初期の採用の速度は遅く、採用者は<イノベーター>、次に採用するのが<早期採用者>、そして<遅れた大多数>、最後に<落伍者>を残し、曲線はサチレートする。
種々の分野で研究がなされているが、ロバストな一般的モデルを見出すことに成功した研究はない。
「薄型TV市場でプラズマ苦戦、液晶が大画面攻勢・民間調査 *1」では、プラズマテレビの鈍化が伝えられているが、システムを「テレビ」と定義すれば、テレビの普及はすでに鈍化している。液晶、プラズマは技術ブレークスルーのハイエンド化に過ぎない。
つまりは、「買い替え」であるから、サチレートするのに5年もかからない(英国のカラーテレビ普及が浸透率で70%を超えるのに約12年である)。
おそらく、語弊がなければ、一般的なモデルを見出すことは、出来ない。
ヒッペルの研究(*2)が示唆するように、そもそもイノベーションの源泉自体が多様であるから、普及を測定すること自体が困難になる。
データマイニングのように、数万の商品を分析、しかも、源泉を指定しながら・・学者向きではない研究である。行うとしても政府の協力は欠かせないだろう。
特殊解は商品を特定すれば、見出されている。それらは需要、供給サイドに分類される。
なぜ、困難なのか?テレビの例でも見たように:
①システムの定義が困難である。
②イネーブラーがシステム周辺にあり、普及し始めるトリガーの見極めが主観的になってしまう。
①は定義次第では、テレビも「情報提供機器」となってしまえば、携帯電話と合算される。狭くすれば、データ欠如の可能性、広くすれば、ノイズが大きくなってしまう。
②では、テレビでは、液晶、プラズマは随分と昔から研究されている。しかし、社会状況が、環境に配慮するようになり、省電力、指定有害物質の低減、もしくは削除などの要請により後押しされた嫌いがある。
わかっていることだが、ブラウン管の映りは悪くない。液晶、プラズマに劣ることはない。大きなテレビを望めば、設置スペースが必要になるだけである。というと、住環境の変化もシグナルである。
つまり、<イノベーター>や<早期採用者>がなぜ採用したのかは、因果関係不明なのである。否、因果関係複雑性かもしれない。
・・・企業では、一般解は必要ない。しかしながら、特殊解を導く能力を有している企業は少ない。
<参考>
*1:NIKKEI NET http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061206AT1D0608F06122006.html
*2:E・フォン・ヒッペル 榊原清則訳『イノベーションの源泉』ダイヤモンド社,1991.
書籍:『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント』pp224~, 7.6 イノベーションの普及を予測する より。
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