民主化するTRIZ:TRIZベースのGPTsと汎用AIの比較検証

2025年2月24日

04 設計の視点

t f B! P L

生成AIの登場;TRIZベースのチャットボットは実用性があるのか?

前回の記事「民主化するTRIZ:生成AIが変える発明と問題解決の未来」では、生成AIがTRIZの活用をどのように容易にし、誰もが高度な問題解決手法を利用できる時代が到来していることを探りました。

本記事では、発明理論として広く知られるTRIZをベースにしたGPTsに課題を与え、アウトプットされた発明アイデアを検証し、課題を探ります。



設計の視点(コメント)

そもそもTRIZが数百万件以上の特許を分析し、そこから普遍的な発明原理を抽出していることを考えると、TRIZベースのGPTsは汎用AI(GPT-4)より、技術的解決策の提示が有利なの?

典型的な課題として、『TRIZシリーズ4 演習編 (超発明術TRIZシリ-ズ 4)』, 日経BP,2000, p49での「金属粉末の製造」を取り上げます。

この課題は、金属の粉末を得るのにやすりで削っていることが前提となっており、より高純度、球状の金属粉末を得るにはどうすればいいか?というのが課題になります。

通常のTRIZであると、改善するパラメーター、悪化するパラメータを考え、矛盾マトリクスより発明原理を参考にします(ここでは解決を40の発明原理に絞ります)。ただ、今回はチャットボットですので以下のようにTRIZベースのチャットボットに会話形式にて以下のように入力しました。
*TRIZベースのチャットボット:GPTsを使用しました。ChatGPT Plusにて使用が可能です。

金属粉末の製造に関することです。やすり加工では高純度で球形の金属粒子が得られません。

以下がアウトプットです。
発明原理 (IP)説明適用の可能性
IP #1: 分割(セグメンテーション)粒子を小さく分割し、球形化しやすいプロセスを適用する粉砕後に高温処理で球形化するなどの方法
IP #13: 逆転逆のアプローチを試みる粉砕ではなく、溶融・霧化による球状化
IP #14: 球面化球形にする工夫を直接取り入れる表面張力を利用した球形化処理(ガスアトマイズなど)
IP #19: 定期的な作用繰り返し作用を加えることで形状を変える振動や遠心力を使って球形化
IP #33: 均質化均質な形状に整える一定の温度や圧力条件で球形化プロセスを最適化

この例では、上表を参考すると、アトマイズが解決策のひとつであることがわかります。もちろん、アトマイズとは言っても球状化には添加金属も必要かもしれませんが、会話形式でこういったアウトプットが得られるのは、大変便利かと思います。

設計の視点(コメント)

では、汎用AI(GPT-4など)との使い分けは?

こういうことこそ、生成AIの出番です。
目的TRIZベースのGPTs汎用AI(GPT-4など)
技術的矛盾の解決◎ TRIZのマトリックスを活用〇 TRIZを参照するが汎用的
過去の特許を活用◎ 特許データに基づく分析〇 Web検索で最新の情報を取得可能
発明原理を適用◎ 体系的な発明原則を提案〇 発明原則を説明はできるが、他の方法も提案
新しい技術・ビジネスとの統合△ TRIZの枠内で考える◎ AI、IoT、材料工学など広範な知識を適用
市場動向・競争優位性の考慮△ 技術面に特化◎ ビジネス面も考慮
柔軟なアイデア発想〇 TRIZの範囲内で提案◎ 制約なしで幅広い発想が可能

まとめると、課題に対する最も効果的なアプローチは以下です。
  1. TRIZベースのGPTsで問題を構造化し、発明原則を適用
  2. 汎用AI(GPT-4)で市場動向・ビジネス要素・他の技術と統合
  3. 組み合わせて最適な解決策を選ぶ

まとめ

本記事では、TRIZベースのGPTsと汎用AI(GPT-4など)の違いを比較し、それぞれの強みと適用領域を考察しました。TRIZベースのGPTsは技術的問題解決や特許データ分析に優れ、一方で汎用AIは市場動向の把握やビジネス視点の統合に強みを持っています。実際の課題においては、単独のAIに依存するのではなく、それぞれの特性を活かしながら組み合わせることで、より効果的な解決策を導き出せる可能性が高いと考えられます。今後の技術革新とともに、これらのAIの役割や活用法も進化していくでしょう

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エンジニアの視点から、品質技法、解析技術、生成AIについて発信しています。 (シックスシグマ・ブラックベルト、MBA)

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