背景を考えよ

2006年10月15日

t f B! P L
ipodは何故成功したか? 本記事の主題を考える上で、最良のケースだと思う。

 設計、音楽データベースへのアクセスなど重要度を算出することは不可能であろう。ならば、従来型の思考へ警鐘をならせないか。

 ipodの機能面に着目した思考は、従来の日本の製造業の思考である。 「洗練されたデザイン」「iTunes」、確かに、これらは重要度へ寄与されるであろう。これらの背景には「良いモノは売れるはずだ」という旧来の背景がある。

オープンに設計を行なう技術者はこの思考を忘れてはならないが、その技術者を使用する立場にある使用者は「利益を出す」ことが第一目的であって、「良いモノを作る」ことは副次的な理由であろう。

時に、独占による超過利潤を得るために、競合企業と合併する誘惑に駆られることもあるが、競争環境が存在しないと、企業がイノベーションを通じたグローバル・マーケットでの競争に適合できなくなってしまう恐れもある。  

組織は戦略に従ってきたが、テクノロジーは組織の変更を可能にしてしまった。新たなデジタル技術のおかげで、たとえ生産工程の各段階が世界中の独立企業のもとの分散していても、迅速に、円滑に調整ができるようになってしまった。

ipodにおけるハードディスク、ディスクドライブ・スピンドル、コアコンプレッサ、ファイヤーワイヤー、など、アップルは既存の他社製の構成品を組み合わせた製品を考案したのである。

意図的でないにしろ、そのようなビジネスの流れも存在していることを認識することが重要である。 これらの、サブ・システムをカイゼンしたところで(アップルよりもよいモノを製造したところで)、利益に繋がるだろうか? 

ベンチャーキャピタルがスタートアップの企業に融資する際、最も考慮に入れるのは、「経営」がしっかりしているかである。その企業が持っている技術が一番にくることはない。所詮、技術は代替されるものであるし、模倣されるものであるからである。

匠の技術を求めている顧客にモノを売るには、企業ではコストがかかりすぎる。その製品、商品毎に利益の抽出できるビジネス・システムを構築していくことが使用者の使命である。  


・・・技術者によいモノを作れ、というしか能のない使用者は削減されるべきコストである。また、よいモノを作ったから利益が抽出されたんだ、という技術者は圧縮されるべきコストである。 


(参考)

 photo(c) Mori

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