が提供し、鋼板は新日鉄と共同している。

いわゆる、部品メーカーとの「すり合わせ」の結晶であり、日本以外はこのプロセスは実行しにくい。これは、独自の文化であるからどうしようもない。日本の強みである。

シャープの液晶もそうだが、東レの炭素繊維のように長年、赤字事業でも経営者が容認できるのは、米国型経営では出来ない。米国型経営では、R&Dは嫌われ(ベンチャー企業が担っているので)、M&Aが好まれるからである。

その炭素繊維も航空機に採用され始め、今後は軽量化のために自動車に適用されていくことが推測されるが、そうなれば、ますます日本勢が有利である。

日本の強みである「製造・組立が付加価値が高い業務工程」と認識されるのは、モジュール化され、部品が集まれば、誰でも製造できる分野ではなく(例えば、PCの組立など)、上記の「すり合わせ」型が重視される製品において、このように言われるのである。

スマイルカーブから言っても、「すり合わせ」がいらない製品の組立・量産は利益率が低いだけで、誰でも製作できるようにすることが重要でないことは言うまでもない。


そういった意味では、顧客の要望を、研究開発できる、製造現場へ反映させる、のプロセスを強化していくことが重要であるが、「設計部」などはその役割を担うことが出来る。

要は、英語に直して、翻訳しにくいワードが外国に対するアドバンテージのヒントかもしれない。

原油価格が下落しても、日本企業は研究開発を続けていくことが推測される。その技術は極められ、「すり合わせ」を行い製品へ反映されていく。そして、地道に顧客の要望をカイゼンしていくであろう。

本書のオビでは「日本の自動車メーカーも安泰ではない」とされるが、現在のところ、日本の自動車メーカーが一番有利である*。日本のものづくりはアナログさが大切なのである。変に米国化されないことを望むばかりである。

*プリウスのようにインフラを整備しなくてもいい場合(整備しなくてはならない自動車やプラグインが主流になると、既存企業よりも新規参入者の技術者の方が熱心であるし、政府の政策や石油産業の動きも絡み状況が複雑化される)。

・・・R&Dと生産部門とが「すり合わせ」により優れた製品を製造する。ROEを単に上昇させるために、生産部門を切り離すなど財務ゲーム(企業、産業を金融商品化する短期売買ゲーム)は日本の製造業には必要ない。製造業の使命は、優れた製品をつくることである。地道に、忍耐強く、米国かぶれのアナリスト、株主の批判に耐えながら、その作業を行うことが日本の製造業の生命線である。

<参考書籍>

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