カンバン方式はやめなさい。2/2

2009年11月25日

品質はこうして落ちていく

t f B! P L
*本記事は、カンバン方式自体の是非を問うものではありません。カンバン方式は種々の生産方式のひとつです。

1からのつづき)その優れたカンバン方式に関して、採用する企業のアプローチを誤ってしまえば、良薬も毒薬に変じてしまう。

そもそも、以前の記事でも触れたが(「永遠の法則はないでしょう。。。」)、こういうことの万能薬は存在しない。当該組織の構成員が脳に汗するしかないものである。

また、「成功するカイゼン、失敗するカイゼン2/2 」でも述べたが、例として、シックスシグマが製造分野だけでなく、ほかの分野に幅広く活用するに耐えうる理由は、あれは、従来の問題解決論を利用しているからである。


さて、自動車産業に限らず、メーカーなどの製造業において、日本企業の多くは、研究開発から販売まで自前である。その企業形態においては、基礎研究、応用研究に始まり、製造、出荷、販売、アフターサービスまで、業務のプロセスは様々である。

研究開発、総務、製造など、その業務は定常作業の量も違えば、「業務プロセスの合理化」の意味も異なる。

そのすべてのプロセスにカンバン方式を採用しようとなると、変な話、「化学、物理分析センターの所有するビーカーは現在使用していないので在庫となっている」という恐ろしい運動まで展開されていく・・・。


当該企業の経営を良質なものに変えていく手段が、本当に“カンバン方式”なのだろうか?また、その方式を理解しているのか?

  • “ジャスト・イン・タイム”が顧客にとってのものであると誤認していたり、自社工場周辺に下請けが集積していない、“デルモデル”と勘違いしているなど―。
  • 様々な製品種×顧客要求に応えるため、システム化を放棄し、カンバンで対応しているのに、その膨大な組合せに対応するシステム化を行なおうとしたり―。
  • 動きながら考えることを日常化することがトヨタ生産方式なのに[1]、(ただ機械のように)考えないでいい方法と履き違えていたり―。
  • 本当に、固定費用の削減で経営状況は改善されるのか?
  • 中間管理職には工程の重箱の隅をつつくことまで把握をせまるのに、赤字の理由は“外部環境悪化の為”と大学生でも言えることしか経営状況を把握できていない幹部がいたり―。
  • 80年代の日本企業を研究した米国企業が一部勘違いした“マニュアル化”と履き違えていたり―。

そもそも、本家のトヨタの幹部が工場を見学して、確認したのだろうか?

  • もしかして、推進しているのはニセモノではないか?
  • こういうことは、当該事業をはじめた時点で決まっているのに、変更する妥当性はあるのか?
  • 固定費用削減する程度、いや、その背景にある従業員のマインドを変革する手段が、本当にカンバン方式なのだろうか?
  • その方式は当該企業の理念に沿うものなのだろうか?



90年代からの15年-超円高、通貨危機、株安-を経験し、生き残ってきた企業において、本当にそれは必要だったのか、十分に吟味されなくてはいけない。

確かに、「カンバン方式」という言葉は、トヨタをはじめとする日本の自動車産業のおかげで、“それを行なっている、導入している”というのは、ステークホルダーに聞こえはいい。

はじめるならば、まず検討チームが必要である。現状を分析し、経営課題に落とし込むチームが先導すべきである。そして、解決のひとつに自前より安い(低コスト)、戦略的に外部が好適(経営戦略室の育成や幹部育成などに外部を利用する)などの場合、外の力を借りればいい。

ただし、当該企業の理念(や考え方)は外れてはならない。これは組織の鉄則である(理念に集まる従業員は多い)。


・・・ものづくりの基本には思想や哲学がなければならない(本田宗一郎)**


<参考>
[1] 「米自動車危機教訓と展望(上)一橋大学名誉教授野中郁次郎氏(経済教室)」, 2009/05/20, 日本経済新聞, 朝刊, 23面.
**本田宗一郎の言は[1]より引用しています。

<関連記事>
カンバン方式はやめなさい。1
結局、トヨタの評価ってどうなのよ!?
永遠の法則はないでしょう。。。
成功するカイゼン、失敗するカイゼン1/2
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