イノベーション・・・常に変化し、企業が持続的に利益を挙げていくことは非常に困難な時代となった。これまで、QC、TQC、QFD、タグチメソッド、シックスシグマ、TRIZ、TOC、カンバン方式・・・種々の手法がその効果を発揮してきた。運営についても、3Mの15%ルール、P&GのC&D、社内ベンチャー・・・種々の運営がその効果を挙げている。
これまで、電機で開発設計に携わり、シックスシグマのブラックベルトとして価値連鎖の購買から販売まで、また、支援活動の技術開発を含め、30近いプロジェクトを担当してきた。ビジネス・スクールではMOTを専攻し、戦後からの種々の手法の歴史についても研究した。また、明治からの企業家の特性についても学んできた。
その経験から、開発方式についてタイトルの方式が有効であると感じ始めている。
生産方式では、トヨタのカンバン方式に似ているが、カンバン方式の「カンバン」は「現金」と考えるが、開発のそれは「約束手形」と考える。
さて、カンバン方式におけるカンバンの枚数削減は在庫削減に繋がる。カード・メソッドのカードの枚数は開発期間短縮に繋がる。納期から逆算した試行回数=カードの枚数である。これは、上司(や幹部)から受け取る約束手形である。
例えば、カードの枚数を5枚と仮定する。最後は導入直前の最適化実施カードである。最初は模索段階であろう。模索→試作→最適化の流れになるので、最初と最後の間に何枚入るかで、技術の完成度、経営効果が決定される。この場合は3回となる。
通常、開発は商品を具現化するまで何回の試行が可能か、大よそ逆算することが出来る。技術者というものは、終わりのない開発に帰納的に情報を集約していくので、どこかで区切りをつけなくては、つまり、ある程度の商品・サービスでも導入しなければ、経営効果が望めない。かといって、天才技術者を抱える企業の数は奇跡を起こすほど小さい確率である。
カードの枚数を限定することで、「終わりのない開発」から「限定された開発」に変えることが出来る。おそらく、当然のことと考えるかもしれないが、そう考えた方は技術者である確率が低い。技術者は、限定されなければ、無限に開発行為を続けてしまう嫌いがあるからだ。それは、「プライド」と呼ばれるものかもしれない。経営効果にはそれは必要ない。これは、技術者の意識改革である。
基礎研究では、カード・メソッドは通用しない。経営者が具体的なビジョンがある(この研究成果により、○○を提供し、△△社へ販売、利益は□□円になるなど)場合は、必要かもしれない。
カードの単位は「枚数」というより「機会」といったほうが正確である。「模索機会」「最適化機会」などである。最低枚数は3枚である。おそらくは、5~10枚で「カイゼン」ができる。技術者の考える解の70%であっても、少なくとも最後のカードを決済した時点で効果が約束される。経営効果のオプションかもしれない。オプションであれば、権利行使価格が算出されるであろう。
例えば、ある素材の「原価低減」という考えやすい行為を考える。
5枚のカードが発行されたとする。
最後のカードは最適化である。実験計画法などが使用できる場合はそれでもいいし、一因子実験でもよい。
最初のカードは、模索である。候補素材を現行方式で使用すると必ず、一長一短の特性となる。それを把握することが目的である。
2枚目は、試作1であるが、この段階では、その素材群を最も活かした試作を行なう。続いて、3枚目は2枚目の結果を受け、副作用を最小にする案を実施する。この段階で、作用・副作用のメカニズムを把握する。4枚目では、導入一歩手前の検討をおこない、5枚目で最適化する。
2,3枚目をまとめて、データマイニングで主効果、交互作用を分析しても良い。
大切なことは、カードを渡すときに、技術者に付加する機能を明確に提示してあげることである。
「とにかく良いものを」は経営者、マネージャー失格である。「できない」は技術者失格である。
コストや方法を問わなければ、必ず出来るからだ。企業がそれを採用しないだけである。
・・・当たり前のように思えるカード・メソッドであるが、機能を明確にするにはマネージャーは種々の部門との協働が必要であるし、「限定される」ことに技術者は抵抗があるものである。
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