既存企業が最も恐れるのは、ローエンド市場から破壊的にハイエンド市場へ侵食してくる場合であるが、その議論の焦点は、ターゲットになる顧客が変わるかどうかである。
それは、(既存企業が)対応可能かどうか、だからである。
もちろん、現在実施されているように、利益をもたらす顧客層を海外へ求めることは良質な経営判断である。
が、自動車業界に限らず、日本の伝統的製造業は、研究開発から生産まで一社で行なわれる、いわゆる“高コスト”な体質であるため、研究開発費用まで捻出するには、相当な利益を計上しなければならない。
また、ローエンド市場が形成されれば、対応できる術を持っていない(持たなくてもいいかもしれないが)。顧客の嗜好が、「50万でも3年乗れればいい」と“乗り捨て自動車感覚”なった場合は、日本に限れば、政治的な参入障壁(車検、税制などの法的な障壁)しか競争力を削ぐ術がない。
武石らは、2001年時において:
(環境対応などの)新しい技術が本格的に実用化されることになれば、自動車そのものの製品アーキテクチャも大幅に変化し、生産システム、企業間システムにも影響を与えずにはおかないだろう。次世代技術の行方と現行のモジュール化の動きが相互に作用しながら、自動車業界の新しいアーキテクチャ(製品、生産、企業間システム)が形成されていくだろう(下の文献より)。とその調査論文を結んでいるが、今はその時となったのである。
このような流れのなかでは、“顧客”がイノベーションの源泉となる比重が高いものである。
そうなれば、顧客要求は変幻自在である。企業は、いろいろ、対応したくなるのが常ではあるが、これまでの議論内容に対応した施策は、日本の主要な自動車メーカーのブランドではない。
対応するなら、別企業が好適だろう(本体からの影響力は極力削いだ形態)。
他国企業のモノマネをしてみても、米国や中国のマネジメント力には劣ってしまう。
ならば、日本はCO2を25%削減する宣言をしたのだから(してしまった?)、古くは、厳しい排ガス規制を乗り切った歴史を、新たな競争軸として再考することも必要ではないだろうか。。。
・・・そうなれば、電池メーカーが自動車製造のイニシアティブを発揮するかもしれませんね。。。あ、トヨタは自動車でなくてもトヨタホームで住宅の高品質低価格化ができますね(トヨタなら住宅業界の規制を…)。
<関連記事>
○モジュール化する自動車産業の今後 1/2
<参考文献、書籍>
○武石彰, 藤本隆宏, 具承桓, 「自動車産業におけるモジュール化 自動車産業におけるモジュール化:製品・生産・調達システムの複合ヒエラルキー」ITMEディスカッションペーパー No.63 (2001年2月)
photo by Maco
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