三洋の携帯用電池

2006年12月8日

電池の話

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三洋において、おそらくは事業の中核となる電池部門に問題が発生した。飛び火という表現が正しいかも知れないし、そうでないかもしれない。

電池に関しては、ソニー業績を下方修正でも述べたが、日本のお家芸で、リチウムイオン電池では三洋がトップシェアである。主な生産拠点は兵庫県の洲本市(淡路島:三洋HP)であるが、今回の対象は、三洋とジーエス・ユアサインダストリーが共同出資する三洋ジーエスソフトエナジー(京都市)である。  事故の経緯、内容や、本件に関わる2006.8問題はWikipediaに詳しい。 

そもそも、電池、主に日常使用する乾電池、ニッケル水素電池、今回のリチウムイオン電池などは、化学エネルギーを電気的エネルギーへ変換する化学電池である(太陽電池などは物理電池)。

乾電池でさえ、短絡してしまえば、電池サイズによるが数Aの電流が流れてしまう。ましてや、リチウムを利用した電池は、利用できる地球上の資源で電池としての能力が最大のものを使用しており(金属リチウムは安全上使用していないが)、記事によれば、短絡時には500℃付近まで温度が上昇するという。 

身近には多くの電池が存在する。今の机の周りをを見渡すと・・・ PCにはバックアップ用、リモコン、壁掛け時計、目覚まし時計には乾電池、ノートPC、iPodにはリチウムイオン電池、髭剃りにはニッケル水素電池、腕時計(クォーツ)にボタン型、・・・いったいどれだけあるのだろう・・。ものすごいエネルギー量である。 

当然、これらのエネルギーは、電気的に利用されるが、エネルギーということは熱にも変換されてしまう。また、電池の電圧にもよるが、水から水素が発生するなど(主に乾電池の場合;燃料電池は逆にこの経路を利用している)超えてはいけない理屈上の閾値がある。 

電池は便利であるが故、否、必須のデバイス(この表現は?だが、構成部材という意味で)であるゆえ、これだけ複雑になってくると、使用法や危険性などわかりづらい。顧客教育にはこれだけ一般化すると相当な資源を要する。そのスピードが、アプリケーションの発達速度が速すぎるため、追いつかない。

 メーカーはそれに対応しながら、中国、韓国などの追い上げを振り切らなくてはならない。 ソニー、三洋の件は、そのスピードに対応する限界のシグナルではないだろうか。かといって、理論上リチウムイオン電池を超える燃料電池には技術、コストに課題が残り、リチウムイオン電池と燃料電池のハイブリッド仕様にしても規制が問題になる。 

この問題を抽象化すると、日本の製造業が成し得た「高品質」による利益抽出のモデル(:良いモノを生産すれば売れ、売れれば、得意の生産効率を向上させ、固定費用を削減する)が劣化しているのではないだろうか。確かバブル崩壊後はこの議論が進んだこともある。

・・・メーカーは「品質」の定義から見直さなければならない。 


<記事> 「「電池の三洋」に痛手 経営戦略に影響も 携帯電池破裂」 朝日新聞2006.12.8朝刊13面 *リチウムイオン電池に関しては三洋、ソニーの件も含め、Wikipedia(キーワード:リチウムイオン二次電池)にアップされている。

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