「マネジメントはサイエンスであり、アートでもある*」
経営の意思決定について、サイモンは「人間の情報処理には限界があり、そのため完全に合理的にはなれない」と、科学的プロセスであるとしている。
いわゆる「限定合理性」である。
『オーガニゼーションズ 』ではウェーバーの官僚制に着目し、官僚制を「個人の認知限界を克服するための組織システム*」のひとつと考えた。
これに対し、「マネジメントはアートである*」とするのは、ミンツバーグである。
果たして・・・日本はどうであろうか?1980年代、野中らは、製品開発の現場調査を開始した。その中で見たものは・・・
「そのときに現場で見たものはサイモンとはおおよそ対極にあった。個人の認知能力の限界を自己超越の狂気とチーム・メンバーとの共創で挑戦していくイノベーションのプロセスであった。*」
私の10年程の製品開発の現場での経験からは、「勘」や「願望」をアートとして取り扱い始めたマネジメントは製品開発現場では何でも出来るような、大よそ、非科学的な力学を発生させる。逆に、「創造的破壊」の精神を忘れた製品開発現場は、いかなる環境の変化に対しても「標準作業」しか行なえない非創造的な組織となっていく。
・・・個人の知識、またその集合から生まれた創造的知識が企業の価値になりつつあるなか、標準作業しか行なえない上級管理者、従業員は、自らの給料を下げることでしか、現在価値を高めることは出来ないのだろうか・・・。
注)*についてはすべて、野中郁次郎,「私と経営学」, 三菱総研倶楽部, 200801, p22-25を参考にしています。
<記事の中で掲載された書籍>
『経営行動―経営組織における意思決定プロセスの研究』(ハーバート・A.サイモン, 松田 武彦, 二村 敏子, 高柳 暁(翻訳),ダイヤモンド社,1989)
『オーガニゼーションズ 』(J.G.マーチ, H.A.サイモン,土屋 守章 (翻訳),ダイヤモンド社,1977)
『組織と市場』(野中 郁次郎,千倉書房,1974)
『知識創造企業』(野中 郁次郎, 竹内 弘高,東洋経済新報社,1996)
*ミンツバーグは次の書籍で有名です。
○『H. ミンツバーグ経営論』はマネジャーの仕事、戦略、組織のカテゴリーに分類した論文集。
○『戦略サファリ』は戦略の鳥瞰図で、MBAの入学前、もしくは入学直後に読むのがふさわしい書籍。
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