「QFD、TRIZ(発明的問題解決理論)、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか」に反論する(生成AIの登場)

2025年2月21日

04 設計の視点

t f B! P L

 設計者は少し先の未来を予測して、技術的な準備しています。それは、顧客の困りごとや、はたまた新たなコンセプトの製品、サービスに関するものかもしれません。

この記事は、以前、取り扱った「QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。①」の記事に関する、TRIZに関してのいい意味での反論です。


なぜ使えないのか?それは「簡単に言えば、習得自体に時間がかかる」から。


と結論付けていた過去の投稿。風穴をあけたのは・・・


TRIZ(発明的問題解決理論)自体は、革新的なアイデアを生み出すための強力なツールです。特に、この記事では問題解決型の手法というよりも、技術者や設計者が欲している次世代予測に使用するTRIZに焦点を当て述べていきます。



目次

 1. 生成AIがTRIZを民主化した

 2. TRIZと他の手法との連携事例:QFD-TRIZ-タグチメソッド

 3. まとめ

1. 生成AIがTRIZを民主化した

次世代予測技法について、例えば、「DE(次世代商品・サービスの提案、企画)と他の類似手法との比較一覧」を参照すると、近未来におけるいくつかのシナリオを作成していることがうかがえます。もちろん、一つのシナリオに収斂するのではなく、いくつかのオプションを持つイメージです。これらのシナリオがあると、技術的な準備のイネーブラーとなることがわかります。


設計の視点(コメント)

ただ、どこで習う?何を読む?例もあまりないのでよくわからない。

筆者の場合、次世代予測に関しては、多くのケイレツ企業が集合し、産業能率大学より講師を招き、大掛かりな研修が行われました。ただ、書籍等もほとんどなく自習は期待できません。

推測ですが、この知識へのアクセスの乏しさ(当時)が普及を妨げている要因のひとつかと思います。このような新たな手法等は善意のボランティアがいてこその浸透と推進だからです。当時はYouTube等のメディアもなく情報を発信しているのはほんのわずかでした。


ただ、生成AIの発達により、大きく変わりました。特に、GPTsにより、オリジナルのチャットボットの作成が可能になり、例えば、「9画面法」を利用した発想は次世代予測に有効で参考になります。


早速、試してみましょう。


ここでは、ChatGPTのGPTsの中に9画面法を実施するものがあるので、システムに「内燃系の自動車」とし試してみました(下表)。


       表 「内燃機関の自動車」の9画面分析結果

過去(1900年以前)現在(2020年代)未来(2030年代前後)
超システム初期の道路、馬車専用の標識、馬車専用の交通ルール一般道路、高速道路、信号機、ガソリンスタンド、交通法規スマート道路(車両通信対応)、自動運転インフラ、環境規制強化
システム馬車(人や荷物を運ぶ手段)内燃機関車(ガソリン車、ディーゼル車)次世代内燃機関車(低排出ガス型、ハイブリッド化)
サブシステム馬、木製車輪、木製車体内燃エンジン、トランスミッション、排気システム、タイヤ水素・合成燃料エンジン、高効率トランスミッション、排出ガス処理技術の高度化


超システムとあるのは、システムの上位概念、社会情勢やインフラ、政治的状況を含むとより好ましいかと思います(PEST分析っぽいですね)。システムは、今回は、内燃系の自動車を中心に据えています。サブシステムは、工業製品であれば、システムを構成する部品と考えれば問題ないでしょう。

*上記は9画面法の解説ではありませんのでご注意ください。


画面では左から右へ時間が流れ、システム、サブシステムは技術的に進化している様相とみなすことができます。製品によっては、構成部品の進化がシステムへ影響を与えることも十分にあります。システムの上位概念の中の政治的な状況によってもシステムは影響を受けます。


設計の視点(コメント)

左から右へ技術が展開されているとすれば、その根拠があるはず?

GPTsの作者は、ここを明らかにしています。次世代予測技法でもそうでしたが、TRIZはもともと膨大な特許を解析し、発明の特徴、傾向をとらえており、技術システムの進化パターンが整理されています。


すべてはわかりませんが、「システムの進化について、何か法則はありますか?」と聞いてみると、以下の説明がありました。
*それぞれの説明、詳細は回答されていますが、ここでは省略します。

① システムの完全性の向上
② ダイナミズムと可動性の向上
③ エネルギー効率の向上
④ 制御の複雑化と自動化
⑤ ミクロレベルの進化
⑥ システムの統合と分離
⑦ システムの代替


また、「あなたが考慮できる「技術システムの進化パターン」のすべては?」など聞いてみると、上記以外に進化の法則を記載してくれました。これらを単独、もしくは組み合わせてサブシステムの進化、超システムの様相を鑑み、システムの次の姿のシナリオを作成しているかなり論理的なシナリオ作りです。

この特徴は、TRIZでの次世代予測技法と生成AIは大変相性がいいことを示唆しています。生成AIは今後も進化を続けていくので、GPTs(GPTsに限らないが)での登場は手法を民主化していくことでしょう。

注)ここでの分析のシステムは、2030年では「ハイブリッド」は出てきましたが、「電気自動車」は登場しませんでした。システムで「内燃系」とした影響かもしれません。


*この記事は9画面法の説明ではありません。9画面法は以下の書籍等をご覧ください。

・高木 芳徳, 『トリーズの9画面法 問題解決・アイデア発想&伝達のための[科学的]思考支援ツール』,ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2021.
・ものづくりドットコム;TRIZの9画面法は優れた戦略策定ツール


次に、他の手法との連携を考えます。

ここでは、上記の次世代予測型、また、問題解決型のTRIZを含め、伝統的な製造業で親和性のある、QFD(品質機能展開)、タグチメソッドについて記載します。


いずれの場合においても、創出されたアイデアを具体化し、実現可能性や効果を評価します。アイデアがどれほど斬新であっても、実現可能性が低ければ意味がありません。また、効果が期待できないアイデアも、採用する価値はありません。QFDやタグチメソッドなどの手法を組み合わせることで、より効果的な解決策を見つけることができます。

2. TRIZと他の手法との連携事例:QFD-TRIZ-タグチメソッド

QFDによる顧客価値と技術課題の抽出

QFD(品質機能展開)は、顧客のニーズを製品やサービスの設計に反映させるための手法です。まず、顧客のニーズを詳細に分析し、そのニーズを満たすために必要な製品の機能や特性を特定します。次に、これらの機能や特性を実現するために必要な技術的な課題を抽出します。QFDは、顧客の視点から製品開発の方向性を定めるための強力なツールです。QFDを用いることで、顧客が本当に求めている製品やサービスを開発することができます。


QFDは、単なるアンケート調査ではなく、顧客のニーズを構造的に分析し、製品開発の具体的な目標を設定するためのフレームワークを提供します。QFDの結果は、TRIZによる課題解決策の創出において、重要な情報源となります。



TRIZによる課題解決策/設計コンセプト創出

QFDによって特定された技術的な課題に対して、TRIZを用いて解決策となる設計コンセプトを創出します。TRIZの40の発明原理や矛盾マトリクスなどを活用することで、既存の枠にとらわれない、斬新な設計コンセプトを生み出すことができます。TRIZは、技術的な課題を構造的に分析し、創造的な解決策を見つけ出すための強力なツールです。TRIZを用いることで、従来の発想では考えられなかったような革新的な製品を開発することができます。


TRIZは、単にアイデアを出すだけでなく、アイデアの質を高め、実現可能性を高める効果もあります。TRIZのツールは、設計コンセプトの創出プロセスを効率化し、創造性を刺激するための強力な武器となります。


タグチメソッドによるパラメータ設計

TRIZを用いて創出された設計コンセプトに対して、タグチメソッドを用いてパラメータ設計を行い、品質のロバスト性を高めます。タグチメソッドは、製品の品質を、外部からの影響を受けにくい状態にすることを目的とした手法です。タグチメソッドを用いることで、製造条件の変動や、使用環境の変化など、様々な外部要因によって品質が劣化するのを防ぐことができます。タグチメソッドは、高品質で安定した製品を開発するための強力なツールです。


タグチメソッドは、実験計画法に基づいた手法であり、少ない実験回数で、最適なパラメータの組み合わせを見つけることができます。タグチメソッドを用いることで、開発期間を短縮し、コストを削減することができます。QFD、TRIZ、タグチメソッドを連携させることで、顧客のニーズを満たし、高品質でロバストな製品を効率的に開発することができます。


この流れの中に財務分析が加わると、DFSS(Design for Six Sigma)の様相を呈しています。What Is Design for Six Sigma? (What Is the What Is . . . Series), McGraw-Hill (2004/2/1)

3. まとめ

ご覧のようにTRIZでも1で述べた次世代技術予測型、2で述べた問題解決型、それぞれ活用の仕方は異なるものの、生成AIはこの手法の民主化を促しています。

種々の新しい技術とTRIZを組み合わせることで、これまで不可能だったような革新的な解決策が生まれる可能性があります。製品の改善や新しいサービスの開発に役立てることができます。まだまだTRIZの可能性は、広がっているのではないでしょうか。


日本TRIZ協会などの団体も、TRIZの普及に貢献しています。


自己紹介

自分の写真
エンジニアの視点から、品質技法、解析技術、生成AIについて発信しています。 (シックスシグマ・ブラックベルト、MBA)

このブログを検索

ブログ アーカイブ

QooQ