企業には、その独特な精神性が備わっていなければ、持続可能な成長は望めない。
現在のような、四半期重視の米国のモノマネのような経営では、サントリーの青いバラ、東レの炭素繊維、また、シャープの液晶(液晶電卓開発物語)などの技術者達の長期にわたる粘り強い挑戦を必要とする研究成果は望めないだろう。
消費者は、『その企業だからこそ』の製品、サービスに対価を払うものである。
サントリーの創業者である鳥井信治郎がウイスキーの国産化、そして販売にいたる過程は、多くの創業者がそうであったように苦難を極めた。スコットランド以外での醸造を可能にした山崎工場でのウイスキーの国産化、それまでに採用したことのない販売戦略など、十中八九は失敗すると言われたほどである。
この成功は、それまでにブドウ酒(赤玉ポートワイン)やウイスキーを知らなかった大衆に、その飲酒の習慣を創り出したのである。いわゆる大衆相手の事業において、都市型産業の企業経営の原型を築いたといっても過言ではない。
*(以上の2段落は、下の書籍『ケースブック 日本の企業家活動』,Case4 都市型産業のクリエーターの章を参考及び趣旨を掲載。)
さらに、二代目 佐治敬三は、高度成長期の洋酒における:
「洋酒と名がつけばなんぼでも売れた」
という販売実績に危惧し、努力のない企業はやがては傾くと考え、昭和9年に一度撤退したビール事業へ再進出する決断をするのである。
1963年に再進出以来、苦節45年―ついに、2008年12月期に黒字化するのである。
*(以上の2段落は、下の書籍『心に響く名経営者の言葉』,p20-21.を参考)
企業は総合力である。サントリーのウイスキー、ビールが“うまい”からといって上記のような、あまりにもリスクの高い決断が成功するとは限らない。
従業員の生活のことを考えれば、決断しない経営者もいるだろうし、それも正しい選択である。
もちろん、経営的には、サントリーが上場企業でないため、そのような経営行為が行なわれたことが背景にあることは否めない。
ただ、米国にはない“一気通貫型摺りあわせ”(研究開発から販売、アフターサービスまで)の形態を続けるのであれば、鳥井の精神は企業の包容力となり、佐治の決断は、従業員の質を高めるだろう。
ただ言える事は、企業は、リスクを背負い攻めなければ、現状維持は後退なのである。
・・・いつかは誰かがやらねばならないことがある。だからうちがやる。(佐治敬三)
<関連記事>
○モルツ、BOSS、伊右衛門のゆくえは?
○“経営者の言葉”シリーズのリンク集掲載記事はこちら。
○記事中のビールの写真について:
-> photo by S-Hoshino.com (フリー素材屋Hoshino)
<参考文献&サイト>
*本日の記事は以下のサイト、書籍を参考に記載しています。
○「日本の銘酒の父、鳥井信治郎」(サントリーホームページ内)
○「やってみなはれ精神が生み出したフロンティア製品」(サントリーホームページ内)
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