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結論から言うと、iPodが一億台売れる理由は、「一億台生産できた」からである。禅問答でもなんでもなく、あれを、日系企業で生産していたら・・・中国系企業で生産していたら・・・
○生産が追いついただろうか?
○生産段階においてiPod nanoのように小型化が可能であっただろうか?
○あのリニューアル頻度に対応できたであろうか?
そういった製造部門に特化して多くの企業を顧客とするのが、台湾系企業のHon Hai社(鴻海精密工業)である。
任天堂(WiiやニンテンドーDS)、ソニー(PSP、PS2)、Apple社(iPod nano、PCの製造)、HP社(PCの一部設計、製造)、Lenovo社(PCの製造など)、Nokia社(携帯電話の一部設計と製造など)、Motorola社(携帯電話の一部設計と製造など)・・・
多くの企業が利益率が低い、または付加価値を創出しにくいスマイルカーブ(日経エレクトロニクス用語)のボトム-加工、組立、量産または販売-を委託している。
そうである。Hon Hai社(鴻海精密工業)では、スマイルカーブで利益率の高い、研究開発、アフターサービス、ブランド構築などの川上、川下では競争力を持っていない。その代わりに、販売管理費は日系大手に比して約1/4~1/5であり、かつ、携帯電話の筐体を例にとると、そのリードタイムは70-75%に短縮され、特に筐体用金型の準備では1/4程度まで圧縮されている。
日系企業は、川上から川下まで一気通貫であり、主に上場企業は長年にわたりそのブランドを構築してきた。その間に企業も成長し、規模も拡大した。これも経営の考え方であるが、Hon Hai社(鴻海精密工業)ほどの時価総額になると、M&Aにより当該企業に足りない部分を吸収し、ブランドや研究開発能力を買うことも可能なのである。
「長続きはしない」と指摘もされるが、東アジアの事情は欧米の経営者、学者にはわかりにくい(当然、欧米、特に欧州の(文化的な面も含む)特殊事情をアジアで把握できないのと同様)。
素材、部品の生産など研究開発に優れる日系企業と安い賃金の中国工場、そして、単に安いだけでなく製造部門に特化にした台湾系企業。そこには、すでに高齢ではあるが日本語が話せる経営者、国語としての中国語(標準語)、次の世代の英語力、そのマッチングは、スマイルカーブの効率的フロンティアを実現したといっても良い。
さらに、当該諸国の輸出入の貿易統計を鑑みると、「made in Asia(or E Asia)」なのである。
この経営は日本的企業では受け入れがたい嫌いがある。販売する製品にもよるが、Apple社の例で言えば、彼らのコンセプトの質の高さと売れるまでの忍耐より、Hon Hai社(鴻海精密工業)を選択するところに凄みがあることも事実である。
これまで、スマイルカーブのボトムを解消しようと多くの企業が、総経理を日本人に、中国へ進出したが、そこでは求める品質は実現できなかった。そこで、日本国内で生産方式のカイゼンを試みたり、非正社員化を進めたりしてはいるが、なかなか利益を享受できないでいる。
そういったなか、任天堂、ソニーの競合する商品が同じ企業で生産されていることは、もはや問題ではないのかもしれない(Hon Hai社では厳重に守秘義務を遵守しています)。
日本の製造業の経営は大きな転換期にある。Hon Hai社(鴻海精密工業)の例から「注力すべきは川上、川下である」などとは必ずしもいえない。製造する製品により最適地の営業活動を展開しなければならなくなってきているように、国境に意味はなくなり、世界は小さくなっている、ということである。
参考記事
「鴻海は敵か味方か」,日経エレクトロニクス, 2006/7/31号,pp91-110
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