社会人MBA-技術者編

October 31, 2010

“変化”と“変更”、そして“変革”

変化―ある性質、状態などが他の性質や状態に変わること。
変更―変え改めること。
変革―社会、制度などを変え改めること。また、変わり改まること。
(『現代国語例解辞典』, 小学館, 1985より。)

そして、イノベーションとは、基本的には<何かを新しくする>ことである。“変化”とともに述べられることが多い。

製造業では、製品をはじめ、製造、納入など、各種の“仕様”が存在し、その手続きのひとつに“変更”がある。いわば、期間限定のお試し期間的な目的でこの手続きは認められる。
(「仕様を変更する」など)

なので、「変わる」ことを意味する中では、結構、意味合いが軽く使われる。


厄介なのは、“イノベーション”を“変更”的に捉え、経営、運営に活かそうとすることである(軽く使うことを意味しています)。


例えば、とにかく何かを変えなくてはならないので、無理に製品、サービスの改良を行おうとする(擬似改良)などは代表的である。


また、逆に、イノベーションを劇的な変化=変革、の様に捉え、少々の変化では納得しない場合もある。


こういった例は、もはやイノベーションは、その言葉が利用されているだけである。


こういった議論で大切なことは、「何を何にどのように変えるか*」である。
*Robert E. Stein 著, 川辺恭寛ほか訳, 『TOCハンドブック―制約条件の理論』,日刊工業新聞社, 2000, p2よりTOC思考プロセスの趣意)


確かに、あらゆる変化に慣れてきた現代では、短期間に、少ない労力で、大きな成果を求めてしまう嫌いはある。

だが、それは、かつて日本が嫌ってきた四半期業績重視米国型経営(ながっ!)であって、突き詰めていけば、リストラが最もその期待に応える運営である。

長期的な視点では、それは慎まなければならないだろう。


・・・ともあれ、一番最初にするべきことは、ビジョンを示すことです。でなければ、構成員はどの方向へ変化するのかわかりません。


<参考書籍>



photo by Maco
* ジビッツ―クロックスオンラインショップはこちら

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October 27, 2010

「日本企業は日本を捨てたのか」, 東レ経営研究所

「とうとう日本企業が日本を捨て始めた」とセンセーショナルにとらえるのは必ずしくも正しくない。

確かに、日本企業の海外シフトは続いている。その主要因が、円高によるものであれば、おそらくは、たとえ、円安になろうとも、日本国内には戻ってこないであろう。


やはり、背景には――
「新興国市場が先進国市場に代わってビジネスの主戦場になったという環境変化」
と述べられているような変化があったことも事実である。


海外の優れた人材、企業の国内への呼び込み――この分野は、日本が一番苦手な部分かもしれませんね。


(ご紹介まで)

<参照元>
○「日本企業は日本を捨てたのか」, 東レ経営研究所, 2010年10月


photo by Maco

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October 20, 2010

「2030年に向けた日本の経済発展戦略:今求められる日本の長期国家戦略」, 野村総合研究所

日本経済を長期で展望すると、内需主導型の経済発展は困難であり、アジアを中心とした外需の取り込みを模索しなければならない。「要約」より。

レポートは2030年への長期展望である。

「2030年においても、技術力が日本の競争力にとって重要な要素であることに変わりはない。しかし、技術力のみに頼った輸出増加に限界がある(p33)。」

であるように、輸出を増加させることも述べている。

確かに、日本国内での成長分野は限られているし、残念ながら、経済を牽引できるほどではない。

従って、貯蓄性向も高まってしまう(もちろん政治的な不安や国民の特性もあります)。


ビジネスでは、成長している国や地域、分野へ参入することは鉄則であるが、企業では、それを任せることの出来る“人”がなかなかいない。


・・・企業現場でのスタートは“人”からですね。



<参照元>
○「2030年に向けた日本の経済発展戦略:今求められる日本の長期国家戦略」, 野村総合研究所, 2010年10月

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October 17, 2010

組織、教育、観光バス

企業の最適構成員数――などは業種、構成員の能力など、決定のしようがないことは言うまでもない。

しかしながら、一人のトップの限界人数は大よそ決まっている。

もちろん、(グループを含み日本で最も従業員数の多い)日立のような巨大企業から、数人の企業までその人数は様々であり、また、実際に運営されているので“決まっている”というのは言い過ぎかもしれないが――


トップが、「その従業員の人柄、嗜好、また家族構成などまで把握し、深く付き合いながら企業を運営していく」と定義すれば、その限界人数は、大よそ“観光バス一台分”程度である(らしい)*。

*数年前に大学での講演で、ある企業の元幹部の方が松下幸之助さんを回顧しながら語った内容で、書籍、雑誌での出所は本ブログ運営者は把握しておりません。


それ以上大きな組織では、一人の管理者が、組織構成員全員の評価、例えば、人事評価を行うことは極めて困難なタスクとなる。

とはいえ、組織は、当該組織の目標を達成していかなければならないので、母体が大きくなればなるほど、後継の人材を育成していくことは重要な議題となる。


では、どの程度の育成費が必要なのか?


GEやサムスンでは、大よそ売上高の約1%であり、独自の方法で時間をかけて、人材を育成する(残念ながら日本企業は0.1%程度である)。


観光バス一台分では、大よそのパーソナリティを把握しているので、変化するビジネス環境へも、『あぁ、これは○○さん』と対応できる(トップが人事を指名するという点で)。

が、組織が大きくなれば(いや観光バス一台分以上)、より教育も費用をかけて熱心に行わなくてはならないことは、GE、サムスンの例など、グローバルな企業では、意思決定の内容そのものが企業存続の生命線だからである。


そう、そのような人事、教育システムがないことのほうが致命的であろう。



・・・結局、教育費の盲目的な削減は、将来の利益からの借金に過ぎません。



<参考までに>
組織理論―マクロ組織論
社会集団としての組織の構造やデザインを問題にしており、アプローチは社会学的である。組織目標を達成する上で、どのような組織構造にするかなどを取り扱う。

組織構造の理解―有機的組織と機械的組織とは?
機能的か、逆機能的かは、組織を取り巻く環境により左右される


○企業の教育費のくだりは以下より。

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October 13, 2010

「日本企業の競争力低下要因を探る~研究開発の視点からみた問題と課題」, みずほ総合研究所

研究開発投資が収益に結びにくい、いわゆる効率が低い。

このテーマは、研究開発を行う企業では、近年、大きな課題であり続けている。

背景には、本レポートでは(趣意)―

「日本の得意とするカイゼン=プロセス・イノベーションにおいて、欧米企業が製品のモジュール化や新興国を巻き込んだ製造モデルを構築したことにより、その価値が低下している。」

と述べている。

特に、技術に関して、何も真っ向勝負でなくていいので、日本の従業員のカイゼン気質を身に付けることが困難であれば、他の方法で勝負すればいいのである。

やはり、研究開発を促進することそのもの、というよりそれらを収益に結びつけることが肝要であり、MOT人材の育成などを提唱している。


ご参考まで。


<参照元>
日本企業の競争力低下要因を探る~研究開発の視点からみた問題と課題
みずほ総合研究所, 2010年9月29日

<参考までに>
榊原清則, 辻本将晴, 「日本企業の研究開発の効率性はなぜ低下したのか」, ESRI Discussion Paper Series No.47, 2003年6月

榊原清則, 「展望論文:日本の技術経営-研究開発は経営成果と結びついているか」, 技術革新型企業創生プロジェクト(ルネッサンスプロジェクト), ディスカッションペーパー, 03-01, 2003年10月

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October 10, 2010

生産現場での混在―プッシュ or プル?

本日の記事は、現場に近いものです。

*  *  *  *  *

生産方式といえば、それはもう・・・各企業の現場を監督、統括する担当者は、ビジネス・スクールで非製造業者出身の生徒に講義が可能な程の知識と経験を有していることだろう。

それほど、現代ではこの仕事は複雑化し、難易度は高くなっている。

とはいうものの、大まかな流れとしては、プッシュ、プルの2方式が考え易い例であり、恐らくは、これらに収斂すると思う。

    プル方式―下流工程が部品を必要とするときだけ、上流工程はその必要量分生産、というものでJIT(ジャストインタイム生産システム:Wikipedia)がその説明に十分である*。
    プッシュ方式ORwikiでの解説)は、上流工程で部品加工が終わったらそれを下流へ渡していくもので― 「製品の生産計画に合わせて、必要な部材や材料などの所要量を計算し、製品の生産日程に間に合うように、部品の生産日程や材料の調達日程を決定する。」** という方式である。
注)*, **:徳山博于, 熊本和浩, 曹徳弼, 『生産マネジメント』, 朝倉書店, 2002, p68-69.

もちろん、どちらが正解ということはない。それは、製品とのマッチングであるが。。。

とりわけ、80年代の円高(プラザ合意)、後の円の最高値、株安、アジア危機など、幾多の苦難を乗り越えてきた製造業の多くは、近年の経営環境に対応しているうちに、一見、プル型を志向したようではあるが、本質的にはプッシュ型のままであることが多い。

上記のプル、プッシュの記載を読まれて―

『ん?ウチは、プッシュのように計画は立てているが・・・プル方式を採用している。』

と思われれば・・・それは、混乱している状況である。


*  *  *  *  *

プッシュは、需要予測が容易であればパワフルな方法であり、従来から使用されてきたものである。

その方式が染み付いた現場では、近年の多品種化における需要(=生産数)の不安定化に対し間接部門との協業で、どの品種でも採用可能な“仕掛り”、いわゆるジョーカーを考案しようとする

オペレーターは、生産効率を高める、つまり、単位時間当たりの生産数を歩留まりとともに高めていくことが、メインワークである。

結局、少ない労力で、所定の品質を達成し(大抵は高品質)、稼働率、歩留まりを高く維持していくことに主眼が置かれ、QCサークルなどでは、そのようなキーワードが目標とされる。


これに対し、カンバン方式に代表されるプル方式は、逆で、必要な時に、必要なものを、必要量だけ生産することを目的としている。


大切なのは、リードタイムである。

顧客がカンバンを流してから(=発注してから)、何日で手元に製品が届くのか?が重要であり、それが10日で届けることになっているのであれば、9日で届ける必要はない。10日が正解なのである。

関係各社がクラスター化していれば、組立業者はパワフルな生産方式となる。


意図的であれ、無意図的であれ、このように異なる方式であるプッシュ、プルが混在する現場では、オペレータは混乱しており、結果的に、当該企業は資源を浪費するばかりである。

結局、両方式では、工場での生産に行き着くまでの業務や運営が全く異なるので、例えば、在庫の考え方にしても、考え方が統一できない***。

注)***:(最小)最適在庫を模索するのか(主にプッシュ)、低ければ低いほどいいのか(望小特性なのか、プル)。


オペレーターはどうだろうか?

プルの場合は、生産ラインをストップする権利が与えられる。これは経営の観点からは、大きな責任(≒お金)を任せている。プッシュの場合は伝統的にQC的な背景がある。

共に、高度な従業員の教育を頼りにしている。

だが、製品により異なるであろうが、いわゆる従事する流動性の高い従業員と正社員の比率は、これらの方式では異なるはずである。そうだとすれば、結果的に、その周辺部門の構成も異なるであろう。


だから、どちらから、どちらへ移行するのも大変な経営行為であるし、その過程で生じる問題、課題を、混在期のものと把握できずに解決の方向を間違え、いたずらに時間が経っていくことは、資源を浪費するばかりである。


・・・単なる“混在”・・・ていうオチもあるもんです。これでは、どちらのいい所も発揮できません。何が正しいかわかりませんから。。。

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October 6, 2010

「第2回全国イノベーション調査」, 科学技術政策研究所

この調査は、科学技術政策研究所が、民間企業のイノベーション活動に関する調査の結果をまとめたもので、2006-2008年度を対象期間にしている。

さて、イノベーションの考え方のひとつに、プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーションの区別がある。
*イノベーションの概念についてはこちらを参照

それぞれは-
プロダクト・イノベーション

    新製品あるいは新サービスの市場への投入(注:当該企業にとっての新しいこと)
プロセス・イノベーション
    新プロセスの導入または既存プロセスの改良
また、企業のイノベーション活動を「革新的な製品・サービスまたは業務の改善を目的としたプロセスの開発に必要とされる設計、研究開発、市場調査などの取り組み」と定義する。[1]

このプロダクト/プロセス・イノベーションの実現は、いずれも30%強の企業が実現している。

さらに成果として、この実現により、プロダクト/プロセスいずれも、概ねシェアを拡大、経費の削減を達成している。


他の組織との関係では、
○海外の組織と協力した企業の割合が低い
○合併した企業の方がイノベーションの実現が高い
などが報告されている。


紹介まで。



<参照元>
○NISTEP REPORT No.144,「第2回全国イノベーション調査
科学技術政策研究所、2010年9月
[1]「国際比較を通じた我が国のイノベーションの現状」 科学技術政策研究所、2010年9月

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October 3, 2010

『経済成長なき社会発展は可能か?』, セルジュ・ラトゥーシュ

近代日本を考える上で、“西欧追随”はひとつの発展への路線であった。

企業においても、安かろう、悪かろうの製造を払拭する“カイゼン”へ発展し、また、そのハード面でも西欧を模倣してきた。

そういった“お手本”とも言うべき先進諸国は、すでに経済成長率において、優等生ではなくなってきた。本書は、「脱経済成長」に関する書籍である。


1部では「ポスト開発」を認識することから脱経済成長を見据え、2部では「脱成長」を進める、また社会の発展する方向を吟味している。

↑↑↑↑↑ 書籍紹介はこれまで。 ↑↑↑↑↑

こういった最近の書籍で、思い出されるのは、企業で言えば、戦略、組織などのハード面に対したソフトな面である*。

*以前の“ソフト面”についての記事
ビジネスは結果か?①
ビジネスは結果か?②
ビジネスは結果か?③-了-

少し遡ると、ソフト・パワーについて、ハーバード大のナイ教授(当時)は以下のように著した。
ソフト・パワーとは強制や報酬ではなく、魅力によって望む結果を得る能力である。ソフト・パワーは国の文化、政治的な理想、政策の魅力によって生まれる。」(p10)
ソフト・パワー(wikipedia):国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことである。

企業において考えると、グローバル化が進み、国家の枠組みなどが、その発展において重要な意味をなす場面は減少しつつある。

企業組織の戦略、組織などのハードなパワーからソフトなパワーが利益を創出する源泉となりつつあることは否めないことである。


さて-
シュムペーターは、経済の発展について-

「経済発展の本質は、以前には定められた静態的用途に充てられていた生産手段が、この経路から引き抜かれ、新しい目的に役立つように転用されることにある。この過程を、われわれは、新結合の遂行と呼ぶ。」と、経済発展の本質として、新結合(イノベーション)を述べている。(注1)

(注1)根井雅弘,『シュンペーター―企業者精神・新結合・創造的破壊とは何か』, 講談社, 2001.
詳細は、J.A. シュムペーター, 塩野谷祐一, 東畑精一, 中山伊知郎訳, 『経済発展の理論―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上〉 (岩波文庫)』, 岩波文庫, 1977, pp182-183.

こちらのサイトでイノベーションに関する簡単な説明を掲載しています。


ドラッカーの言葉を借りれば、「意識的かつ組織的に変化を探すこと」(注2)である。

(注2)P・F・ドラッカー,上田惇生訳, 『新訳 イノベーションと起業家精神〈上〉その原理と方法 (ドラッカー選書)』, ダイヤモンド社, 1997, p51.


多くの企業は、これらの結合を成し遂げ、変化してきたのであるが、近年の経済危機の反省からは、「虚偽の非有機的な結合を、殊に金銭と相つらなる結合を打毀(うちこわ)す」(注3)ことも、その“変化”の考慮に入れなければならなくなってきている。

(注3)D・H・ロレンス, 福田恒存 訳 『現代人は愛しうるか [筑摩叢書 47]』, 筑摩書房 , 1965, p188, 文中のかなは、ブログ運営者による。


政府、政策の単位は主に国家である。

英キャメロン首相の“大きな社会(ビッグソサエティー)”-
これは、「大きな政府(ビッグガバメント)」ではなく社会政策の多くを、慈善団体や社会的起業家などにゆだねる構想である。(注4)

この構想もひとつの示唆であろう。

(注4)(日経BPネットコラム,「英キャメロン首相の「大きな社会」構想に注目」,大前研一, 2010年08月04日より趣意。)


だが、企業の単位は、国家を超えている。そのような社会傾向であったとしても成長しなければならないし、変化し続けなくてはならない。

消費者は、最も価値ある(と思われる)製品・サービスを望み、それ以外は最安値の対価しか払わない。

企業の内側から発せられる製品・サービスの価値は、その組織の構成員によるものである。

その創造性を育み、モノにしていくことは、少々せっかちなハード面からは嫌われるであろうが、新たな結合、変化の方向性を模索する試行錯誤も成功への大切な儀式である。

おそらく、企業の論理も変化していくであろうが・・・


・・・(一般論として)企業が儲けなければならないことに変わりはありません。

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