この事故については、種々のことが推測されるが、電池技術を把握しなければ「画竜点睛を欠く」ことになるだろう。
そもそも乾電池、充電池を含め、ナショナルイ・ノベーションシステムから考察すると、電池技術は日本のお家芸である。
かつて、乾電池における有害物質(水銀や鉛)の低減、廃止の際も、日本の主要なメーカーが海外へ技術指導を行なっている。そもそも、回収対象のリチウムイオン電池はソニーが開発したと言ってもよい。
私は学生の頃半導体を研究していたが、その様子が、(確か)”固体物理”という雑誌に掲載され、運悪く、ゼミで説明の順番で当たってしまったため、よく覚えている。
電池の設計や開発は非常に地道であり、日のあたらない業務である。利益率も高くない。アップルを研究し、iPodに使用されている技術を紹介する記事の中でも、充電池を記載していない(『MITチームの調査研究によるグローバル企業の成功戦略』p100)ほど目立つことはない(!?)。
かといって、サイエンスで研究が終了している訳でもない。松下や三洋など大手企業だからこそ操業し続けることができているのではないかと考えてしまう。
いずれにせよ、今後、電池というカテゴリーで生産される商品は数十年なくなることはないにも関わらず、利益率の低さや作業の地道さからコスト削減の対象になることも大いに考えられる。
こういった技術の分野では、電池に関わらず、ベテランが必要である。ベテランは超えてはいけない線をその豊富な経験から熟知している。しかし、残念なことにこういったベテランから先にコスト削減の対象になることが現実である。
今回の回収に関しても、次々に対象が広がっていった経緯がある。例えば、あるロットで欠陥があれば、広がることはない。当該企業が範囲を指定できるからである。「工程における金属の混入」に関してもキープしているサンプルを調査すれば、範囲を指定することは難しくはない。
本当のところはわからない。
これらのことと、最近のソニーの状況を考え合わせると、「ソニータイム」はハインリッヒに魅入られていたのだろうか・・・。
・・・この日本特有の技術のほころびは必然なのか、偶然なのか。。。
参考:『一橋ビジネスレビュー』東洋経済新報社 2004年秋号
photo(c) Mori
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