さて、技術で収穫と言えば、アイデア群から抽出した製品候補を製品プロトタイプへ、そして、さらに、絞り込んで商品へと結びつけ、利益を得ることではないだろうか。
これら抽出のいくつかの段階では、研究者、開発者のいわゆる”目利き”が重要である。彼ら(彼女ら)の経験、マーケッターとの協議、企業文化など、彼らの決定を促す源泉は絞りきれない。
企業の資源が無尽蔵であれば、「備え」れば良いが、研究開発を効率的に行なうことを求める経営姿勢に傾斜している現在、どうしても優先順位を定量的に定めなくてはならない。
ひとつのヒントを与えてくれるのが、ブラック・ショールズ式である(詳細はBlack, F.and M.Sholes, "The pricing of options and corporate liabilities", Jounal of Polotical Economy, 81, 1973, pp637-654、Google Scholar から入手可能)。
技術、アイデア、特許などをコールオプションと捉え、価値を算出することで定量化することができる。より具体的には、渡邉が『知的財産―戦略・評価・会計 』で紹介しているTRRUメトリクスであろう。これは、ブラック・ショールズ式の各因子を読み替えて技術や特許の市場価値を算出するものである。
読み替えることが重要で、ほぼ単独の特許から商品が展開される医薬や、工業製品のように無数の特許群から構成される業界では、同じ方程式は成立しない。複数の業界を成立させるには、抽象的になり、業界を絞ると、特殊解になる。
さらに、オプションの現在価値=100M¥、と収束させることは、意思決定に適切でなく、モンテカルロ・シミュレーションなど、シミュレーションを並行することで、100±25M¥と範囲を明示できる。
経営者は、より現在の企業の状況に応じて、意思決定がしやすくなる。
・・・しかし重要なことは一人(単独の部署)で行なわないことである。
(2024.1.20追記)
*リアル・オプションでの参考書籍
・トム コープランド, 『リアル・オプション―戦略フレキシビリティと経営意思決定』, 東洋経済新報社, 2002.
・マーサ アムラム, 『リアル・オプション―経営戦略の新しいアプローチ』,東洋経済新報社, 2001.
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