トリノオリンピックにて――競技が終わった後、観客はその選手をスタンディングオベーションで向かえた。
フィギュアの荒川選手(当時)である。
得点を競う競技で、ルールが変わり、ジャンプ、スピン、スパイラル、ステップ、それぞれにレベルが設けられ、最高レベルのレベル4を如何に取り入れ、プログラムを構成するか…。
特に、ジャンプでのトリプルアクセルは、同じレベル4でも他と比べ、別格に得点が高いのだが、彼女は特にこれが売りではない。代名詞のイナバウアーも得点にはならない。
が、静かにそれぞれのレベルを高め、ジャンプも後半のコンビネーションを設計し、出来うる限りに得点を取りにいった。
結果はご存知のとおりである。2004年の旧採点ルールと2006年の新ルール、トゥーランドット*は2度金メダルをもたらした。
*ネッスンドルマ/誰も寝てはならぬ
さて、モノづくりにおいて、日本の競争力を維持するには、研究開発や生産技術など、多くの部門がレベル4であることが望まれる(強引なもっていき方だなぁ…)。
優秀な研究開発品も、レベルの低い生産工場では駄作であり、逆に、名工が作る製品が誰でも生産できる凡庸な設計では、名工の意味がない。
スマイルカーブから生産行為において利益を抽出しにくくなっている日本では、それほどの高い品質(や独特の品質)でなければ工場は立ち行かないだろう。
そういった意味で、日本独特の姿勢を残すとすれば、キーセクションは、設計部である。
販売部門やマーケティング部門との連携、製品の開発、設計、デザイン、部品、部材の選定から工場導入、原価管理まで、様々な部門と折衝のあるこの部門は、昔は電機メーカーでは花形部署と呼ばれていた。
人材育成には10年かかると言われるほど、業務が広範囲に及んでいる。
ここがレベル4でなければ、本日の話のすべてははじまらず、単なる”なんでも屋”に成り下がる。ここのレベル4は他と比べて別格に得点が高いのである。
それは、売上を高める行為とコストを低減する行為の両方を、経営行為においてかなりの割合を担うからである。
利益の多くを左右すると言っても過言ではないのである。
こうしたキーとなるセクションの教育は、ビジネスのルールの変更に対しても、それに対応できる集団としての期待値が高い。
・・・コンカレントエンジニアリング**の実際として、旗振り役は設計部が多いものです。
**コンカレントエンジニアリング:日経ものづくりの用語集はこちらを参照。
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