このようなケースを公理的設計の観点から考察するのが、今回の記事です。
(本来のスジからは外れるかと思いますが、ご容赦ください)
参考書を紐解くと、ある製品の購買の意思決定に関連している例は以下になります。
- 住居購入([1], pp50-51)
- 小型自動車の選定([2], pp285-289)
いずれも情報量に関するケースにて記載されています。
最初の住居購入の例では、住居購入の際のFRとして通勤時間や空気の清浄性などが定義され、A街、B街及びC街がもつそれぞれの条件の情報をもとにして、情報公理を用いいくつかの候補から選択している。次の例では小型自動車の選択において、FRとして、燃費、加速性能などを定義し、A車、B車・・・F車の特性をもとに、情報量の解析を行い購入者の最良の選択を考察している。
設計の概念として、以下の2公理を再掲載します。
独立公理:要求機能の独立性を保て
情報公理:情報量を最小化せよ
ケースに戻ります。
2ケースでは、(おそらく)複数のFRがあり、最良のDPが選択されていく…はずなのですが、実際は、複数のFRで重みが必要だったのでしょうか?(これは「設計許容範囲が相対的な重要性を指定するので必要はない」[1],p50、とされています)
また、消費者領域のCA;顧客が求める特性からFRへの写像における必要情報、CAとFRとの間の関係における情報が不十分だったのでしょうか?
(これについては、不十分な情報だけで設計、として[1]で解説され(pp60-62)、準独立設計の場合、完全な情報がなくても設計は続行できるとしている:定理17)
おそらく、「新素材を用いる業界注目の新製品を上市したケース」では、CAからFR領域への写像においての情報不足を補いきれなかった点(結局、新素材を用いてまで開発した機能は顧客はそれほど必要としていなかった?)、「異業界に飛び込んだケース」では、設計の問題とすることには困難かな、ということが考えられます(ビジネス環境的な要因が強いため)。
ただ、2ケースともCA周辺の情報整理が不十分であった点は挙げられます。ここの不確実性の高さは、その後のFR、DP、及びPVに影響を及ぼすため、不確実性が高い状況においても情報面では最小化にすることが求められます。
そのことを踏まえて、ケースの反省点は以下になります。
新素材を用いる業界注目の新製品を上市したケース
-> 新素材を用いてまで発現させる機能は、ほとんどの顧客が重要視していなかった。
(ただ、機能発現+副作用の抑制に関する製品化は素晴らしいものであった)
異業界に飛び込んだケース
-> 経営幹部同士の意気投合がもたらした事業ではブレーキが効かなかった。
(技術的な面では成功していた)
・・・事業の中での「設計とは」を考えさせられるケースです。
参考:
参考になる文献
設計要求に対する満足度を評価する手段として以下は参考になります。
泉, 澤口,「情報積算法による改善設計の最適化プロセス」, 日本機械学会論文集(C 編) 79巻803号(2013-7)3・1 情報積算法による評価尺度の設定, p414~内容が説明されています。
*文献自体はの内容は、原価削減と多様な機能改善の改善設計の検討過程において、情報積算法(4)を評価方法として取り入れ、定量的に改善案を評価することにより、最適な改善案を合理的に導くプロセスを提案しているものです。
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