“選択と集中”―言うは易いが、実行は難しい。
代表的には、成長性の高い事業を選択し、儲からない事業からは撤退することであるが、別しては、例えば、将来性を鑑み、研究や開発に集中し、それらの案件を精査していくこともそうであろう。
これらの悩みは、一見、事業や研究内容が異なっていても、底流のバックグラウンドが同じであり、撤退することは、将来の資産まで手放してしまう可能性があるなどもあり(結果、競合企業に人材が流れること懸念)、おそらくは、社内での事業に精通しているか*、長年の付き合いのあるコンサルタントでなければ、精査できないだろう。
* 社長の任命プロセスがしっかりしていることも大切である(安易に業績のいい事業部のトップだという理由での任命は、巨大組織での運営にあたることへのライセンスではない)。
この問題を抱える多くは、規模の大きな企業、多くの事業を行っている企業である。
日立製作所は日本最大の総合電機メーカーであり、連結従業員数は約36万人(2010年3月末日時点)に及ぶ**。
** 日立製作所HP「企業情報」より。尚、各種報道機関で報道されているように、パナソニックによるパナソニック電工、三洋電機の完全子会社化、さらに、2012年1月の組織再編を経ると、日立より規模の大きなの巨大企業となる見込みである(が再編に伴う人員削減もあり実際は微妙ですが・・・)。
今、「選択と集中」の絶好のケースが、この巨大企業、日立製作所及びその系列企業である。
一般に、選択と集中を考える企業の悩みは、「コングロマリットディスカウント(多角化、複合化によりシナジーの逆の現象が起きていること)」***である。
*** 「コングロマリットディスカウント」―exBuzzwordsより。
-> http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_1593.html
これに対して、日立製作所は、近年の親子上場の解消など(まだまだ始まったばかりだが)着々と進めている。
(原子力分野は、東芝も同様であるが事業の比率が低いことと原発などの保守・メンテナンスが中心的なので東芝自体を揺るがすことないと思われる。いずれにせよ、日立、東芝のパートナーであるGE、ウェスティングハウスを前に出すのだろうか?)
このクラスの企業の仕事は、ジャック・ウェルチが行った米国のGEの如く、日本でトップ、世界でトップ3の事業を育て、収益を得ていくことである。それができない限り、この母体を維持することが難しい。
母体を維持する実際の数字で言えば、GEやシーメンスなどは営業利益率が5%を越えている(7~10%)。この5%は、多くの日本の電機メーカーの目標であるが、最近は達することが困難になりつつある。
実際、営業利益率5%が達していない企業は、外からは一見利益が上がっているように思うが、内情は火の車である。
・何度も繰り返される希望退職
・コスト削減の前倒し
・脅迫めいた“緊急プロジェクト”
などなど、「貧すれば鈍する」を絵に描いたように経営に品性を欠いてくる。
なので、このような巨大企業でのプロセスは、見込みが薄ければ手放し、グループにとどまるのであれば、成長の見込みのある事業を手がけている、もしくは天下を取らなくてはならない、いずれにしても過酷な競争となる。
・・・現場での技術力、人材を十分に具えている当該企業グループ。だが、まだまだ進めていかなくてはならない選択と集中。世界で戦うことが如何に大変かのお手本です。
<参考、以前の記事など>
○「日立は再生できるのか!?」
○「日立製作所―社会イノベーション企業へ」
○大前研一ライブ#579
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