シックスシグマを導入する際、シックスシグマの考え方を浸透させる意味合いで、zero-defectは大いに否定された。簡単なカラクリで、データを測定し、その分布が正規分布に近似できるならば、計算上、"0" になることはあり得ないので、「考え方を変えましょう」と促すのである。
実際現場で生産技術の方の中には、あまりに簡単に否定されるので「おいおい、本当か?」とよく尋ねられたものである。これら活動の中心にあるのは、defect-centricである。
QCサークルや小集団的な活動が形骸化した製造業では、計測する指標が頭打ち、成果も頭打ちであるので、活動に教育的な側面すら求められない。
若い従業員が「これはどうなんだろう?」と投げかけても「それはやった」「それもためした」とzeroに近づける因子にも関わらず、zeroにならないので試さない。そうしているうちに、若い従業員のモチベーションが低下し、「そんなものか」と官僚化が進んでしまう。
こうなると、立て直すより壊したほうが早い。そういったなか、シックスシグマが日本へも展開され、"3.4/100万" の確率が最高、と公然と示され、上記の話になるのである。
しかしながら、シックスシグマが日本へ展開される頃にはすでに、defect-centricは形骸化し始めていた。導入した日本企業も「製造」以外での適用は困難を極めた。
問題解決プロセスがどうもなじまない。どうしても、実験計画法や統計解析を行うことが「シックスシグマを行う」ことに代用され始めていた。
商品サイクルタイムが短くなっている中、アイデアがあればそれを実行することは短縮されるが、アイデア創出をシックスシグマに求めていたフシがある。
問題解決プロセスは問題を特定してから力を発揮する(当たり前だが)。
そして、顧客と供給者の間の品質が着目され始め、顧客に"happy""smart"と思わせるにはどうしたらよいのか?に注目が移り始めた。いわゆる、「value - centric」に活動を展開する、というものである。
このようなこと=イノベーションの源泉はどこか?の類はフォン・ヒッペルが研究しているし、製品・サービスの機能レベルが高い=売れる、のであれば、発明を支援するTRIZがあり、顧客の声から設計→製造となればQFDがある。それらを統合する文献も散見できるので、結局企業は、必要に応じてそれらにアクセスすることが重要になってくる。
・・・研究開発分野の他に「目利き」が存在しなければならない。ましてや、研究開発分野の携わるものはできることに越したことはない。
<参考>
*value - centric:Mikel J. Harry, Doug Crawford,"Six Sigma - The next generation",Machine Design, 77, pp126-132, 2005.
*フォン・ヒッペル:『イノベーションの源泉―真のイノベーターはだれか』
*TRIZ:特には、Darrell Mann, 中川徹監訳,『体系的技術革新』,創造イニシアチブ,2004.
*QFDについて:赤尾洋二,『品質展開入門』
photo (c) Maco
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