第51回(2010年)品質月間 :「品質の原点にかえり 先駆者の知恵に学ぶ」

2010年9月22日

品質はこうして落ちていく 品質月間

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歴史ある“品質月間”も昨年50回の節目を向かえ、本年(2010年)からは、「新たな第1回目からのスタートを切る」(委員長の大藤先生による「品質月間を迎えて」より)という点から、以下のテーマが決定された。
(参考)「品質月間とは」(日本科学技術連盟HPより)


“品質の原点にかえり 先駆者の知恵に学ぶ”


この背景には、近年の経営環境の変化の激しさが伺われる。主旨では―

環境の変化が一層激しい今こそ、様々な経営課題や職場の問題を解決していくために、「品質」という原点を忘れずに、先駆者が培ってきた努力や知恵をしっかりと引継ぎ、さらにあらたな知恵と工夫、価値を付加することが大切ではないでしょうか。
-> 「テーマ趣旨説明」より。

と表明されている。

さて、1980年代、日本の製品=高品質であり、Made in Japanはある種のブランドとなっていた。同時に、敗戦からの復興が模範的であったこともあり、種々の事柄が研究の対象であった。

ひとつに1982年の「QCサークルの効用と限界」として発表された中で、QCサークルの成功要因として―
  • 労働者は聡明で、高い教育を受けている。
  • 経営者は労働側を信頼して、価格データや重要情報をすすんで提供し、彼らのアイデアを実行に移すための権限を与えてきた。
  • 労働側は快く、かつ熱心に協力する。
をあげ、効用の多くの源泉を、「従業員と中間管理層から自主的かつ草の根の運動」として出現し、日科技連が普及に大きな貢献をしたものである、としている。

*ウォールストリート・ジャーナル、1982年3月29日付のコラム、大前研一による。
邦訳は、『戦略論―戦略コンセプトの原点』, ダイヤモンド社, 2007, pp264-268に掲載されています。


おそらく、日本の製造業では、高品質を目指すことに異論を挟むことはない。


ただ、経営的側面から言えば、“高品質が利益を生む”に収斂されてきた“品質”への考え方は、敗戦からの復興が示してきたように、“安く仕入れて、加工し(=付加価値をつけて)高く売る”、加工貿易立国の姿であり、現在では、その姿は薄れてきている。


先駆者の知恵に学ぶべきは、(利益創出の)戦略的意思決定をどのように行ってきたかであり、品質を高めればいいという短絡的なものではないだろう。


・・・現在の経営環境での高品質化の焦点は、「製品・サービス品質」というより、「経営品質」ではないでしょうか。



<関連記事>
2009年の品質月間は第50回の節目である。
「QCサークルの効用と限界」より。

<関連サイト>
QC, TQC、そしてTQM
工程能力分析
FMEA
QFD:品質機能展開
特性要因図-Cause and effect diagram
狩野モデル-品質とは

<各種用語集サイト>
MOT用語集
経営基礎用語集

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