(追記) データ分析、AIのシックシグマへの影響に関する記事を追加しました(2024.1.13)。
データを取得した次に行なうことは効果の算出である。ここまでの流れは通常行なわれているカイゼン運動と何ら変わりはない。
しかしながら、シックスシグマを自社へ定着させる、もしくは、より昇華させる概念がCOPQ(=Cost of Poor Quality)と呼ばれるものであり、企業実務をより広い視野で行ないたい従業員、幹部候補生を輩出したい経営者にとっては必ず理解しなければならない概念である。
* * * *
COPQ(Cost of Poor Quality)は劣悪なコストが生むコストの意味であり、図がその概念をよく説明している。図は氷山を例に、再検査やリワークによる人件費など目に見えるコストと、設計遅延や製品、サービスの品質の劣悪さによる顧客ロイヤリティの喪失など目に見えないコストを分類し、目に見えないコストの方が大きな問題である場合が多く、内在するCOPQを最小にするため、指標に用いられている。
* * * *
例えば、私のプロジェクトでいうと、生産効率を向上させることが目的であり、ボトルネックを解消することで、一日に80単位の生産を85単位に向上させることができるとする。このとき、通常であれば、1単位生産にかかるコスト(=加工費+人件費+原価など)が計上され、80単位→85単位なので5単位分が効果費用となる、というのは、図における氷山の頂上部の部分である。
しかしながら、COPQではさらに「目に見えないコスト」を算出する。この方法は企業により異なるが、具体的には以下の例などがそうである。
○その生産能力が原因で、受注を断ったことが年に2回あった。
○研究開発人員が生産能力維持のために、生産行為を行なっている。
○生産能力同等(機械の稼働率という観点で)の生産が出来ているが、実は再生産が10%であるが、再生産品の品質は低下しており、年に数件クレームがある。
○検査でNGとなった製品は廃棄されているが、廃棄費用が大きい材料(レアメタルでもよい)が含まれているため、その材料のみを取り出す外注を出している。
など、経営的視点から見れば、「それは、目に見えるよ」と言われるかもしれないが、実務の現場はそうではない。これらのことは見えていない。
また、種々の商品を展開する企業において、COPQは製品により異なってくる。COPQは効果というお金で表現されるため、大きなほうが魅力的に感じるかもしれないが、実は、この運動はCOPQを小さくすることが目的なのである。この指標の評価は大きい、小さいではなく、そのプロジェクトが解決しようとしているロジックを評価するべきなのである。
例えば、経営者の判断は、本記事のプロジェクトの場合、COPQが小さいので、企業の主活動の中で生産する行為には、利益の源泉は残っていないと判断し、その製品におけるシックスシグマを教育目的の強い運動に転換、資源の投入を研究・開発、サービスなどに重点的に行なう、などである。
このように、横の連携をクロスファンクショナルに、上下をブラックベルトを通じて円滑にコミュニケーションをとることを謳い文句にするシックスシグマは、上記のように、そうしなければ活動が成り立たないからなのである。
これらのことは、硬直した組織改善を狙う経営者にとっても魅力的な特性である。
経理を訪ね、現場を訪ね、数字と格闘し、やれやれ、やっとのことでCOPQを算出したプロジェクトは順調に始動し始めており、次なる課題は、チームの目標を明確にすることであった。(つづく)
図に関して(COPQの概念)
(出所)Joseph A De Feo, Zion Bar-El,”Creating strategic change more efficiently with a new Design for Six Sigma process”, Journal of Change Management, 3, pp60-80, 2002, p75, fig10 を参考に作成。
(「シックスシグマ⑥(COPQを算出せよ!)」了)
*ブログ中の図はクリックすれば、拡大されます。
*本ブログ記事の下「Labels」の「シックスシグマ」をクリックすると、シックスシグマに関する記事が一括掲載されます。
データを取得した次に行なうことは効果の算出である。ここまでの流れは通常行なわれているカイゼン運動と何ら変わりはない。
しかしながら、シックスシグマを自社へ定着させる、もしくは、より昇華させる概念がCOPQ(=Cost of Poor Quality)と呼ばれるものであり、企業実務をより広い視野で行ないたい従業員、幹部候補生を輩出したい経営者にとっては必ず理解しなければならない概念である。
* * * *
COPQ(Cost of Poor Quality)は劣悪なコストが生むコストの意味であり、図がその概念をよく説明している。図は氷山を例に、再検査やリワークによる人件費など目に見えるコストと、設計遅延や製品、サービスの品質の劣悪さによる顧客ロイヤリティの喪失など目に見えないコストを分類し、目に見えないコストの方が大きな問題である場合が多く、内在するCOPQを最小にするため、指標に用いられている。
* * * *
例えば、私のプロジェクトでいうと、生産効率を向上させることが目的であり、ボトルネックを解消することで、一日に80単位の生産を85単位に向上させることができるとする。このとき、通常であれば、1単位生産にかかるコスト(=加工費+人件費+原価など)が計上され、80単位→85単位なので5単位分が効果費用となる、というのは、図における氷山の頂上部の部分である。
しかしながら、COPQではさらに「目に見えないコスト」を算出する。この方法は企業により異なるが、具体的には以下の例などがそうである。
○その生産能力が原因で、受注を断ったことが年に2回あった。
○研究開発人員が生産能力維持のために、生産行為を行なっている。
○生産能力同等(機械の稼働率という観点で)の生産が出来ているが、実は再生産が10%であるが、再生産品の品質は低下しており、年に数件クレームがある。
○検査でNGとなった製品は廃棄されているが、廃棄費用が大きい材料(レアメタルでもよい)が含まれているため、その材料のみを取り出す外注を出している。
など、経営的視点から見れば、「それは、目に見えるよ」と言われるかもしれないが、実務の現場はそうではない。これらのことは見えていない。
また、種々の商品を展開する企業において、COPQは製品により異なってくる。COPQは効果というお金で表現されるため、大きなほうが魅力的に感じるかもしれないが、実は、この運動はCOPQを小さくすることが目的なのである。この指標の評価は大きい、小さいではなく、そのプロジェクトが解決しようとしているロジックを評価するべきなのである。
例えば、経営者の判断は、本記事のプロジェクトの場合、COPQが小さいので、企業の主活動の中で生産する行為には、利益の源泉は残っていないと判断し、その製品におけるシックスシグマを教育目的の強い運動に転換、資源の投入を研究・開発、サービスなどに重点的に行なう、などである。
このように、横の連携をクロスファンクショナルに、上下をブラックベルトを通じて円滑にコミュニケーションをとることを謳い文句にするシックスシグマは、上記のように、そうしなければ活動が成り立たないからなのである。
これらのことは、硬直した組織改善を狙う経営者にとっても魅力的な特性である。
経理を訪ね、現場を訪ね、数字と格闘し、やれやれ、やっとのことでCOPQを算出したプロジェクトは順調に始動し始めており、次なる課題は、チームの目標を明確にすることであった。(つづく)
図に関して(COPQの概念)
(出所)Joseph A De Feo, Zion Bar-El,”Creating strategic change more efficiently with a new Design for Six Sigma process”, Journal of Change Management, 3, pp60-80, 2002, p75, fig10 を参考に作成。
(「シックスシグマ⑥(COPQを算出せよ!)」了)
*ブログ中の図はクリックすれば、拡大されます。
*本ブログ記事の下「Labels」の「シックスシグマ」をクリックすると、シックスシグマに関する記事が一括掲載されます。
0 件のコメント:
コメントを投稿