実験者は結果を作り出すのか?

2008年12月8日

MBA 研究

t f B! P L
本記事は、いわゆるデータの捏造などに関連する記事ではない。題記の心理学的観点と技術者の実際についての記事である。

”実験者効果”とは、実験者の結果の予想が被験者の反応に影響してしまうことであり、特に、馬などの動物(被験者)が算術計算ができるなどの実験では、人間と同じプロセスで計算が出来ているというよりかは、実験者(調教師)や周囲の観察者が知らず知らずのうちに被験者(ここでは馬などの動物)に答えやヒントを与えてしまっている場合がある。
(鈴木光太郎,『オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険
』新曜社,2008.第六章「実験者が結果を作り出す?」を参考にした。)

つまりは、例えば、「1+2」という算術において、正解は”3”であるが、(例えば訓練された)馬は3回前足で地面を打つことで正解を伝えるとする。すると、周囲(実験者、観察者)は正解を知っているので、馬は、地面を打つ回数が”3”に近づくにつれ、変化する周囲の人間の身体の微妙な動きなどで正解をしてしまう、というものであり、馬は人間の思考プロセスとは異なっているのである(=1+2を計算しているわけではない)。


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さて、少し視点を変えて、典型的な技術(工場)の話をしたいと思う。

ある工程(やプロセス)が問題で、解決すべき測定系が定まっているとする。
例えば、それは、ある接着強度かもしれないし、加工品の寸法、または質量かもしれない。それに影響する因子は3つでA、B及びC因子とする。

分析の目的は、その目的値(接着強度、加工寸法、質量など)の安定化である(いわゆるバラツキを低減)。取り組みとしては、データを取得することである。

ある程度のデータが取得できると、おそらくは、分散分析を実施する。すると、目的値(接着強度、加工寸法、質量など)のバラツキ具合に対して、A~Cの各因子がどれだけ影響しているかを推定することができる。

が、ここで、工場に全く関係のないD因子を設定しよう。それは、データ取得時のある放送番組の視聴率だとする。一見、関係のない因子に思えるが、分析ではそうではない。目的値(目的関数)のバラツキに対して、D因子の変動がどれだけ寄与しているかを算出してしまうのである。

ここまで読んでくださった方は、おそらく”オチ”が見えている。そうである、このケースの”オチ”は:

”因子として挙がったものは、それが何であれ関係がないとは言い難い”のである(有意差については言い易いです)。

えぇ~!そんな因子まで絡んでいるなんて!などは、たとえ、その寄与率が数%であっても、そうなのです。(そういった場合は有意かどうか確認しましょう。)

逆に言えば、仮に後に決定的なE因子が見つかったとしても、現時点でA~C因子に着目、分析しているのであれば、設定している課題についての解決策はそれらの因子を調整することなのである。しかしながら、E因子を設定しないことは不正解ではない(結果が悪い訳ではない)。

技術は、課題が設定されれば、種々のキーファクターがあるとはいえ、やがてE因子(周辺)に収斂していくものである。要はそれを発見するまでの時間軸や費用が問題なのであり、A~C因子である程度の効果が認められ、即実施できるのであれば、それはそれで実施するものであり、課題の性質により評価が異なるのである。

技術に関わらず、いわゆる問題解決ゲームは、仮説(構築)検証ゲームでもある。であるから、全体を俯瞰しながら、また抽象化、具体化を繰り返しながら、構築していく仮説を”質問力”と呼んだり、また、仮説を検証する方法論として統計学がよく用いられるのである。

そして、有意な情報をまとめ、抽象化していくことで、課題解決の方法論が導かれていくのである。

・・・問題解決の主体者は、ある程度は結果を作り出しているのかもしれませんね。。。


<参考書籍>


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