社会人MBA-技術者編

January 31, 2010

“非公式な小集団”はイノベーションの担い手。

私が入社した頃の話である(手前味噌だが・・・)。

研究開発の中でも、“新入社員独特の疑問”というものがある。それは、いわゆる、「先輩の常識」や「その業界での常識」である。

特に、それらを疑っているわけではなく、多くの技術者や研究開発者がそうであるように、自分の手で確かめないと納得しない、のである。

だから、それを確認する実験や、明らかに自らの興味で試みる実験、検証の際は、残業は関係なく実施していた。というより、現在ほど、残業が管理されていなかった、と言うべきかも知れない(いい意味で)。

*研究開発業務に時間労働(9時―17時など)を求めるほうが?だという議論もありますが、逆にそうすると、労働時間の如何に関わらず、給料が固定されているので、残業してまで業務を行なう従業員が減ってしまうという反論もあります。グローバルな企業間での競争は悠長なことは言ってられない状況なので、企業により様々です。

それは、新入社員でなくなっても続いていたが、時に、同期とともに、時に、先輩、後輩とともに、いわゆる、当該実験の仮説検証の目的を共有した、小さな、小さなグループで実行されていった。

善意の小集団である。

“創造的”であることが求められる業務において(ほとんどですが。。。)、この集団は極めて重要な役割を果たす。例えば、新技法などを試みる際に、企業は、いきなり導入はせず、ある一定規模の集団で試してから次の意思決定を行なう、などである(逆にそれがマイナスである場合もありますが*注1)。

はっきり言って、効率的な仮説検証は存在しない。ほとんど、失敗の積み重ねがモノをいう。


だから、この小単位の活動は、地味だが強力な創造的行為なのである。


「ちょっとやってみよう」、この言葉から始まっていく。何であれ、やってみなくてはわからない。通常、多くの従業員は、ある程度の裁量がある。数人集うだけでも、結構な試みはできるものである。


それができない組織なら、あきらめるしかない。日本が技術立国といわれた所以は、そのカイゼン体質もあるが、そうした目に見えない(経営陣が気づかない)所での、努力なのである。GEの様に、パンチのきいたCEOが現れて、劇的に変化、成長していったなどの例は、ほとんどない。



・・・なんでも、「遊び」の部分は必要です。



*注1)発明技法であるTRIZでは、その「発明」という性質上、成果を得るまでには時間がかかる。従って、“小集団の善意”程度では、上司やTRIZを進めた人が、その成果を待てないのである。以下に、その様子の表現を引用する。

企業においては、研究所や技術部門や知的財産部門などで、ボランティアの先駆者たちが、まずTRIZ の学習を始め、TRIZのソフトウェアツールを使い、関心を同じくする人たちとのグループを作り、TRIZの専門家やコンサルタントを招いて入門セミナーを組織し、実地の問題にTRIZを適用するなどのことを試みた。

これらすべての「業務外」の活動をするためには、彼らはその上司を説得する必要があったが、上司たちの多くはTRIZについてそれまでに何も知らず、また「超発明術」というキャッチフレーズには懐疑的でさえあった。

かくて、これらの企業内先駆者たちが、問題解決において実地に成果を出し、また仕事の中でTRIZを学習し適用していくことに興味を持つ仲間たちを数人から20人ばかり獲得していくのには、随分長い時間がかかった。筆者が、TRIZの推進に「漸進的導入戦略」を推奨したのは、このような時期であった。

中川徹, 「日本におけるTRIZ/USITの適用の実践」, TRIZCON2004, シアトル, 米国,2004.4.25-2より引用。

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January 27, 2010

『テクノロジストの条件』,P・F・ドラッカー

何かを研究、いや研究は大げさだが、調べたりすると、核になる一冊、研究では一論文に出会うまでは、結構、ウロウロする。

例えば、“イノベーション” においては、このブログの右に紹介する書籍が、私にとってのそれである(--> 『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント』)。これをもとに、種々の文献や書籍をあたったりと、研究が深まっていく。

かつては、「技術立国」ともてはやされた日本も、成長が鈍化し、今ではアジア諸国に成長率という点で、その技術の分野でも後塵を拝している。

技術とそのマネジメント―――ついでに、著者はあのドラッカーとくれば、『テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))』が参考になる。




本書は、マネジメントを好まない「化学者、物理学者、設計技師などのテクノロジスト」、テクノロジストでないマネジャー、「技術というもの」に関わる多くの人に向けて編集されている。

今日、企業はふたたび起業家となる必要がある。(p139)

それは、今後は、従来とは異なり、かつてないほどのイノベーション、技術変化が必要だからである(同ページ趣意)。


製造現場においても、新たな仕組みを模索しなければならない。

製造プロセスそのものに、エンジニアリング、人材管理、事業のマネジメントを組み入れる体系を学び、実践しなければならない。意識はしていなくとも、すでにこれを行なっているメーカーは多い。ただし体系はまだ完成していない。工科大学やビジネススクールでも教えていない。(第7章 つくるだけでは終わらない―製造の新理論,p130より)

さらに、イノベーションの方法論(組織、戦略、機会など)、ポスト資本主義についても言及している。


-->> さて、このブログの運営者の背景がそうだから次の記載は、「仕方がないなぁ」としてください。。。


要は、「化学者、物理学者、設計技師などのテクノロジスト」が経営分野を学べばいいのである。逆は、ほぼ100%に近い確率で不可能である。

ビジネスにおける成功は、新たな知識を創造し、その知識に基づいて素早くかつ思慮深く行動する能力を持つことができるかどうかに大きく依存している。戦略的思考はビジネスを成功に導くための必要条件ではあるが、私はそれが過大評価されていると思っている。

もしあなたが、素晴らしい二輪車エンジンを設計する方法を知っているならば、私はたった数日間で、あなたが戦略について知るべきことのすべてを教えてあげられるだろう。一方、たとえあなたが戦略についての博士号を持っているとしても、数年間働くだけで素晴らしい新二輪車エンジンを設計する能力が得られるとは思わない。

リチャード・ラメルト, California Management Review, 38, 110, 1996, 米国の二輪車市場におけるホンダの成功要因をめぐる継続的な論争より(この部分は、『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント』p81より引用しています。文中の太字は本サイト運営者による。)


ゆっくりではあるが、今は転換期の最中なのであろう(何に移行するのかは?であるが)。


・・・「テクノロジストこそ、先進国にとって唯一ともいうべき競争力要因であり続ける人たちのことである」(P・F・ドラッカー)



<参考文献>
P・F・ドラッカー,上田惇生訳,『テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))』ダイヤモンド社,2005.

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January 24, 2010

経営状態が変わっても「整備」の質は変われない。

日本航空の経営再建―法的整理、1万3千人のリストラ[1]や、CEOの後任[2][3]など、再建に向けた報道が多くなされている。

経営再建の戦術やCEOの資質などは、多く議論されているので、ここでは、「整備」という業務をキーワードに述べていきたい。


多くのモノづくりの企業では、定期点検、保守、PM(Preventive Maintenance;予防保全)など、言葉は違うだろうが、このような業務が行なわれていると思う。


航空機に関しては、JALによれば、そのホームページで紹介しているように、その方式に、「ハードタイム、オン・コンディション、コンディション・モニタリング」という方式が「構成部品や装備品個々の重要性,信頼度,構造などに応じて」適用されている。
JAL;「航空実用事典」,[7]整備 2.整備方式、より。

詳細を以下に引用する。

*   *   *   *   *

2.整備方式 maintenance system
(1) 整備の概念(maintenance concept)
最近の航空機の整備では,構成部品や装備品個々の重要性,信頼度,構造などに応じて,「ハードタイム」,「オン・コンディション」,「コンディション・モニタリング」の三つの整備方式のいずれかが,もしくはそれらが組み合わされて適用されている。

a. ハードタイム(HT:hard time):
一定の時間を定めて,定期分解手入れをしたり,部品・装備品を交換・廃棄する方式。定期的に分解手入れ,あるいは廃棄することが有効と分かっている部品や装備品などに適用される。従来から行われているオーバーホール(overhaul)は,この方式に含まれる代表的な整備方式である。
b. オン・コンディション(OC:on-condition):
定期的に点検,試験を行って品質を確認し,不具合な箇所があれば,部品交換,あるいは修理に適切な処置をとる方式。状態の良否を判定することが適当な,機体構造,諸系統および装備品に適用される。
c. コンディション・モニタリング(CM:condition monitoring):
定期的な検査や手入れをせずに,発生する不具合状態に関する情報を解析・検討し,随時的確な処置をとってゆく方式。そして部品や装備品の信頼度をグループ全体として監視し,一定の品質水準を割るような場合に,適切な対策処置がとられる。故障を起こしても安全性に直接問題のない一般の部品や,装備品に適用される。この整備方式を採用するためには,「信頼性管理体制」の確立が前提として要求される。

(引用終わり)

*   *   *   *   *

航空機では、御存知のように、事故はすべて人命が危険にさらされるポテンシャルを有している。機材ばかりでなく、医師のいない上空では、食あたりでさえ、医療行為が受けられないゆえ、事態は深刻化する*。
*食あたり:機内食の衛生管理は厳重です。例えば、株式会社ティエフケーの特集ページ

また、機材や装備品の品質管理、いや航空機の品質管理は、その責任者は講演会が開けるほどである。

さて、経営状態の悪化(=予算の削減)による、「整備」や一般的な工場での保守、点検では、航空機、自動車、電機など業種に関わらず、質がどうこうというわけではなく、その予算だけの「整備」しかできないものである。

一般的な話として、最も恐れることは、同一の構成部品や装備品においてであるが、その管理を「ハードタイム」から「オン・コンディション」に切り替えることである。

ある部品や装備品の交換頻度が低下すれば、その分、確かに、ある費用は使用せずに済む。

だが、その交換頻度はどのように決められたのだろうか?


ある期間を超えると、それ自体ではなく、他の工程へ影響を及ぼすかもしれない。
何かにせよ、必ず理由はあるはずである。


さらに、予算が低下している中、「発生する不具合状態に関する情報を解析・検討し,随時的確な処置をとってゆく」ことは逆に難しい。

エラーが人命に関わりにくい、または全く関わらない製品(=FMEAで分析される深刻度が高くない)であれば、その部材、装備品はエラーが起こるまで(例えば、壊れるまで)使用されることだろう。


結局は、ハインリッヒの法則(1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの:Wikipedia)が作用しにくい方法で管理しなければ、エラー率は、たいていは事故が起こる方へ変動してしまうのである。


特に、航空機に限って言えば、ホテル業界とコスト構造が似ている面があり、顧客が一人でも満員(満室)でも、ほぼそれに関わる固定費用が変わらない。現在の安全性を確保するのであれば、「整備」の質は変えることは許されない。あまり、こちら(整備面でもコスト削減)に目を向けないほうがいいのかもしれない。


それでも、1万3千人のクビを切らなければならないのだから。。。


たいていの場合、このような事態に陥っている、あるいは陥りかけている企業の従業員は、すでに疲弊している。ひとつのミスが重大な事故を引き起こす航空機産業においては・・・


おそらく、「再建」となると、優先順位が高いのは、意識改革などではなく、航空再建のプロフェッショナルであろう。(それだけリストラされれば、意識は変わります)


・・・コスト削減において、さらなる追加の「一律○○%カット」は、すでに疲弊している従業員の神経を逆なでるだけにしかなりません。



*くれぐれも、JALの整備がどうなるという記事ではありません。



<参考資料>
[1]「日航に更生法協力要請、国交相、3メガ銀、了承の意向、首相『OB・株主も責任』」, 日本経済新聞夕刊, 1面, 2010/01/12.
[2]「日航CEO、京セラ稲盛氏に要請、政府と支援機構、週内にも回答」, 日本経済新聞, 1面, 2010/01/10.
[3]「日航CEOに稲盛氏、国交相、「社員の意識改革期待」,日本経済新聞, 2010/01/14.

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January 20, 2010

企業が直面する課題は常に新しい。

企業の損益、また、持続的成長の決定的要因は、ハード面のみの変革にはない」という教訓は、ソフト面のアプローチの動機付けとなっている。最近の情勢と考え合わせると、その背景にあるイノベーションの傾向に変化が現れているともいえる。

▽関連記事▽
ビジネスは結果か?③-了-
ビジネスは結果か?②
ビジネスは結果か?①


そもそも、企業は、顧客へのサービス、製品を何かの価値として提供し、対価を得るものである。サービス、製品に磨きをかけたり、新たなサービス、製品を生み出したり、生き残るためには不断の努力が必要であることは言うまでもない。

新たな富とは、新たな価値を生み出すことであるからである。

“イノベーションの傾向の変化”とは、その陳腐化の速度と便益享受の形態*に変化がでているのであろう。
*便益享受の形態―成し得たイノベーションにより無条件に便益を受けることが出来たことに対し、最近は限定的な一面があること。


さて、近年の米国自動車産業の衰退に関して、野中は「実践知の作法の退化[1]」、また、藤本は「統合型製品開発力不足」を挙げ、奇策のない地道な組織能力の向上を述べている[2]。

この作業は、顧客を含む“ステークホルダー”の四半期ごとの期待にはそう応えられるものではない。

概念上、“顧客”は“企業組織”の上に位置するからといって、(単純に)“偉い”わけではない。

企業と顧客の良好な関係は、顧客が、そのご贔屓の企業が偉くなっていく(=良好なサービス、製品により利益を上げていく)ためにいるとき、それは構築される。

サービスや製品が飽和状態にある現在、当該企業にとって顧客は変遷しやすくなっている。

となれば、ある課題に対して、前の対処では通用しなくなりつつあり、常にあらたな課題や以前の課題が複雑に絡み合った課題がでてきてしまう。

判断を誤れば、イノベーションは迷走する。


こういう事態には、何よりも当該組織の基礎力がものをいう。この獲得には地道に、地道にその努力を続けるしかない。今回の危機は、ある意味、企業の基礎力検定かもしれない。

結局、企業が直面する課題は、いつも新しいのである。


・・・新しい課題には、前例はないのです。それに対処する最も有効な手段は、挑戦し続けることを人材の教育に盛り込むことなのです。


[1] 「米自動車危機教訓と展望(上)一橋大学名誉教授野中郁次郎氏(経済教室)」, 2009/05/20, 日本経済新聞, 朝刊, 23面.
[2] 「米自動車危機教訓と展望(下)東京大学教授藤本隆宏氏(経済教室)」, 2009/05/22, 日本経済新聞, 朝刊, 29面.

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January 17, 2010

IFRSが与える影響―研究開発

*本日の記事は長めですので気長に読んでください。


「なんでも次の会計基準から、開発費は資産計上するらしいよ」
「は?BS?」
「(当たり前の話、製品を)売ってないよね」
「そうだね、経費は発生してないね」
「もし、売れ残ったら・・・?」
「償却だろうね。」
「開発費を?」

現在、欧州での標準であるIFRS*1は2014~2015年には、米国、日本でも適用が開始される。
*1)IFRS:国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRSs、IFRS)とは、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準;by Wikipedia

ということは、欧州をはじめ、世界が共通の基準を用いることとなるのであるが、結構、日本の商慣習では、考えをシフトさせなければならないことが多い。この“考えのシフト”の起因するところは、日本は従来からPL中心であることによる。
*日本の会計基準との主な違いは、Wikipediaの中ごろに記載されているので、詳細はそちらで確認できます。


このブログでは、冒頭での「研究開発費」に関して、IFRSの特徴などを含めて、以下に記載したいと思う。


*  *  *  *
IFRSは、多くのサイトで解説されているとおり、大きな特徴としては、投資家目線であることである。

特徴としては、原則主義、BS重視公正価値評価の範囲拡大*2、が挙げられる。
*2)IFRSの特徴の詳細は、こちらでも解説されています。

BSベースの利益は、これまでとは利益に関する考え方が異なってくる。極端に言えば、PL的な「売上を積上げていく」というよりは、「優良資産を積上げていく」という感じであり、(投資家により)将来のキャッシュフローの創出能力を査定されていると言ってよい。

要は、よく経営者が言う「いくらの売り上げにつながるか考えて動いてる?」を第一義に置くことではなく、「どれほどの価値を生み出している?」が主眼となるのである。

この会計基準の変更は、単に財務会計対応レベルで済ますことも可能であるが、多くの一部上場企業はグローバルに展開していることを考えると、経営陣は社内的にも組織化のあり方を再考しなければならないし、社外的にはグループ全体の状況を表明することもでき、経営管理基盤を構築するいい機会ではある。
*  *  *  *

本題の研究開発費用であるが、現在、日本では、原則として、発生時に費用処理を行なってきたが、「IFRSでは、資産価値を適正評価するという観点から,開発局面における支出は一定の要件を満たす場合に,無形資産計上が必要」となっている*3。

一定の要件とは、以下である*3。
1. 技術的に実現可能である
2. 無形資産を完成させ,使用または販売する意図がある
3. 無形資産を使用し,販売する能力がある
4. 将来の経済的便益をもたらす可能性が高い
5. 無形資産を完成させ,使用または販売するための適切な技術的資源・財務的資源などの資源が入手できる
6. 無形資産に帰属する支出を信頼性をもって測定できる

*3)ITpro、アクセンチュア IFRSチームによる解説「[13]研究開発費 」より。

この影響、及び対応は、研究フェーズ、開発フェーズ、生産フェーズで明確にコスト区分を行なわなければならないし、資産化対象コストを定義し、使用可能期間、将来の経済価値の算定を行なわなければならない。
また、当然、これにより、知財戦略や研究開発投資戦略は見直していかなければならない。

なんだか大変である。

ここで記載したフェーズとは:

  • 研究フェーズ:基礎、応用研究など
  • 開発フェーズ:製品企画~量産テスト
  • 生産フェーズ:量産品の設計、試作-> 生産
が代表的である。

私のMBA時代の研究は、研究開発プロジェクトの価値評価であったが、いわゆる無形資産(=知的資産)はいくら?というものであるが、このような3フェーズに分けて評価した開発案件もある。

これは典型的な型で、意思決定に、
●研究->開発(基礎、応用研究の成否)
●開発->生産(製品の成否)
を含め、結局は、製品、市場の不確実性を考慮した価値を算出しやすい。近年では、リアル・オプション分析が代表的である。

不確実性-おそらくは、最も高いのは、石油採掘のような天然資源採掘型産業で、その次は、製薬であろう。

では、欧州の製薬業界、IFRSでの対応は気になるところであるが・・・

そのほとんどは、資産計上はほとんどおこなっていない。認可や製品化までのフェーズを考えても、不確実性が高すぎて、将来的な製品(製薬)にひもつきが出来ない。

対して、自動車業界では、相当程度の開発費を資産計上している。この業界は、コスト区分が行ないやすいのであろう。

電機などの他の業界は、様々である。製造する製品によるのはいうまでもないし、電機などは、種々の製品を製造するので、ローテクからハイテクまでの製品で、グループ企業共通で、しかも、統一的にコスト区分をするシステムやルールを策定することは非常に困難である。


皮肉なことだが、不確実性の対応に関して、研究が進み、その研究開発の価値評価が進んでいる業界ほど、開発の資産計上は行なわれにくい(ある意味皮肉でもなく当然かもしれないが・・・)。


さて、現段階で何をすべきか?

第一には、学習することである。最早、財務は全従業員の必須科目である。
第二に、やはり、すでに導入されているEUの事例である。

そうすれば、現在の日本、また当該企業とのギャップが判明していく。それらをピックアップすることが後々の導入時に大切である(わけのわからないコンサルに高い料金を払わなくてもいいように)。

最も大切なことは、経営陣が、IFRSに対してどう対応するか、その姿勢を明確にしておくことである。

上述のように、やりようによっては、経営管理の基盤にもなりうる(そう利用できる)ので、財務会計上の対応に止めるのか(いわゆる開示対応のみ;これが悪いわけではない、状況によっては有力な選択肢である)、それとも、グループ各社の標準化にまでしていくのか(これには、当然内部の組織編制も教育も時間がかかる)、などである。

研究開発的には、価値評価を含めて、(研究者でありながら、また開発者でありながら)財務的にも強い従業員が育つことは、ある意味人的な資産であるし、どうせ、幹部候補には教育しなければならない財務なので、この際にどっぷり教育するのもいいかもしれない(経理以外の人は、まだまだ時間的な余裕がありますので)。


・・・にしても、金融ビッグバン以降、ずーっと経理は大変ですよねぇ、ホント。



<参考にしたサイト、内容>
国際財務報告基準(Wikipedia)
公認会計士 植木健介さんのサイト、エントリー「国際会計基準(IFRS)と日本基準の差異に関するメモ【無形資産】」より。
ITpro、アクセンチュア IFRSチームによる解説「[13]研究開発費 」
あずさ監査法人HP、「企業経営に関するトピック解説」IFRS基礎講座
会計・監査と経営の情報ポータル―IFRS導入の世界での潮流と日本の対応―なぜIFRSが選ばれるのか―第3回
○大前研一アワー#255 12月19日の内容より。

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January 13, 2010

V字回復-幻の回復かどうかは会計知識で確かめる。

V字回復とは、“V” が示すが如く、劇的に業績が回復する・・・いや、一旦劇的に、損失を計上することである。

落とさなければ、Vにはならないのである。

古くは、約10年前の日産に始まり、松下電器産業(当時)、富士重工などは、この方法を用いて、その業績回復ぶりを示してきた。

日本での原型は、いわゆる「日産のリバイバルプラン」である。

日産は、当時の売上の約10%の損失を計上し、どうなるものかと言われたが、同時に、その時点で、翌年の黒字化は達成されていた-いわゆるビッグバスである(NIKKEI NET BIZ+PLUSの記事へ)。

当時、会計の仕組みの変更もあり、その動きも見逃さず、演出した会計の担当の仕事は、いわゆるクレバーである(実際、コストカットの決断も英断であった)。

「ものづくり」にたずさわる方なら、すぐにわかると思うが、少々の生産コストの合理化や販売コストの削減などで、業績が劇的に良くなるわけはない(それなら、すでに実行している)。まず、従業員の懐に手を突っ込むところから始まる。

しかしながら、企業が存続しなければ意味がないわけで、さらに、市場は現状維持には興味がない。

そういった意味では、「リバイバルプラン」のような演出は必要なのである。


いわゆる企業の「管理会計」は、企業により様々であり、従業員はそれに精通しているが、一般の財務会計に関しては、そうはいかない。


ただ、今後、数年で財務基準がIFRS*に収斂していくことを考えれば、経営者はもとより、一般従業員も、財務会計は、経理部の専業ではなくなってきている。
*国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRSs、IFRS)とは、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準である(Wikipediaはこちら)。

財務会計-お金のことなので、金融機関、例えば銀行の業務のごとく、一円たりとも!!という感じが強いが、意外に、きっちりしていない(変な意味ではなく)。モノは言い様的なところがある。

ある意味、それが正しい姿で、お金の儲け方(=利益を抽出するビジネスシステム)が様々あるなか、その管理方法や財務諸表のような開示方法において、唯一無二はないのである。

だから、経営陣の考えや方向性が、にじみ出ることがある。

財務基準がIFRSに収斂されれば、(珍しいことだが)世界的に同じ基準になり、IFRSの特徴からは、経営陣の考えや方向性が今以上によく分かるようになる(IFRSは投資家目線な基準なので)。

ということは、ステークホルダーの一員である従業員にも同様である。


・・・やはり、ビジネスたるもの-儲ける仕組み(=お金の流れ)はつかみたいものです。

*IFRSに関しては、後日投稿します。
<追記>IFRSに関しての記事はこちらです。



<関連書籍>



<参考書>
*これはビジネススクール時代に管理会計の講義で使用したテキストです。

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January 10, 2010

リーダーの【5つの水準】と【3つの邪魔者】

市場の成熟が度をこすと、種々の悪循環が起こり始める。

卑近な例では、イノベーションの悪循環で:

製品のコモディティ化の圧力から脱出するために技術革新や製品革新の要求が高まり、実際に多くの革新の試みがなされることになる。しかしながら、あまりにも多くの革新が登場するために、企業側の訴求力は分散してしまうし、消費者の側も革新に注目しなくなってしまう。その結果、企業はますます革新を強化する必要が発生するのである(佐藤(2009)a)。

というものである。このマーケティング悪循環は他にも存在するが、ここでは省略する(詳細は、佐藤(2009)a参照)。

これらの悪循環を脱する例にユニクロのヒートテックを挙げているが、なんのことはない機能軸と価値軸*が両立しためったにない新製品である。
*機能とは追求すれば、高品質低価格(いずれは価格において競争激化するが・・・)。価値とは、ブランド的なもので、10の価格を3で売れば(バーゲンや戦略上、売ってしまえば)、それは所詮3の価値しかないとされる認知的な軸。価値に関しては下の書籍が関連書籍。


おそらくは、ユニクロはいくら洗練されたイメージを訴求しても、アンダーが好調なので、開発を進めていたのであろう。

結局は、如何に顧客に新しい価値を提供するか、である。


さて、そうした価値を生み出す仕組みを作る、また当事者として生み出していく仕事は、意外に困難を伴う。これまでも本ブログでは「リーダー」について記載してきたが、その困難を如何に乗り越えていくかは、リーダー次第である。

リーダーシップの概念で有名なのは、第五水準のリーダーシップであろう(参考書は『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』)
第五水準(第五水準の経営者):個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組合せによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる(p31より)。
*他の水準に関してはこちらの記事をご参考ください。

というものであり佐藤(2009)b では、リーダーシップのタイプとそのレベルの体系化を、ブックオフ、テイクアンドギヴ・ニーズをケースに考察している。


なんだかんだあるが、要は、近年の焦点は、“資本、企業の論理から人間の論理へ”というようである(このブログが勝手に言ってます;)。

そのような論理が浸透していく過程で、上述のようなリーダーや構成員により、企業が成長していく時、おそらくは、次のような成長を邪魔する者が現れる。それらは:

○利害関係のない人のいちゃもん
○利害関係のある人のいちゃもん(内部、同様の業種内の模倣など)
○経営幹部(不祥事、不正、成長していく中の心変わり**など)

**心変わり=(創業時や当初の)経営理念の亡失。

である(成長していく過程ではこうだと思う)。


種々のケースから言えることは、失敗には必ず理由があるように、成功には苦労話が付き物である、ということである。

成功する(組織も大きくなる)とマネジメントも変えていかなくてはならないし、様々にコンフリクトも発生していく。そうした中で邪魔者は(発生したならば)やっつけていかなくてはならない。


・・・リーダーも難しくなってきましたね。。。


<関連記事、参考サイト>
マーケティング②(第五水準のリーダー)
リーダーの得意技は【測定系】の決定にある。
リーダーは、あっさり【譲る】ことも必要である。
リーダーは【他人の頭】をうまく使う。
リーダーは【平凡な人】を良く知っている。
リーダーは【先見性】を持っている。
リーダーは【わかる】より【かわる】ことが大切だ。
中堅社員は何が求められているのか。
佐藤善信, 「“マーケティング悪循環”の発生メカニズムとその克服」, 関学IBAジャーナル2009, pp2-5.
佐藤善信,「リーダーシップのタイプとレベルの体系化―革新企業の急成長における起業家のリーダーシップにかかわってー」ビジネス&アカウンティングレビュー,vol.4, 2009, pp1-18.



-> photo by S-Hoshino.com (フリー素材屋Hoshino)
「オレゴン州立大学(Oregon State University)のワルドー(Waldoo)と言われる建物」


<関連雑誌>
*リーダーシップについての特集


*記事中の「価値軸」に関して

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January 6, 2010

変革、変革って何を何に変革するのですか?

2010年が開幕し、近年の経済状況から、年頭挨拶では、「変革」「改革」「挑戦」といった言葉が、「従来型」を変えていく方向で、述べられていることが多い[1]。

従業員からすれば:
「この数年何も変わらなかった奴が今更・・・」

であるし、経営陣からすれば:
「ここ数年のマネジメントは、過去に例がないほど大変であった」


と、どちらもその通りであるが、その後、それぞれ従来の動きをする、というのが現状であろう。



多くの日本の仕組みは、高度成長期のそれを引き継いでいるモノが多い。“高度成長期の○○”と表現すれば聞こえはいいが、単なる途上国モデルである(途上国モデルそのものが悪いわけではない)。

それを前提にして、大きな括りとして企業に目を向けた時、従来型からビジネスの仕組みを変えていくには3つある。

  1. グローバル化する
  2. 多角化する
  3. 特化する

である。

おそらく、順に利益が出やすい。

グローバル化は、これまでの仕組みをどうこうするのは、やはり多くの時間を要するので、逆に、この仕組みができた高度成長期の頃の日本に似た経済状況の国や地域に進出すれば良い、というものである。当然、それぞれの国や地域での現地化、人材教育がネックとなる。

多角化は、現在の当該企業のコアを中心に多角化する/コアと関連のない多角化をする、である。関連性が高ければ、そのコアの寿命が延びる反面、共倒れのリスクがある。関連性が低いことは、投資的には安定すると捉えられるが、従業員や組織のコンフリクトは避けられない。コアがない場合は、しばらくは、研究開発が必要で、かなりの辛抱が必要となる。

何かに特化するのは、おそらくシュリンクする。よほどの技術やサービスの仕組みでない限り(例えば、世界でも数社しかない有していない技術など)、日本の高コスト体質では、成長し続けるアジアの途上国にはかなわない(模倣は簡単である)。


「変革」「改革」というのは、“塵も積もれば・・・”の類ではない。いわゆる、カイゼンではない。“塵が積もっても「塚」程度”とするのが、「変革」「改革」である。

“山”にするには、地殻変動など大きな力が、幾年にも働いてできるものと考える。


そう、「変革」「改革」は、トップが挨拶で言うには、その後に「続けましょう」など現在進行形であって、通常は、利害関係者がトップに望むものなのである。

簡単な話、例えば、従業員は言われても、それはできないのである。予算も人事も、組織編制も出来ないなか、出来ることは、せいぜい、カイゼンだからである。


いまが当に正念場である。


・・・と、まぁ今年もこんな感じですが、よろしくお願いします。


<参考資料>
[1]「トップ年頭あいさつ、「変革」「改革」掲げる、従来型の発想見直す。」 日本経済新聞 地方経済面 (北海道), 2010.1.5号.

*「グローバル化、多角化、特化」の3つは、チャンドラー(『組織は戦略に従う』)の企業が成長するための選択肢として(=いわゆる“戦略”)挙げている「量的拡大、地理的拡大、垂直統合、製品多角化」を参考にしています。


-> photo by S-Hoshino.com (フリー素材屋Hoshino)
「フィレンツェの朝日」


January 1, 2010

2010年。

皆様、あけましておめでとうございます。

本ブログは、運営者の備忘録も兼ねて技術経営に関する(?)記事を記載しています。

さて、本年の最初の記事です。


*  *  *  *

昨年の熱い暑い選挙の後、民主党政権が樹立され、いわゆる100日以上が経過した。大よそ、現政権の政策や考えは示されたといってよい。経済的には、現政権下では、パイが大きくなりそうにはない。

また、近年は、金融危機の状況下において、企業の経営は苦戦を強いられてきた。

リーマンショック以後08年末から09年10月末時点での世界の株式市場の時価総額の伸び率は、世界平均で約35%(戻り?)だが、日本は約7%と中国、インドの約70%、韓国、台湾、香港、シンガポールの約60%など周辺諸国と比べると、目も当てられない数字である*。

現政権の政策と昨今の経済状況からは、国内ではなく外に目を向けなくては、とてもじゃないが、経営が成り立たなくなりつつある。

その外とは、ひとつに、中国の消費、さらには、新興国の成長である。

そのような国々、地域の中間所得者層をターゲットにすることは、すでに経営者の認識となっている。これがまた、日本のコスト構造では利益は計上しにくいので、本当に「外」に目を向けることになる。


さて、株価をこのブログで幾度か示した、バブル崩壊、株価最安値へと向かった、それぞれのピーク時を100として、現在の株価の比較を指数表示で週足の推移を表すと以下である。


●バブル崩壊後、ITバブル崩壊後と現在の株価推移(指数表示、週足)

歴史は繰り返さないが、もう一つ底がありそうな、なさそうな。。。

昨年からの株価の上昇や、コモディティなどの上昇(金は少し事情が違う面を持っているが)、途上国も上昇し、よくも世界には、そんなにお金があるものだと感心するものである(ゼロ金利後のドルキャリーだが・・・)。

なんだかんだで、日本のバブル後と同様の道を歩む米国は、相変わらず苦しい。
商業用不動産の価格指数の下落が止まらない**。

今度はこちらがサブプライム化すれば、またまた大きな問題である。個人不動産とは異なり、ある程度の値下がりで買いが入るというような事は少なく、NPVがマイナスになっていくと・・・銀行は苦しい。

グラフでもう一つの底のイベントの可能性はそれかもしれない。それぞれ底である、ピーク後137週、158週の付近は、現在の赤線のグラフでは、嫌なことに“期”が変わるタイミングである。

とまぁ、「大丈夫か?」「いやいやそれは大丈夫か?」と言って、売りを仕掛けるプロではなく、相場は闇の中ですので、軽く読み流してください。

とはいうものの、経済環境が悪い日本ではローテクとして見られている工場も、途上国にとっては、その品質、管理など20年を買うことが出来る“おいしい”資産なのである。


金融危機の爪痕は、ここからが本番です。喫緊には商業用不動産指数の推移、米国金利、そして、(残念なモニターだが)日本の長期金利はモニター事項ですね。


・・・とはいうものの、幸い、日本周辺は、成長国だらけなので、それほど悲観するほどではありません(覚悟は必要ですが)。



注)大前研一アワー:向研会「2009年 経済から見た今後の経済見通し」、BBT総研が各種資料をもとに纏めた資料より。