企業の行き過ぎた利益追求や従業員を人間扱いしないなどの倫理観のない行為は、いつの間にか、プロや職人を遠ざけてしまう。
消費者は認識し始めている。
「プロや職人のいない企業に、その社会的責任は果たせない。」
企業の社会的責任とは、その企業の存在意義も含まれる。顧客に何を提供することで対価を得るのか、建前のコンプライアンスや表面上の企業理念の構築、確認などではない。
2008年の下期は当初から変化が大きなものであった。9月より10月、10月より11月・・・と指標のダウン率が大きい。さらに、円は一時88円台(ドルに対して)と円高になり、自動車業界では当初想定していたレートより円高が進んだため、2200億円の減益要因となっている[1]。
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*参考までに、日銀によれば、円の実効為替レートは以下のグラフのようになり、過去最大となっている。
■円の実効為替レート(1970.1~2008.11)
*こちらでは、株価下落と円の実効レートについて簡単に解説しています。
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このような状況に対して、企業は従業員を削減し対応するが、非正規雇用者に対しての対応がテレビなどでもよく取り上げられている。
この問題は、契約期間満了後に契約しないのか、契約期間内、例えば来年3月までの契約なのに今年12月で解雇としてしまったのか、では大きく異なる。紙切れ一枚での解雇通知は、おそらく、正社員も同様の経験をしている方は多いと思う。
また、「内定取り消しなど、企業名を公表できるように、職業安定法施行規則を来年一月に改正、今後3年で2兆円の効用対策[2]」など、政府の動きも見られる。
要は、雇用の流動性はどの程度が適正なのか、であるが、それに答えはない。
とはいうものの、トヨタやキヤノンは(経団連の会長を輩出しながら)、確実に海外へ事業を展開している。やはり、誰も彼も正社員では高コスト体質となり、現在の動きが行き過ぎると(流動性を硬直化し過ぎると)、結局は”海外”なのである。
また、非正規雇用者の解雇に関して、まるで彼らを雇わない企業が悪者にされてしまっているが、今の世界情勢(自動車でいえばビッグ3など)を見ると、企業も人員を抱えられないほど追い込まれていることも事実である。
(というより、在庫を持たない生産方式なのであるから、受注が減少すれば、組立員も受注のサイズに合わせて縮小する)
当面の状況は現状維持が精一杯ではあるが、ここで、企業は原点を忘れないことである。それは、何を対価にしてビジネスを成り立たせているのかである。例えば、「燃費のいい小型車の開発」といえば、日本の自動車業界の生命線である。
目先のリストラは株主に対して効果的だが、業務量は変わらないため、従業員数が減じることは、従業員の負担分が多くなり、イノベーションを視野に入れたとき、その対応は極端に鈍化する。このときにプロや職人が去りやすく、たとえ、残ったとしても、その多忙さ故、彼らの能力は劣化しやすくなるのである。
回復するまでには、相当の時間が必要である。
・・・「手術は成功した。だが、患者は亡くなった。」はビジネスでは通用しない・・・。
<参考資料>
[1]「車7社、2200億円減益要因、円急騰、一時88円台――雇用・投資、影響拡大も」, 2008/12/13, 日本経済新聞,朝刊11面
[2]「失業した非正規雇用者支援、雇用促進住宅1万戸を開放、厚労省、年内に」, 2008/12/10, 日本経済新聞,朝刊1面
photo by Maco
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