研究開発を行なっていても、確かに、現在行なっているメカニズムの解明は、その分野では高く評価され、「勝ち」だと思われる案件を研究開発している。
しかしながら、商品ということを考えた場合、顧客にその技術にプレミアムを要求することは出来ないのであれば、ただただ、リスクのみを背負うことになる。
新素材・・・聞こえはいいが、顧客の立場からいうと、「誰も使ったことがない」ものである。ある条件がそろえば、不満足を引き起こすかもしれない。
それに比べ、研究開発的にはあまり高く評価されないが、古くからの研究者たちによって構築された理論に沿った、効果は薄いが、安価で、副作用も少なく、半年を待たずに商品化できる案件もある。
製品機能では、(前者)>(後者)だが、(機能拡充による効果費用)-(リスク)=(前者)<(後者)である。どちらともこれまでと競争軸を若干シフトした商品であるから、販売はそこをセールスするであろう。
ならば、私は後者を選択する。
前者の商品化を遅らせることは、現在のところマイナスではない。後者を商品化するなかで、前者の副作用など顧客不満足を解消する実験をひたすら重ねることは、リスク軽減に繋がる。
やがて、後者が浸透してきたところで、やや機能が優れる程度だが、「新素材」を前面に商品化を行なう。
「なんだ、それって当たり前じゃないか」と思われるかもしれないが、組織の中に属していると、多くの企業が病んでいる「新製品シンドローム」にかかってしまい、少々の効果では、技術者自身(私自身)が納得しなくなってくる。
「これぐらいでは、駄目だ」との根拠のない背景から、ブレイクスルーへ突き動かされてしまう。
これは、効果にとらわれすぎ、ラディカルな技術を見逃す副作用となって現れてくる。
ご存知の通り、これは成熟期における製品開発の一例で、成熟期の寿命を延ばしつつ、次なる技術のサーチの範囲を広げる一般的な方法である。
これを「負けないこと」であると本記事では考えている。
・・・危急存亡の危機でない限り、技術者がリスクを犯してはならない。最近の多くの企業の技術的不祥事は対岸の火事ではない。
photo (c) Maco
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