このシリーズ最後の話はTRIZである。
TRIZの課題は比較的考えやすいもので:
第一に、手法の多さ、複雑さ
第二に、便益享受までの時間の長さ
である。
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また、TRIZは、「TRIZをマスターしました。」といえる人は、それを商売にしている人程度で、矛盾解決、将来予測などとにかく手法が多く、自身の用途に応じた部分を習得する程度である。
このことが、習得に時間を要することを著していると思う。結局、ブラックベルトが、さらにどこかでTRIZを習得すれば、この3種の技法―QFD(品質機能展開)、タグチメソッド(実験計画法)、TRIZをマスターしたことになる。
どうして、手法が複雑になるのか?
それは、TRIZは“技術傾向のマイニング”であり、その源泉である特許は何百万件も分析されている。
ほとんどの発明は「誰かがどこかで、似たようなことを実施している」のだから、その傾向は、ある処方箋ごとに分類することが可能になる。とはいうものの、特許の技術自体の種類も膨大なので、技術傾向病院には多くの専門科が設立される。
それが、多くの手法の種類である。
*概要は産業能率大学総合研究所―TRIZが参考になります。
そして、これらの手法一部を習得し、実際に、当該分野で適用していかなければならないことを考えれば、やはり、時間はかかる。優れた手法であることは理解しても、企業は実績主義なので、実績がなければ、導入、継続した手法の実施は行なわないであろう。
コンサルタントは、確かにプロフェッショナルであるが、当該分野のプロフェッショナルではない。当然、共同でのプロジェクトを実施することになるが、多くの企業は、当該企業の情報が漏れることを警戒する(また、この手法以外にも多くの売り込みもある)。
なかなか、進まないものである。
さて、TRIZの今後の焦点で興味深い点は、将来予測技法(TRIZ-DEなど)にその技術価値評価などの価格理論が付与すれば、売り物として完結する点である・・・
が、そう、製造業にお勤めの方は直感的にわかると思うが、特許や技術には一般価格は存在しない。
そのような特許の価格評価の研究は行なわれているが、簡単な話、ある技術の特許があるとして、それは、液晶テレビのキーテクノロジーであるとした時、パナソニック、ソニー、サムソン、シャープの開発担当者がはじき出す価値は同じではないことは言うまでもない。
あくまで、一般論的な話にとどまり、それが何の価格を示すかはわからないだろう。
では、ある特定の企業に限り算出するのであればいいのかというと、価値評価の算出は、結局、当該企業の予測から計算するので、絶対値ではないが、種々の選択肢があったり、技術的な成功確率を加味するなど、パラメーターが多く、その価値評価法に熟練した者がいなければならない。
どこまでをどうするかは、企業の提供する製品・サービスの種類、また、当該企業のやり方によるだろうが、少なくとも、「知財マネジメント」という括りでは、価値評価まではセットである。
弁理士の事務所などでは、企業の研究所のごとく、この分野の新たな結合を研究、開発することは、事務員にとっても新鮮な知見を得られるであろう。
そして、企業が、考える理想解(=顧客に提供する価値)の具体的な技術思想を提供し、もしくは、ある技術課題の解決思想を提供し、それらの価値評価(技術課題解決の場合は当該企業が容易に算出できる)を行なうことをセットで行なうならば…
今後、会計基準がIFRSに移行し、研究価値を研究開発者も把握していくことを考えれば、需要が高い。
*その事情はこちらに関連記事「IFRSが与える影響―研究開発」
・・・「既存の技術を使って、まったく新しい製品を考え出す知恵があれば、ひとつのインダストリーとして立派に成長する(盛田昭夫)*」
―企業人は“製品”の発明がその責務です。
<関連記事>
○QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。①
○QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。②
○QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。③-1
○QFD、TRIZ、タグチメソッドがどうして簡単に使えないのか。③-2
<関連書籍>
*『盛田昭夫語録』小学館文庫, 1999, p53.
○TRIZに関して
『超発明術TRIZシリーズ (1)』日経BP社
*この書籍はシリーズ(6)まであります。
*産業能率大学 総合研究所からも案内がありましたが、現在は絶版です。
*Amazonでも在庫がないようです(2010/2末の時点)。
Darrell Mann著、中川徹監訳『TRIZ 実践と効用 体系的技術革新』創造開発イニシアチブ,2004.
*大阪学院大学の中川徹先生が監訳されています(紹介ページはこちら)
*「TRIZホームページ」―TRIZは、こういうWeb上で情報交換することの方が一般的で、日本では、中川先生が運営されているページのことです。まずは、このサイトを参考にしてください。
*大手書店で販売されている書籍の多くは、管理者向けで実践できるものではありません(TRIZはとても一冊では説明できない)。
*TRIZ実践者が納得できる数少ない書籍です。
○QFDに関して
QFD3部作はこちらです。
・赤尾, 『品質展開入門 (品質機能展開活用マニュアル)』,日科技連出版社, 1990.
・赤尾ら,『品質展開法(1) 品質機能展開活用マニュアル第2巻』, 日科技連出版社, 1990.
・赤尾ら,『品質展開法(2) 品質機能展開活用マニュアル第3巻』, 日科技連出版社, 1994.
○タグチメソッド(≒実験計画法)について
これについては、日本規格協会からの書籍が自習に適しています。
横山,『品質設計のための実験計画法 (品質工学講座)』, 日本規格協会, 1988.
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